適応障害

適応障害の説明

【監修】板東 浩 先生(医学博士、内科医)

説明

適応障害とは、生活が変化することにストレスを感じ、そのストレスに適応できずに生じる心の症状です。
「学校に行けない」「無気力でやる気が出ない」などの症状があらわれ、社会生活に影響します。悪いことだけでなく、進学や部署異動、結婚、離婚などの一般的に良いとされる出来事での変化でも適応障害は起こりうるのです。

環境が変化しても特に問題なく適応できる人もいますが、その一方で同じ環境の変化に苦痛を感じて、社会生活を健康的に送れなくなってしまう人もいるのです。

説明

症状

「適応障害」の症状はいずれも一見は強いものではありませんがさまざまな症状があります。
しかし、それらはどれもストレスに適応できない場合の心の反応です。

また、健康かどうかの判断は社会生活を維持できているか否かによって決まります。

適応障害の精神症状は、不安や抑うつ、焦燥感、敏感、混乱などがみられます。
一方で身体的にあらわれる症状は、倦怠感や頭痛、腹痛などで、行動面では遅刻や欠勤、不眠、犯罪などが挙げられます。

適応障害のタイプ

「適応障害」の症状は、主な症状から下記の6つに分けられます。

・抑うつ気分を伴うタイプ
憂鬱感、涙もろくなる、絶望感、思考力・判断力の低下、感情のコントロールが難しくなるなど。いずれの症状も、気分障害ほどではありません。
気分障害:抑うつ気分を主症状とする精神疾患のグループ。代表的なものは「うつ病」。

・不安を伴うタイプ
漠然とした不安感があり、災害、病気、死などを心配しすぎたり、精神が過敏になって、不安から呼吸困難に陥ったり、軽いパニック発作を起こしたり、社会生活を送ることが困難な状態。不安障害ほどではない。
不安障害:病的な不安感が高まり社会生活が困難になる症状。神経症とも。

・抑うつと不安を伴うタイプ
不安と心配、気分の落ち込みが同時に現れ、社会生活に支障をきたすタイプ。例えば健康診断で「要精密検査」となることで不安と憂鬱な日々が続くことです。身体の病気で入院したことが心に影響した人の多くは、このタイプの適応障害です。

・行動の障害を伴うタイプ
万引き、飲酒運転、暴力、無断欠席・無断欠勤、公共の場へのいたずらなどの行動を伴うタイプです。
ただ思春期の青年は、この時期によくある精神的な不安定さから反社会的な行動や言動を起こしてしまうことがあります。

・情緒と行為の混合した障害を伴うタイプ
不登校やかん黙など。子どもが適応障害となる場合、情緒障害や行動障害を伴うタイプである場合が多い傾向があるようです。
情緒の障害:情緒障害とは病名ではなく文部科学省が規定している名称。

・特定不能のタイプ
肩こり、頭痛、疲労感などの身体症状を主に訴えたり、主症状がひきこもりだったりする例です。
さまざまな症状がありますが、どれも適応障害特有のものではないため、医師は患者さんの病歴や環境などから診断を進めます。

適応障害の診断基準(DSM-IV-TRより)

■A
はっきりと確認できるストレス因子に反応して、そのストレス因子の始まりから3ヶ月以内に情緒面または行動面の症状が出現

■B
これらの症状や行動は臨床的に著しく、それは以下のどちらかによって裏付けられている

■(1)
そのストレス因子に暴露されたときに予測されるものをはるかに超える苦痛

■(2)
社会的または職業的(学業状の)機能の著しい障害

■C
ストレス関連性障害は他の特定のⅠ軸*障害の基準を満たしていないし、既に存在しているⅠ軸障害またはⅡ軸*障害の単なる悪化でもない。

■D
症状は、死別反応を示すものではない

■E
そのストレス因子(またはその結果)がひとたび終結すると、症状がその後さらに6ヶ月以上持続することはない

I軸・II軸

DSM(米国精神医学会診断基準)では、診断が偏らないように「多軸方式」をとっています。

■I軸
II軸以外の心の病気

■II軸
パーソナリティ障害と精神遅滞

■III軸
体の病気

■IV軸
心理社会的・環境問題の視点

■V軸
機能

※DSM-Vでは、家族など愛する人との死別も適応障害の発症の原因となるストレスとみなされています。この基準は変更されることがあります。

要因

適応障害の原因はストレス

日常生活において大きなストレスになる出来事が起こると、身体にさまざまな反応が出ます。これは普通のことですが、これが「反応」を超えて「症状」にまで至った状態が適応障害です。

誰でもショックな出来事に遭遇すれば驚いたり、あるいは悲しんだりします。環境の変化があれば緊張したり不安を感じたりします。はじめはこのような心の動揺があっても、だんだん気持ちがこの状況に適応してきて、環境に馴染んだり、価値観を変えてみたり、新たな楽しみとして受け取るなど問題解決の方法を考えはじめます。適応障害は、このような出来事への心理的な反応がうまくいかなかったために起こります。本人にとっては極端な反応に見え不思議に思うこともあるでしょう。

身のまわりのさまざまなストレス

ストレスを感じるのは、つらいことや悲しいことだけではありません。結婚や引っ越し、昇進など、プラスなことも心のストレスの原因になります。あるいは、プラスな変化であっても、それらの受け取り方によってマイナスのストレスにもなります。また、少しのストレスは生活の「はりあい」にもなりますが、これが過度になってしまうと心にとって大きな負担となっていきます。

住居や経済的な問題といった環境的なストレス、病気や食習慣といった健康面のストレス、家族や学校、職業、文化など心理社会的なストレス、対人関係のストレス、一般的には良いことと思われていることへのストレス(結婚、出産、就職、子どもの独立、定年退職など)

ストレスへの耐性が弱いと適応障害になりやすい

同じ環境下でストレスを受けても、適応障害になる人とならない人がいます。これはストレスを乗り越える力は人によって異なるためです。

この力は個人の資質によるところがあり、よく「がんばりやさん」は適応障害になりやすいといわれています。まじめで努力家、他者からの評価を気にし、仕事も多少無理をしてでも片付けて、自分を抑えてでも相手に合わせようとする。
子どもの頃からわがままを言わず、聞き分けがよく、自分を抑えて生きてきた人が少なくありません。

その反面、自己主張ができず、感情や欲求の表し方がわからなくなっている可能性があります。
一見、「いい人」のようですが、とてもストレスをためています。資質的な傾向としては下記が挙げられます。

  • ・感情の表し方がわからない
  • ・傷つきやすい(周囲の人が理解できないほどささいなことで傷ついてしまう)
  • ・白黒思考(100点でなければ0点と同じ)
  • ・まじめだけどがんこ(いいかげんなことが許せない、これと思ったら変更できない)
  • ・断れない(無理なことや嫌なことも自分を抑えてしまい断れない)
  • ・自律神経失調傾向(もともと自律神経のバランスが乱れやすい)

治療と治療薬

最初はひとりで我慢したり、家族や友人に相談したりするでしょう。ストレスはこの段階で解消することも多くあります。
ですが、それができない状態が続き、抑うつ状態が続くようであれば、カウンセリングや医療機関での受診を検討しましょう。
医師は上記のような個人の資質やその他の精神疾患を念頭におきながら患者さんの話を聞きます。

適応障害の原因はストレスであることから、そのストレスの原因をつきとめ、解決するための行動を起こしていきます。
しかし、解決できないストレスであるなら受け止めることで気持ちを楽にしていきます。あるいは薬物療法で現れている症状を緩和します。
いずれの治療も、社会生活が送れるようにすることを目的としています。したがって、医師に治してもらうのではなく、自分で治していく意識が大切です。

FAQ

・IT関連企業に勤めている人は適応障害になりやすい?

IT関連企業に勤めている人にはうつ病や適応障害が多いと言われています。
仕事量が多く、残業しがちで職場によってはパーテーションで区切られ、人と会話することなく、一日パソコンに向かっているなど環境的な問題もあります。
また目の疲れや肩こりなど身体的不調もあらわれるでしょう。

 

監修/板東 浩 先生
医学博士/内科医

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