新型コロナウイルスが心配で気分が落ち込む…適応障害を防ぐポイント3つ
新型コロナウイルスの流行によって、社会人の方はリモートワークになったり、一部の学生の方はオンライン授業が受けられるようになったりなど、生活が大きく変わったという方も少なくないでしょう。
そんな中、「在宅勤務になって朝起きるのが遅くなった」「身体を動かさなくなって食欲がなくなった」「1日の生活にメリハリがなくなった」「身体が重く感じるようになった」といったことはありませんか。
3ヶ月以内にこのような、心の変化、体調の変化がある人は、適応障害かもしれません。
気になる点や不安などがあれば病院で相談してみましょう。
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そもそも適応障害とは?
世界保健機構(WHO)の診断ガイドライン(ICD-10)では、適応障害は「ストレスにより引き起こされる情緒面や行動面の症状で、社会的機能が著しく障害されている状態」とされています。
ここでいうストレスとは「生活上の重大な変化やストレスに満ちた生活上のできごと」をいいます。
ストレスによる影響は個人単位のできごとから災害といった地域社会まで影響するようなレベルまで範囲が広く、また、同じストレスでも受け取る側一人ひとりによってその影響に大きく差があります。
適応障害は、何らかの生活の変化やできごとがその人に重大な影響を及ぼし、普段の生活ができないほどの抑うつ状態がおきたり、不安や心配になってしまい、正常に対応できなくなっている状態を指します。
さらに、ICD-10には、「発症は通常生活の変化やストレス性のできごとが起こってから1ヶ月以内であり、ストレスが収束後6ヶ月以上は症状が持続しない」とされています。
ただし、ストレスが慢性化している場合は症状も慢性化するため、注意が必要です。
適応障害を治療せずに放置してしまうと、うつ病になってしまうこともあります。
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気分や行動がおぼつかなくなる
適応障害の症状は精神面と行動面のそれぞれであらわれます。
気分が憂うつになったり、特に何かがあったわけでもないのに怒りや焦りといった感情を抱くことがあります。
また、何かを計画する、継続するといったことができないと感じる場合もあります。
たとえば、暴飲暴食や無断欠勤をしたり、無謀な運転やけんかといった攻撃的行動をとったりすることもあります。
子どもの場合には、指しゃぶりや赤ちゃん言葉などの「赤ちゃん返り」がみられることがあります。
また、不安な状態を強く感じ、緊張が高まると、汗をかく、めまいがでるといった症状がみられることもあります。
特に現在では、新型コロナウイルスによるさまざまな環境の変化がストレスになる方も多くなってきました。
「コロナうつ」という言葉もさまざまなメディアでも取り上げられています。
精神面・行動面の変化がある場合は医師に相談してみましょう。
病院に行くべき?セルフチェックリスト
適応障害の症状は人によって差がありますが、以下の症状が2週間以上続き、日常生活に支障がある場合は病院を受診しましょう。
▼睡眠の変化
□ 朝早く目がさめてしまう
□ 夢が多く、眠りが浅い
□ すっきり起きられない
□ 寝つきが悪い
▼食欲の変化
□ 食べすぎてしまう
□ 食欲の低下
▼気分の変化
□ 楽しいことがない
□ 普段は気にならないことでもかっとなってしまう
□ 気分が落ち着かない
▼行動の変化
□ やる気がでない
□ 身支度が億劫になる
□ 朝もだるく、起きられない
□ 気がつくと何かを食べている
□ 飲酒の量が増えた
※このチェックシートは、医師の診察に代わるものではありません。セルフチェックの結果が問題なさそうな場合でも、少しでも不安を感じたり気になることがあれば、必ず医療機関にご相談ください。
眠りが浅い、食べすぎてしまう、といったことがまれであれば問題ありません。
しかし、上記の症状が複数当てはまり、毎日続く場合は注意が必要です。
適応障害は薬では治りにくい
適応障害に似た症状がでる病気に「うつ病」「うつ状態」があります。
いずれも同様の症状があらわれますが、行動面とストレスから離れたときの状態に違いがあります。
行動面の違いでは、適応障害の場合、抑うつ状態の不安や焦り、怒りから突然大きな声を上げる、泣き出すといった気分のむらがみられます。
一概にはいえませんが、典型的なうつ病にはこのような症状はあまりみられません。
違いはストレス状態から離れたときにもあらわれます。うつ病の場合はストレスから離れても抑うつ状態が続きます。
しかし、適応障害の場合は、つらいと感じる特定の状況や環境から離れると症状が緩和されます。
そのため、特定の状況や環境から距離を置くことで、徐々に生活に楽しみを見いだせるようになります。
薬の効き方にも違いがあります。適応障害の薬物治療は対症療法(症状を和らげる)が中心で、根本的な治療にはなりません。
一方、うつ病にはいわゆる抗不安薬や抗うつ薬による治療が可能で、薬に反応しやすいといわれています。
適応障害はストレスが原因であるため、ストレス対処方法を学び、うまく対処していくことが重要になります。
コロナ禍のストレス対処ポイント3つ
新型コロナウイルスの感染への不安から大きなストレスを受けないようにするには、日ごろ以下のようなことを心がけることが大切です。
適切な感染予防
「人混みを避ける」「外出をできるだけ避ける」「身近なものの消毒をこまめにする」「マスクを着用する」など、適切な感染予防をしましょう。
そういった行動が、「自分はこれだけ感染しないための対策をしている」という自信につながり、安心感を得ることができます。
ニュースを見過ぎない
インターネットやテレビ、新聞などのメディアで連日、新型コロナウイルスの新規感染者数などが報道されています。
そのようなニュースを見過ぎることで、余計に恐怖感が増し、大きなストレスになってしまいます。
そのため、「1日のうち、新型コロナウイルスに関わる情報をみるのは最大15分まで」「調べる情報源は厚生労働省からのお知らせのみ」などルールを定めることで、情報過多になりすぎないようにするとよいでしょう。
生活習慣を崩さない
ストレスが溜まると、つい食べすぎてしまう、あるいは食欲がなくなってしまう、という方もいらっしゃるでしょう。
また「心配で眠りにつけない」と、不眠症になってしまう方もいらっしゃるかもしれません。
こうしたことが、さらに適応障害を悪化させる要因となってしまうこともあります。
そのため、バランスのとれた食事をしっかりととること、また夜更かしをせず毎日同じ時間に寝ることなどを意識しましょう。
毎日の生活リズムを整えることで、適応障害の予防につながるほか、免疫力も高まり感染症予防にも役立ちます。
コロナ禍でも適応障害にならないために
新型コロナウイルスの感染拡大による不安や生活の変化で、多くの人がストレスを感じていると思います。
適応障害という病気はストレスが主な原因ですが、だからといってストレス自体を減らす(新型コロナウイルスそのものを減らす)ことは難しいでしょう。
そのため、うまく対処しながら日常を送れるようになることが大切です。
感染予防、情報量の制限、正しい生活習慣をとるなど、適切な対応をするように心がけましょう。
少しでも不安や気になる点、心身に不調がある場合は、医療機関やカウンセリングを受診するようにしてください。
「勤労者心のメール相談」の利用
横浜労災病院勤労者メンタルヘルスセンター長の山本晴義医師(心療内科医)が自ら回答する「勤労者心のメール相談」という事業があります。
仕事上のストレスによる、身体的・精神的問題などに関する相談を、年中無休の24時間、無料で受け付けていて、24時間以内に返信があります。積極的に利用しましょう。
メールアドレス:mental-tel@yokohamah.johas.go.jp
厚生労働省でも、新型コロナウイルスによって、仕事や生活にストレスや不安を感じている方むけにサイトを立ち上げています。
さまざまな専門家からのアドバイスや、新型コロナウイルス関連の情報、相談窓口などが紹介されていますので、受診前にぜひ参考にしてみてください。
【記事監修】横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長 山本 晴義医師
執筆・監修ドクター
経歴1972年 東北大学医学部 卒業
1976年 東北大学医学部付属病院 心療内科助手
1981年 呉羽総合病院 心療内科部長
1983年 梅田病院 院長
1991年 横浜労災病院 心療内科部長
1998年 横浜労災病院 勤労者メンタルヘルスセンター長
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