片足だけにむくみが起こる原因は?病気のサイン?解消法と治療方法も

一日活動して夜帰宅すると、足がむくんで朝より膨張しているように思えることがあります。
通常足のむくみは左右両方に表れますが、片足だけむくむ場合は「下肢静脈瘤」などの病気も考えられます。
この記事では片足だけにむくみが起こる原因と解消法、病気の可能性について解説します。
むくみの仕組み
まずむくみはどのようにして起こるのか、メカニズムをみていきましょう。
1.血液循環が滞るとむくみが起こる
人の体は血液循環を繰り返しており、心臓から送り出された血液は全身を巡って再び心臓に戻ってきます。
中でも足は心臓から離れているため、その血液を戻す際には大きな力が必要となります。
しかしこの機能が正常に働かないと、心臓に戻せなかった血液や余分な水分がふくらはぎの周辺にたまり、むくみとなります。
足は第2の心臓
「足は第2の心臓」と呼ばれるほど、血液循環において重要なはたらきをしています。
心臓から血液が送り出されるときは鼓動がポンプの役割を果たしていますが、足から心臓に血液を戻すときはその役割をふくらはぎの筋肉が担います。
しかし長時間同じ姿勢でいたり立ちっぱなしだったりすると、重力がふくらはぎの筋肉に負担をかけ、血液循環が滞ります。
2.塩分やアルコールもむくみを起こす
塩分やアルコールの摂りすぎもむくみを引き起こします。
塩分がむくみを起こすメカニズム
塩分には水分を抱え込む性質があります。
そのため塩分を摂りすぎると余分な水分を排出しきれず、ためこんでしまうことでむくみが起こります。
アルコールがむくみを起こすメカニズム
アルコールの場合は逆で、利尿作用がはたらくことで体内の水分が失われていきます。
これによって血液の濃度が高くなり(=血液が濃くなり)、体は血液を薄めるため血管内に水分を摂りこむようになります。
そのためアルコールを摂りすぎると、利尿作用のはたらきとは裏腹に、体内に水分がたまってむくみが生じます。
片足だけむくむ原因
足のむくみは両足に表れるのが一般的ですが、何らかの病気が原因となっている場合、左右どちらかにむくみが表れることがあります。
考えられる病気としては下記の通りです。
1.下肢静脈瘤(かしじょうみゃくりゅう)
静脈内で血液が逆流している状態です。
静脈には血液の逆流を防ぐために「逆流防止弁」というものがありますが、この弁が遺伝要素や過度な立ち仕事など、何らかの理由で機能しなくなると血液の逆流が起こります。
すると静脈内の圧力が高まることでその部分が膨れ上がり、血管の盛り上がりやむくみが表れます。
放っておくとどうなる?
放っておくと、足のつりや色素沈着、潰瘍、出血などの症状となってあらわれます。
2.エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)
飛行機など長時間足を動かせないような環境下では、足の静脈に血栓(血の塊)ができやすくなります。
血栓ができると血液循環に支障が出るため、むくみが起こります。
放っておくとどうなる?
放っておくと、静脈の血栓が歩行などをきっかけに足の血管から離れ、血液の流れに乗って肺に到着し、肺の動脈を塞いでしまい、死に至ることもあります。
片足のむくみの治療について
1.病院へ行くべき?
ただの水分が溜まったむくみであれば、放っておいても治ります。そうではない場合、片足だけむくむ場合は上記の病気が隠れている可能性があります。
進行すると命に関わることもあるため、早めに病院を受診して精密検査を受けましょう。
何科を受診したら良い?
一般的な総合外来や内科、整形外科を受診します。
2.治療方法
特に病気などがなければ、利尿薬を処方されることが多いです。
排尿を促すことで血液中の余分な塩分や水分を排出でき、むくみの解消効果があります。
利尿薬による利尿作用が、アルコールの利尿作用と異なるのは、塩分を尿として排泄できる点です。塩分を排泄することで、アルコールのように血管内に水分を取りこもうとする働きが抑えられます。
また弾性ストッキングを活用してむくみを解消する治療法もあります。
病院や近くの薬局で購入し、自宅で症状が改善するまではきます。
下肢静脈瘤の場合は?
弾性ストッキングなどで症状を改善したり、進行を予防したりする保存的治療、静脈瘤に薬を注射して固めてしまう硬化療法、その他手術やレーザーを使う血管内治療があります。
エコノミークラス症候群の場合は?
重症度によって治療法は異なりますが、軽度なら血行をよくする薬の処方だけで済む場合もあります。
重度の場合はカテーテルや手術によって血栓を取り除く手術を行ったり、入院が必要となったりすることもあります。
4.むくみの解消法
自分でできるむくみの解消法をいくつかご紹介します。
マッサージ
最も効果的なのはマッサージです。
足にたまった血液を心臓に戻すイメージで、足首から上に向かって撫でるように流します。
特に入浴後など血液の循環が良くなっているときに行うと効果です。
むくみやすい方は習慣としてマッサージを取り入れてみましょう。
エコノミークラス症候群の場合、マッサージはNG
エコノミークラス症候群によるむくみの場合は、マッサージによって血栓が移動する可能性があるため避けましょう。
血栓が肺に移動すると「肺血栓塞栓症」を引き起こし、最悪の場合命にかかわることもあります。
片足だけむくんでいる場合はマッサージを避け、早めに病院を受診しましょう。
片足のむくみが、エコノミークラス症候群かどうかは、素人では間違うこともあります。ずっと同じ姿勢を続けていた、乗り物に乗っていたなど、症状が出る前後のご自身の動きから判断しましょう。
適度な運動
ふくらはぎの筋肉が弱ると血流が悪くなってむくみやすくなるため、日頃から適度な運動を習慣化しましょう。
ウォーキングをしたり、移動時は意識して階段を使ったりすると効果的です。
食事は塩分を控えてカリウムを!
また、食事の面からは塩分を多く含むものは控えめにして、腎臓が悪くない人は水分を排出させる効果のあるカリウムを多く含んでいる野菜や果物を意識して摂るようにしましょう。
まとめ
日常的によくみられるむくみは、両足に表れるのが一般的です。
そのため片足だけむくんでいる場合は病気の可能性が考えられ、進行すると命にかかわることもあるため注意が必要です。
足のむくみはあまり気に留めない方も多いですが、左右一方がむくんでいる場合は早めに病院を受診して検査を受けましょう。
執筆・監修ドクター

経歴1998年 埼玉医科大学 卒業
1998年 福岡大学病院 臨床研修
2000年 福岡大学病院 呼吸器科入局
2012年 荒牧内科開業
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