えーがたかんえんA型肝炎
A型肝炎(えーがたかんえん)はウイルスに感染することでおこる肝炎です。
B型肝炎やC型肝炎のように血液や体液への接触で感染するのではなく糞口感染により肝炎にかかります。A型肝炎ウイルス(HAV)感染者の糞便が人の手に触れ、それが食べ物や飲み物に触れることで感染が広がります。
日本では上下水道が完備され衛生環境が改善されたため、感染の経験を示す抗体を持っている人の多くは50歳以上で、若い人には珍しい病気になってきました。しかし、衛生環境の悪い国ではまだまだ多くみられ、海外旅行時には注意が必要な感染症です。
A型肝炎はB型やC型のように慢性化することは少なく、回復後に抗体ができてその後、感染することはなくなります。しかし、高齢者が感染すると重症化しやすく、死亡率も高くなります。そのため、予防することも重要です。日本では1995年に予防用のワクチンが認可されています。また、発展途上国へ観光する際は、現地での食事は加熱した食品を選び、水もミネラルウォーターや、一度沸騰させてから飲む、氷を避けるなどの対策が必要です。
感染後、数週間はウイルスを排泄します。そのため、病後も感染が広がらないよう注意する必要があります。
国では4類感染症と指定しており、全数報告対象の感染症になっています。そのため、この病気と診断した医師は保健所への報告が義務づけられています。
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A型肝炎の症状
感染後2~6週間の潜伏期間をおいて急性肝炎を発症します。発熱やだるさ、食欲不振、嘔吐(おうと)などをおこします。その後に肝炎の典型的な症状として皮膚や白目が黄色くなる黄疸(おうだん)、肝臓が腫れて大きくなる、尿の色が濃い赤茶色になる、便が灰色になるなどの症状が確認されるようになります。
他のウイルス性肝炎よりも急性肝炎の症状が強くあらわれるとされています。また小児より成人の症状がより強い傾向にあります。
また、なかには急激に肝臓の炎症が悪化して肝不全をおこす劇症肝炎を発症することもあります。劇症肝炎になると肝性脳症などをおこす危険性があり、より緊急性が高くなります。
一度感染すると回復後に強力な免疫を獲得するため、その後は発症しなくなります。
A型肝炎の診療科目・検査方法
A型肝炎の原因
原因はA型肝炎ウイルス(HAV)への感染です。HAVは熱や乾燥、酸に強く、通常の石鹸などでは不活化しません。
感染はウイルスに汚染された糞便が人の手を介して、あるいは河川などにまぎれて食糧や飲料水として口に入る糞口感染で広がります。症状の回復後も数週間はウイルスを排泄します。また糞口感染が最大の感染ルートですが、性的接触などによる接触感染もおこるとされています。
海外ではアジアや南米、アフリカなどA型肝炎の感染リスク国はまだまだ多い状況です。そのため国際交流や輸入食品などによって感染する可能性もあり、対策すべき課題となっています。
国内での最大の感染ルートとしては貝類のカキによるものが多いとされています。
A型肝炎の予防・治療方法・治療期間
特別な治療法がないため、主に安静、補液、症状に合わせた対症療法をおこなうことになります。症状が強くおこる急性期には入院して治療にあたることも多いです。
多くは1~2カ月で軽快していきます。
また、A型肝炎については予防することも重要です。警戒地域への渡航予定があるなら事前にワクチンを接種します。日本で認証を受けているワクチンは、3回の接種をおこなうと、5年程度効果が持続するとされています。
A型肝炎の治療経過(合併症・後遺症)
完治するまでに半年ほど要する例や、一度正常化した場合にぶり返す例もあります。また劇症肝炎をおこすと生命予後にかかわります。しかし、慢性化することはなく、全般的に予後は良好です。
家族が発症した場合は、緊急で予防接種を受けることが推奨されます。
A型肝炎になりやすい年齢や性別
現在、日本では流行することはあまりないと考えられます。年間の報告数は毎年500人以下です。
2004年の報告で、当時50歳以下の免疫獲得者が少ないことを指摘されています。現在では多くの人が免疫を持たず、海外などでウイルスに感染した場合は発症する可能性があります。高齢者ほど発症時の重症化が指摘されているため、海外旅行時には予防接種を受けるなどの対策が必要です。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2010年 昭和大学医学部卒業
2010年 昭和大学横浜市北部病院初期研修医
2012年 昭和大学横浜市北部病院総合内科
2014年 帰陽会丹羽病院
2015年 昭和大学横浜市北部病院総合内科助教
2017年 霞ヶ関診療所
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