卵管炎とは
卵管炎(らんかんえん)とは、卵管に炎症がおこる病気です。
痛みがあるほか、卵管に膿が溜まったり、できものになる腫瘍(しゅよう)ができたりすることもあります。
性交渉などで膣から細菌が入り込み、卵管に感染することでおこります。
治療せずに放置していると、卵管が炎症のためにくっつく癒着(ゆちゃく)したり、詰まったりします。不妊や子宮外妊娠の原因にもなります。
また、骨盤の中の腹膜にまで炎症が広がると、骨盤腹膜炎という病気になる恐れもあります。
いずれにせよ、早い段階から治療を受けることが大切です。
卵管炎の症状
卵管炎の主な症状は以下の通りです。
- 下腹部の痛み
- 悪心、嘔吐(おうと)
- 不正出血
- 発熱
- 性交痛
- 排尿がうまくできない
症状は、早い段階ではあまりみられません。むかむかと気分が悪くなる悪心や吐き戻してしまう嘔吐は重症となった場合にみられます。
下腹部の痛みの多くは、左右のどちらにもありますが、片側だけの場合もあります。
卵管炎をおこした人の約15%は、卵巣にも感染して膿(うみ)が溜まることがあります。治療が遅れると、膿の部分が破裂して敗血症をおこす場合もあります。
卵管炎の診療科目・検査方法
卵管炎が疑われる症状がある場合はもちろん、おりものの量がいつもより多いといった変化を感じた場合も、婦人科を受診しましょう。
診断のために、以下の検査をします。
- 内診
- 血液検査
- 妊娠検査
- 超音波検査
- 腹腔鏡検査
内診では卵管の状態を診察します。痛みなどの症状が強い場合は超音波検査をおこないます。
また、卵管だけでなく、子宮など周囲の状態も確認するために腹腔鏡検査をする場合もあります。
卵管炎の原因
卵管炎は、性交渉や長時間にわたるタンポンの使用などによって、細菌が卵管に感染することでおこります。
原因となる主な細菌は以下の通りです。
クラミジアや淋菌の感染による卵管炎は、症状があまりないことが多いといわれています。
あったとしても、おりものが増える程度であるため、病気にかかっていることに気がつかず放置してしまうことも多いようです。
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卵管炎の予防・治療方法・治療期間
卵管炎の治療は、抗菌薬、消炎薬を飲みます。症状が強い場合には点滴で投与することもあります。
薬を飲んだり、点滴しても、症状がよくならなければ、抗菌薬の種類を変えてみます。その後は、血液検査で炎症の程度を確かめながら、経過を観察します。
治療を受けても、急性の卵管炎の約1/4は慢性化するといわれています。
慢性化すると、卵管がほかの臓器と癒着したり、ほかの臓器を巻き込んで膿瘍(のうよう)を作ることがあります。そうなった場合には、手術が必要となります。
治療期間は、症状や患者さんの状態によって異なります。
卵管炎の治療経過(合併症・後遺症)
卵管炎は、適切な治療を受けられれば問題なく回復に向かいます。
逆に、放置すれば、もともとは軽い症状であったとしても、骨盤腹膜炎など、重症になることがあります。治療が遅れて敗血症をおこすと、生命にかかわることもあります。
そのため、早い段階で正しい診断を受け、治療を始めることが大切といえます。
卵管炎を含む性感染症の多くは性交渉によって感染するため、コンドームの着用で感染を予防することが大切です。
また、月経期間中は雑菌が繁殖しやすいため、こまめに生理用品を取り替えることも予防につながります。
卵管炎になりやすい年齢や性別
患者さんの数を卵管炎だけに絞って調べたデータは見当たりませんでした。
卵管炎の原因として多くみられるクラミジア、淋菌による感染症の2018年の患者さんの数は以下の通りです。
年齢でみると、いずれも、20~24歳がもっとも多いと報告されています。卵管は女性にしかない生殖器ですので、卵管炎も女性しかかかりません。
執筆・監修ドクター
経歴1999年 日本医科大学産婦人科教室入局 日本医科大学付属病院 産婦人科研修医
2001年 国立横須賀病院(現 横須賀市立うわまち病院) 産婦人科
2002年 東京都保健医療公社 東部地域病院 婦人科
2003年 日本医科大学付属病院 女性診療科・産科 助手代理
2004年 日本医科大学付属第二病院 女性診療科・産科 助手
現在 石野医院の副院長
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