身近に潜む!内耳窓破裂症の原因とは?手術の効果やデメリットについて
鼻をかんだり、重いものを持ち上げたりしたときに、耳に痛みを感じたことはありませんか?
飛行機やジェットコースター、スキューバダイビングをしているときに、耳の奥に痛みを感じた経験があるかたも多いのではないでしょうか。そのような痛みや違和感は、耳の内部に強い負担がかかっている、というサインです。
こちらの記事では、そんな日常の何気ないシーンでかかる可能性のある『内耳窓破裂症』の原因や症状、治療法を解説します。
内耳窓破裂症とは
1.「内耳窓」に穴が開く病気
『内耳窓破裂症(ないじそうはれつしょう)』は、中耳と内耳の間にある『内耳窓』が破れて穴が開き、リンパ液が中耳に漏れ出す病気です。
内耳窓は、『正円窓(せいえんそう)』と『卵円窓(らんえんそう)』からなります。
耳そうじなどで誤って耳の内部を傷つけることが原因にもなるので、注意が必要な病気です。
2.内耳窓破裂症の原因
主な原因として次のことが挙げられます。
・飛行機、登山、スキューバダイビングなど、気圧差のある場所の急激な移動
・力みや重いものを持ち上げるなど、脳髄液圧や中耳圧に急激な変動を起こす行為
・頭部の打撲やむちうち
・耳そうじなどによる耳の内部の傷
3.内耳窓破裂症の症状
次の症状が主にあらわれます。
難聴、耳鳴り(水が流れるような音)、耳閉感(耳の穴がふさがるような感覚)
外リンパ液が外耳に漏れることで、蝸牛(かぎゅう)が損傷すると、難聴や耳鳴り、耳閉感などの症状が起こります。
めまい、ふらつき
前庭や半規管が損傷すると、めまいや平衡障害などの症状が起こります。
内耳が破れるときの「パンッ」という音
内耳が破れるときに、「パンッ」という音を自覚することもあります。
4.間違えやすい!症状のよく似た別の病気
内耳窓破裂症は症状が似ている疾患がいくつかあり、症状のあらわれ方にも個人差があるため、診断が難しい病気です。
突発性難聴
突然難聴が発症する、という点で突発性難聴と似ています。内耳窓破裂症であっても、その症状から、突発性難聴と診断されることもあります。
前庭神
難聴などがなく、急に激し経炎いめまいに襲われる症状があらわれる場合は、前庭神経炎とも似ています。
メニエール病
難聴とめまいとを交互に繰り返す症状は、メニエール病の場合もみられます。
内耳窓破裂症かな?と思ったら
1症状があらわれたら耳鼻いんこう科で検査を!
内耳窓破裂症を疑われる症状がみられたら、耳鼻いんこう科へ行って診療を受けましょう。
先に解説したように、内耳窓破裂症は、症状が他の病気とも似ており診断の難しい病気です。
そこで診断にあたって、内耳の正円窓や卵円窓に穴が開いていないか、リンパ液が漏れていないかを検査します。
2検査方法
内耳窓破裂症でよく行われるのは『CTP検査』です。
『CTP検査』は、鼓膜に穴を開けて内耳を生理食塩水で洗浄し、漏れ出している外リンパ液の成分を調べる検査法です。
内耳窓破裂症の治療方法
内耳窓破裂症であると診断を受けたら、『経過観察』か『手術』のどちらかで治療します。
1.安静にして経過観察
安静にしていれば、約30~40%の人は症状が改善し、自然に治癒していきます。頭を高く持ち上げた状態で安静にするのが望ましいです。
2.手術について
強い症状や頭部外傷が原因の場合は手術を検討
めまいが激しい、難聴の度合いが強い、難聴が日々進行している、頭部の外傷が原因の場合などは手術を行った方がよいでしょう。
安静にしていても難聴やめまいなどの症状が改善しない場合にも手術をおすすめします。
リンパ液の漏れている箇所を閉鎖する手術を行う
内耳窓破裂症では、『鼓室試験開放術』という手術が通常行われます。
この手術では、内耳窓の外リンパ液の漏れが確認された箇所を、筋膜とスポンゼルという素材を用いて閉鎖します。全身麻酔を施し、耳の後ろを切開して(『耳後切開』)手術を行います。
手術を行うことで、めまいの症状の改善が期待できます。
手術は約1時間半、入院は最短で2泊3日ほど
手術は1時間半ほどで終わります。
また、入院期間は最短で2泊3日です。
3.手術をするデメリット
耳の後ろを切開することで、数か月ほど耳の聞こえが鈍くなることがあります。
また、手術した側の舌の前方だけ、味覚が低下することもあります。これは、手術中に卵円窓と正円窓の間の下前方にある味覚神経にどうしても触れてしまうために起こります。
味覚の低下は、数カ月経てば回復することがほとんどですが、まれに戻らないケースもあります。
まとめ
内耳窓破裂症は、難聴やめまいなどを伴い、日常生活に大きな支障をきたす可能性のある病気です。とはいえ、病院へ行ってしっかりと診療を受ければ、症状の改善や完治も見込めます。
症状や原因から、「内耳窓破裂症かも?」と思ったら、できるだけ安静にして、原因となるような動作をしないように気をつけてください。また、早めに病院へ行き、医師の診察を受けましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2002年5月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科臨床研修医
2004年5月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科助教(院外)
2006年6月 幕内会 山王台病院 外科
2007年6月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科助教
2008年6月 関東労災病院 外科
2009年6月 昭和大学藤が丘病院 消化器外科 助教
2012年10月 横浜旭中央総合病院 外科、昭和大学藤が丘病院 兼任講師
2017年11月 しらはた胃腸肛門クリニック横浜を開業、院長に就任
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