ろたういるすかんせんしょうロタウイルス感染症
ロタウイルス感染症とは?
ロタウイルス感染症とは、ロタウイルスというウイルスによる感染症です。ロタウイルスは胃や腸などの消化管に急性胃腸炎を引きおこす原因となります。
感染性ウイルスで、非常に感染力も強く、5歳くらいまでに、一度は感染するといわれています。初めての感染時の症状が最も重くなります。乳幼児がウイルスに感染し発症した場合、激しい嘔吐や下痢などの症状がみられることがあります。
ありふれた子どもの感染症です。ロタウイルスによる胃腸炎による死亡例は日本では珍しいですが、世界的にみると子どもが命を落とす大きな原因になっています。5歳未満の子どもの死亡者は年間180万人にのぼるという報告もあります。
例年、2月から5月にかけて流行する傾向があります。
ワクチンについて
2020年10月1日から、2020年8月1日以降に生まれた出生6週0日後のお子さんを対象に定期接種がおこなわれることが決まっています。
ロタリックス(1価):出生6週0日後から出生24週0日後まで
ロタテック(5価):出生6週0日後から出生32週0日後まで
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ロタウイルス感染症の症状
ウイルスに感染してから2〜4日間は潜伏期間があり、その後症状があらわれます。感染により急性胃腸炎を発症します。
ロタウイルスによる急性胃腸炎は、発熱や嘔吐(おうと)から始まります。発熱は39度以上になることもあります。その後、腹痛をおこし下痢になります。下痢の症状は発熱や嘔吐の翌日~48時間後くらいに始まります。水のような水様性で色も白っぽい白色便性のことがあります。
また、子どもの場合は嘔吐によって吐き出した吐しゃ物を気道や気管に詰まらせないように注意して見守る必要があります。
嘔吐や下痢によって体内の水分が減ることで脱水症状を引きおこすこともあります。
脱水症状が重くなると水分だけでなく、ナトリウムやカリウムなどの電解質とよばれる成分が失われる電解質異常がおこります。これによってけいれんや、腎臓に負担がかかり急性腎不全をおこしたりします。高尿酸血症や肝機能異常をおこし、脳症や心筋炎などの合併症になれば命に関わる危険性もあります。
2回目以降の感染では症状のあらわれない不顕性感染となることも多いと考えられています。
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ロタウイルス感染症の診療科目・検査方法
ロタウイルスの診断には、便を使用します。15分ほどで確認ができるイムノクロマト法という迅速診断検査を用いた診断法があります。この検査には保険が適用されます。検査の精度は95%ほどです。そのため、ロタウイルスに感染していても感染を示す陽性反応が出ないことがあります。人に感染するロタウイルスはA、C群が主で、まれにB群があります。イムノクロマト法は、A群ロタウイルスだけ確認ができます。そのため、B、C群のロタウイルスは検出できません。
症状を確認して、ウイルス性胃腸炎だと総合的に判断されれば検査をしないことも多くあります。
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ロタウイルス感染症の原因
原因となるロタウイルスは大きく7種類に分類され、さらにそれぞれの種類にいくつものタイプがあります。そのなかでも人間に感染するのは主にA型のものです。
ロタウイルスは強い感染力があります。ウイルスが10~100個程度口に入ることで簡単に感染します。主な感染経路は人から人による間接的、または直接の接触です。
ロタウイルスに感染しているとウイルスが便に大量に排泄されます。感染した人の便1gに含まれるウイルスの数は100億個とされています。そのため便から手を介してウイルスが口に入る糞口感染はおこりやすいといえます。
オムツ交換や、トイレ後の手洗いが不十分なことにより感染することが考えられます。このようにウイルスに汚染した手で飲食することなどで感染しますが、ウイルスに汚染された水や食べ物を触った手などからでも感染すると考えられています。十分に手洗いしたと思っても、指の間や爪などに残って感染することもあります。整った衛生状態でも死滅しにくいため、環境的に感染自体を防ぐのが難しいのも特徴です。
子どもに多い病気ですが、ウイルスの種類が多いため、治癒した後のウイルスに対する免疫は完全ではありません。そのため何度も感染することがあり、子どもから大人に感染することもあります。ただし、交差免疫という近い種類のウイルスに対する免疫効果が働くため、2回目以降の感染では症状が弱くなります。
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ロタウイルス感染症の予防・治療方法・治療期間
発症してから早くて2日、長くても1~2週間ほどで症状は治まります。ロタウイルスに対する特効薬はありません。あらわれた症状に対して患者さんの状態が悪くならないように治療をおこなう対症療法が基本です。具体的には水分と栄養補給をして安静にしていることが治療となります。
嘔吐や下痢で脱水状態になっている場合は水分補給をおこないます。イオン水などで水分だけでなく電解質の補給も考慮します。重い脱水になっている場合は、医療機関で点滴をうけるなどで補給する必要があります。
また、下痢の症状に対して下痢止めを使うと腸管内のウイルスを排出できなくなります。その結果、体内にとどまり症状を長引かせることになるので基本的には使用しません。
ロタウイルス感染症の治療経過(合併症・後遺症)
2歳くらいまでの小さな子どもは重度の脱水になる可能性があります。
さらに、脱水による合併症でけいれんをおこすと予後はよくありません。けいれんをおこすと38%ほどで後遺症があるという報告があります。
こうした後遺症を残す重症例を減らすため乳児へのワクチン接種がおこなわれています。
ワクチンは注射ではなく、服用するタイプです。2回服用と3回服用のものがあります。ワクチン接種によって完全に感染を防ぐことはできませんが重症化を防ぐ効果が期待できます。
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ロタウイルス感染症になりやすい年齢や性別
5歳くらいまでにほとんどの人が感染します。そのなかでも6か月から2歳くらいによくかかります。
大人でも感染者との接触によって30~50%くらいの確率で感染することがあります。そうしたケースではほとんどの場合は軽症で済むか無症状です。
しかし、体力の弱っている人や高齢者など免疫力が低下していると症状が強くあらわれることがあり、注意が必要です。実際に高齢者施設では集団発生もおこっています。
毎年、年末年始ごろから感染者が増えて4~5月にピークを迎えます。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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