皮膚カンジダ症と水虫の違いは?かゆみが全身に広がる…治療法について
足がかゆい、水ぶくれができた…など、一見水虫かのように思える症状ですが、もしかすると水虫ではないかもしれません。
皮膚は「最大の臓器」ともいわれ、たくさんの「皮膚常在菌」が存在しています。
普通は、この「常在菌」は病気を引き起こすものではありませんが、さまざまな要因が重なってバランスがくずれてしまうと、皮膚トラブルを引き起こすことがあります。
この記事では、そんな皮膚トラブルのひとつ、皮膚カンジダ症について解説しています。
皮膚カンジダ症とは
カンジダは、皮膚や腸管、女性生殖器周辺など、主に粘膜に存在する常在菌です。
またカンジダはカビの仲間でもある真菌ですが、普段私たちに悪さをすることはありません。ところが皮膚環境、体調、免疫機能の低下によってカンジダが増殖すると、皮膚トラブルを引き起こすのです。
多くの場合、その症状から皮膚カンジダと分かりますが、病名をはっきりと確定するには採血や皮膚を採取しての顕微鏡診断が必要です。
1.水虫とはどこが違う?その症状
水虫のように皮膚がグジュグジュとした状態になります。
患部は鮮やかな赤色に腫れ、ヒリヒリとした痛みのある発疹ができたり、水ぶくれやただれ、カサつきやかゆみが起きたりすることがあります。そして増殖が広がると、全身に様々な症状が表れることもあります。
水虫は感染部と非感染部の境目があるのに対し、皮膚カンジダは境目が分かりにくいことも特徴のひとつです。
2.夏場は特に注意!皮膚カンジダを発症する原因
カンジダは通気性が悪く、高温多湿の環境や、擦れ合う場所、汗をよくかく場所を好みます。
たとえば、キツイ下着の着用や、不衛生な環境はカンジダを増殖させます。また夏は暑く、湿度の高い環境になるので、皮膚カンジダにかかりやすくなります。
3.発生しやすい部位
手や足の指の間、内股、脇や乳房の下、お腹のたるみなど、通気性が悪く皮膚のシワができやすいところに発生しやすいです。
さらに、乳児や高齢者などオムツを使用したり、生理用ナプキンを使用したりするとカンジダが増殖しやすい環境になります。感染した患部が体の他の部位に触れると、触れた部位も皮膚カンジダを引き起こすことがあります。
4.どんな人が感染しやすい?
以下の方々はかかりやすいです。
・乳児
・高齢者
・ストレスや疲れが溜まっている方
・不規則な生活をしている方
・糖尿病、膠原病、悪性腫瘍などの免疫機能低下の疾患がある方
以上のように、体の免疫力がひくいと、皮膚カンジダになるリスクが高いです。また、寝たきりの方も、高温多湿で皮膚の摩擦が起こりやすく発症の要因となるため、周りの人のサポートが必要になってきます。
また、他の疾患にかかっている人は、その治療にともなって皮膚カンジダを発症することもあります。
なぜそうしたことが起こるかというと、抗生物質やステロイドなど効果の強い薬を服用することで、カンジダとバランスをとっていた常在菌が死滅します。そうしてバランスが崩れ、カンジダが増殖することで皮膚カンジダにかかりやすくなるのです。
皮膚カンジダ症の治療法と治療期間
カンジダ症を引き起こす真菌は、細胞膜に覆われており、真菌はこの細胞膜の中だけでしか生息することができません。そのため、細胞膜が作られる過程を阻害する治療薬が使われます。
1.外用薬
外用薬治療では主に、カンジダに対しての抗菌力が優れる抗真菌薬、イミダゾール系の外用薬が使われます。薬を用法どおり使うことで約2週間で治るといわれています。
外用薬には、軟膏、クリーム、ローション、スプレーなど様々な種類がありますが、ただれている場合は、刺激にならないように軟膏やクリームの使用をおすすめします。また、必要に応じて抗生剤が入った外用薬を使うこともあります。
ガンジダ症の治療では、患部をできるだけ乾燥させることが完治への近道です。外用薬の使用とともに、日常生活で患部を乾燥させるよう心がけてください。
場合によっては、患部を乾燥させるためにベビーパウダーのようなものをつけることもあります。しかし、かえって刺激になってしまうこともあるため、主治医と事前に相談のうえで使うようにしましょう。
2.内服薬
広い範囲に症状があらわれている場合は、抗真菌薬であるトリアゾール系を内服して治療していきます。このトリアゾール系の薬には、一部保険適用外のものもあります。
また、必要に応じて外用薬と内服薬との併用も行います。完治の期間は症状の進行度によっても異なりますが、早い場合で2週間ほどかかります。
3.点滴
感染が広がり重症になった場合は、静脈内に抗真菌剤が入った点滴を行います。
4.治療の注意点
同じカビの一種である水虫より、カンジダ症の方が比較的早く治る傾向にあります。
とはいうものの、カンジダではないのにカンジダ症の薬を使ったり、カンジダ症にもかかわらず、ステロイドのような薬を使ったりすると皮膚症状が悪化することがあります。
きちんと症状を確認した上で、医師、薬剤師の指示のもとに正しい薬を使いましょう。
まとめ
いつもは、私たちの体を守る役割を担い、悪さをすることのない菌でも、環境や体調によってからだの一部、もしくは全身に症状を引き起こすことがあります。その病気のひとつが皮膚カンジダ症です。
誰でも起こり得る病気なので、足にかゆみや水ぶくれが発生したからといって、水虫だと決めつけないようにしましょう。
もし皮膚カンジダ症の兆候が見られたら、他の部位にひろがらないように、早めに皮膚科を受診してください。
また予防として、日頃から衛生環境を保つこと、不摂生をせず疲れやストレスをためないように心がけましょう。蒸れやすい箇所は汗拭きシートを使ったり、ゆったりとした肌着を着て通気性を良くしたりなどの工夫をするといいですね。
執筆・監修ドクター
経歴北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
を経て横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長 就任
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