えんげしょうがい嚥下障害
嚥下障害の症状
嚥下障害では、急に食べられなくなるようなことはあまりありません。そのため普段の生活の中で嚥下障害を発見できる兆候があらわれることがあります。またその兆候によって原因が推測できます。
おもな兆候は以下のとおりです。
むせる
食品によってむせやすいことがあります。むせるタイミングもさまざまです。
咳(せき)
食事中や食後、夜間など原因により咳が多くなるタイミングに違いがあります。
痰(たん)
量が増えたりすることがあります。
咽頭異常感、食物残留感
のどに異常を感じたり、食べ物が残っているような感覚を覚えます。
嚥下困難感
飲み込みにくさを感じます。
食事内容の変化
飲み込みやすいものだけを選ぶようになることがあります。
食事時間の延長
口の中にいつまでも食べ物をためていたり、なかなか飲み込まなかったりするようになります。
食べ方の変化
上を向いて食べる、汁物と交互に食べている、口からこぼれやすいなど、今までと違う食べ方をし始めます。
口腔内の汚れ
ひどい歯垢や食物の残りかすがたまる、口臭がきつくなることがあります。
ほかにも声の変化や食事中の疲労、食欲がなくなるなども兆候としてあらわれることがあります。
嚥下障害の診療科目・検査方法
障害や機能の状態を正しく把握するために、スクリーニングテストによって判断されます。医療機関によって方法はさまざまですが、水飲みテストやフードテスト、呼吸状態や触診、造影剤を用いるなどして、食物の嚥下状態などを検査します。
また、こうした検査をするタイミングで食べる意欲やうつ状態についても把握していることが望まれます。診断には医師だけでなく歯科医や言語聴覚士などの幅広い職種の医療チームで検討される必要があります。
栄養の摂取は直接生死にかかわることです。食べ物をのどに詰まらせるなどして呼吸困難になるなど、重大な状況を引きおこす可能性もあります。嚥下障害の兆候を確認できたら早めに受診しましょう。
診療科としては、内科、脳神経内科、消化器内科、耳鼻いんこう科、歯科などです。医療機関によってはリハビリテーション科や嚥下障害専門外来を設置していることもあります。
嚥下障害の原因
さまざまな原因があります。原因は大きく3つに分類されます。
器質的障害をおこすもの
口腔内(口の中)、咽頭(のど)、食道のどこかで炎症や腫瘍ができてしまい、食べ物を通る道がふさがれてしまうことが原因となっている分類です。
口腔内では咽頭炎や舌炎、頚椎(けいつい)症などによって外側から圧迫されていることが原因になります。
食道であれば食道炎や潰瘍、ヘルニアや狭窄(きょうさく)、異物などがひっかかっていることもあります。
機能的障害をおこすもの
食べ物を認識できない、唾液が出ない、かみ砕けない、飲み込みができないといった機能的な異常で症状があらわれる分類です。
口腔や咽頭で症状がおこる場合は、脳血管障害や脳腫瘍、パーキンソン病、筋ジストロフィーなどが疑われます。食道で嚥下障害をおこす病気としては脳幹部病変、アカラシア、強皮症、全身性エリテマトーデスなどがあります。
心理的原因によるもの
精神的なことにかかわる病気によって、食欲が湧かない、のどに違和感がある、食べ物に興味を示さないなどの症状があらわれることがあります。認知症、拒食症、うつ病などにより引きおこされます。
嚥下障害の原因に多いのは脳血管障害によるものです。しかし、高齢者の場合には、症状のあらわれない脳血管障害が確認されることがあります。
またほかの病気による全身状態の悪化が原因となることもあります。口腔内や食道などの機能障害に限らず、義歯(入れ歯)の不具合によって嚥下障害になることもあります。
子どもの場合は重症心身障害児の場合によく見られる症状です。これには脳性まひや筋ジストロフィー、知的障害、染色体異常などの神経学的な原因が関係していることも多いといわれています。
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嚥下障害の予防・治療方法・治療期間
原因になっている病気がある場合は、それに対応した治療をおこないます。おもな治療法としては摂食・嚥下訓練です。これは2つに分類されます。
間接訓練(基礎訓練)
食べ物を使わない訓練です。器官の働きを改善させることが目的です。先端を湿らせ凍らせた綿棒などのアイススティックで、口の中をマッサージします。
これはアイスマッサージという方法で、嚥下反射を誘発する間接訓練の一つです。
直接訓練(摂食訓練)
実際の食物を使用し、嚥下器官がバランスよく動くようにするための訓練です。基準化された食物で、機能の状態に合わせて段階的にレベルアップし、摂取する量や回数を増やしていきます。食べる時の姿勢や角度、食後の体勢についても配慮します。
よく知られている訓練法としてゼラチンゼリースライス法があります。ゼリーをスライス状にし、口腔や咽頭の狭いスペースを通過しやすくします。嚥下のタイミングのずれや嚥下反射の遅延による残留、誤嚥(ごえん)を防ぐほか、ゼリーを丸のみすることで、口腔や咽頭の残留物を取り除く効果も得られます。
ほかにも、食べるための筋力を鍛える訓練や咳の練習、呼吸の訓練、口周りの筋肉をほぐして嚥下に必要な筋肉を鍛える嚥下体操などもあります。
嚥下障害の治療経過(合併症・後遺症)
訓練による機能の回復には、病気の状態にもよりますが数ヶ月~1年と長い目で見る必要があります。また、腫瘍や障害物が原因となっていて外科的な手術が必要な場合、手術後のリハビリが重要になります。
どちらにしても、長期的な訓練が必要です。
嚥下障害になりやすい年齢や性別
患者さんの数を把握できるはっきりとしたデータはありません。認知症を発症しやすい高齢者に多いと考えられます。
嚥下障害の男女比はわかりませんが、誤嚥性(ごえんせい)肺炎による死亡率は女性より男性が高い傾向にあります。
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執筆・監修ドクター
経歴1998年 埼玉医科大学 卒業
1998年 福岡大学病院 臨床研修
2000年 福岡大学病院 呼吸器科入局
2012年 荒牧内科開業
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