おしりがかゆい、ムズムズする!これって痔?『肛門そう痒症』の症状
おしりがかゆい、ムズムズする…そんな経験はありませんか?
デリケートゾーンである肛門まわりのかゆみは、人に相談しづらく、病院に行くのも躊躇してしまいがちですよね。
とくに女性は言い出しづらいことでしょう。
しかし、それらの症状には重大な病気が隠れているケースもあります。
この記事では『肛門そう痒(よう)症』 の原因から、検査・治療方法までを解説いたします。
『肛門そう痒症』とは
1.肛門そう痒症ってどんな病気?
肛門周囲で炎症を起こして、痒みが生じる症状を『肛門そう痒症』といいます。
炎症は、細菌が増殖・繁殖し、肛門まわりの皮膚がただれることで起こります。
2.肛門に炎症が起こるしくみ
肛門まわりは細菌が繁殖しやすい
細菌の繁殖には、適度な温度・湿度・エネルギーが必要です。
肛門の周囲は、細菌が活躍しやすい温度(体温である約37℃)に保たれています。
そのため、細菌のエネルギーが増大しやすく、細菌が繁殖するには絶好の場所です。
細菌のエネルギーは、便にも含まれます。
眠っているときに肛門の筋肉がゆるむ
眠っているときは、精神的にリラックスするだけでなく、肛門の開閉を調整する筋肉も少しゆるみます。
そこから目に見えない便の一部が肛門周囲にもれ出してくることがあるのです。
この便が、細菌の繁殖を広げ、炎症の原因となります。
かくとさらにかゆみが…!
一度皮膚に炎症が起きると、滲出液(しんしゅつえき)と呼ばれる液体が出てきます。
滲出液は、体液や血球成分からなり、それ自体は悪いものではありませんが、皮膚を刺激することでかゆみが生じます。そして、かくことで炎症が広がり、さらに滲出液が出てきます。
よって、かけばかくほどかゆくなる、という悪循環におちいってしまうのです。
3. 肛門そう痒症の原因
痔などの肛門の病気
痔などの肛門の病気が原因となる場合があります。
肛門の病気によって肛門が閉まりにくくなり、便がもれ出しやすくなります。そこから細菌が繁殖し、おしりが痒くなります。
しかし、痔になったからといって、必ずしも『肛門そう痒症』を発症するとは限りません。
とくに、若い人は筋肉がしっかりしているため、便がもれ出すケースは少ないでしょう。
また、皮膚炎を引き起こす、カンジダ菌も原因として考えられます。
下着の締め付けや飲酒などの生活習慣
生活習慣のなかで、知らないうちに肛門そう痒症の原因となっているものもあります。
そのなかで、おもな原因として、下着の締めつけによる患部への刺激・アルコールやカフェインの摂りすぎ・精神的ストレスなどが挙げられます。
改善法については、下記の治療法のところで、くわしく紹介しています。そちらもあわせてご覧ください。
4.肛門そう痒症と間違えやすい病気
白癬菌による皮膚炎
カビの一種である白癬(はくせん)菌による『白癬症』にかかっていると、おしりが痒くなることがあります。
この場合、どちらの治療を優先するかは、医師と相談しながら治療を進めましょう。
肝硬変
肝硬変によって、お腹に水がたまって痔になった場合、おしりが痒くなることがあります。
肝硬変の場合、肛門そう痒症の治療を優先することで、もともとの病気を悪化させることも考えられます。
医師ときちんと相談しながら治療をおこなってください。
十二指腸虫(ぎょう虫)症
子どもによくみられる、十二指腸虫(ぎょう虫)症でもおしりがかゆくなります。
睡眠時に肛門からぎょう虫やその卵が出てきて、むずがゆくなるのがその原因です。
肛門そう痒症の検査方法
直腸や痔など、肛門に関する病気がないかを検査し、かゆみが発生している原因を探します。
検査は、直腸診(ちょくちょうしん)とよばれる検査や肛門鏡、直腸鏡を使った観察をおこないます。
1.直腸診検査
医師が肛門から指をいれて、検査をおこないます。
比較的簡単にでき、おこなわれることが多いです。
2.肛門鏡、直腸鏡を使った検査
肛門鏡、直腸鏡とよばれる器具を肛門から入れて、肛門やその奥の状態を観察します。
粘膜のたるみや色調、ただれ、痔がある場合は、大きさなどを見落とさないよう、医師は細心の注意を払います。
3.その他、病気に応じた検査
皮膚炎や肝硬変など、その他の病気が疑われる際は、それぞれの病気に応じた検査がおこなわれます。
肛門そう痒症の症状が出た場合、重大な病気にかかっていることも考えられます。
絶対に自己判断せず、病院で診療を受けてください。
『肛門そう痒症』の治療方法
1.肛門の病気の治療
まず、痔などの肛門の病気がある場合は、その治療をします。
下痢や便秘の症状がある場合も肛門のかゆみにつながるので、根本となる症状を治療していきます。
2.生活の中で注意すること
とくに原因となる病気がみられない場合は、日常生活に原因がある場合もあります。
以下のようなことには注意しましょう。
下着や服による締めつけ
下着の締めつけは、肛門まわりの湿度を上げたり、こすれたりする原因になります。
そのため、下着類は綿100%のものに切り替えるとよいでしょう。
また、ガードルやジーンズなど、皮膚と密着するものの使用は避け、通気性を保つようにしましょう。
温水洗浄便座の使いすぎには注意!
トイレでは、排便時に柔らかいトイレットペーパーを用いること、排便後は温水洗浄便座やぬるま湯で肛門を洗浄することが大切です。
しかし、日常的に温水洗浄便座を長時間(1~3分)使用することで、肛門そう痒症になるケースもあります。
過剰にお尻を清潔にしようとすると、かえって肛門への刺激となり、かゆみが生じます。
使用時間は30秒くらいにとどめましょう。
シャワーはぬるま湯で
お風呂では、シャワーで直接熱いお湯をかけないように注意してください。
熱いお湯だと刺激が強く、血行がよくなりすぎるため、かゆさが生じます。
患部を洗うときは、ぬるめのお湯をかけるようにしましょう。
石鹸でゴシゴシと洗うと、粘膜に傷ができてしまうため、やさしく洗うように心がけてください。
アルコールやカフェインはひかえる
アルコールやカフェインの摂りすぎにも注意が必要です。
カフェインはコーヒーや紅茶のほか、疲労回復を目的としたドリンク剤にも含まれているので、注意しましょう。
ストレスを溜めない
肛門そう痒症は、精神的ストレスも原因となります。
ストレスを感じると、自律神経が活発にはたらき、血行がよくなりすぎてしまいます。
すると、かゆみが生じたり、イライラして患部をかいたりしてしまいがちです。
自律神経のバランスがとれるように、心と身体を落ち着かせる時間を作りましょう。
まとめ
肛門そう痒症は、おしりのかゆみがおもな症状です。
症状だけ見れば単純そうにも思えますが、その裏にはさまざまな原因が潜んでいます。
診療を受けるのが恥ずかしく、なかなか足が進まない…という方もいらっしゃるでしょう。
しかし、直腸進行がんなど、命にかかわるような病気が隠れていることもあります。
早期発見・早期治療のためにも、気になる症状があればすぐに病院を受診しましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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