ストレスが原因!?心因性難聴とは。症状や、診断までの検査について
心因性難聴は、おもにストレスが原因で耳の聞こえが悪くなる病気です。
近年、学童期の子どもが心因性難聴にかかるケースも増えています。
この記事では、心因性難聴とはどんな病気か、また診断までにおこなわれる検査、かかった場合の注意点について解説します。
心因性難聴について。どんな症状?
1.心因性難聴とは?
『心因性難聴』とは、おもにストレスが原因で発症する難聴のことです。
耳や脳など「聞こえ」を左右する器官に異常が見当たらないにもかかわらず、聴力検査では難聴が認められる状態を『機能性難聴』と言います。
その中でも、心理的なことが原因だと明らかなものが心因性難聴です。
2.心因性難聴の症状は、人によってさまざま
片耳か、両耳かも人によってちがう
「心因性難聴」とひと言に言っても、症状は人によって異なります。ときには何の前触れもなく、両側同時に症状が現れることもあります。
また、症状の経過中に聞こえの状態が一定しないのも、心因性難聴の特徴です。
難聴以外に、耳鳴りやめまいを感じることも…
難聴だけでなく、『耳鳴り』や『耳の痛み』、『めまい』、『耳のつまり』など、他の耳の不調を同時に感じることもあります。
また、耳以外の身体的な不調としては、視覚が狭まる『視野狭窄(しやきょうさく)』、『腹痛』や『食欲不振』、上手く歩けなくなる『失調歩行』などがあります。
自覚症状がなく、健康診断でみつかることも珍しくない
心因性難聴は、学校や職場で行う健康診断の聴力検査で異常が発見されて、受診に至るケースが多くみられます。
本人も周囲も全く症状に気づいておらず、日常生活に支障がないことも珍しくありません。
3.心因性難聴になりやすい人とは?
心因性難聴は、どちらかというと男性よりも女性に多くみられます。少々幼い性格で、依存心の強い人がなりやすいとも言われています。
また、ここ数年学童期の心因性難聴が増加傾向にあります。小中学生1万人に5~8人くらいの割合で発生しており、年齢は6~12歳に多くみられます。
親子や兄弟、友人や先生などとの人間関係や、進学に関する悩み、家庭環境の問題などの原因が多いと言われています。
これらの心理的ストレスが複数重なって発症することも多々あります。
心因性難聴の診断をうけるまでの検査
1.難聴を早期に発見する「標準純音(じゅんおん)聴力検査」
難聴の早期発見を目的とした検査
1次検査としては、『標準純音聴力検査』をおこないます。
最もベーシックな検査で、難聴の早期発見を目的としています。
健康診断などでもおこなうため、この検査をうけた覚えがある人も多いのではないでしょうか?
さまざまなタイプの音が聞こえるかどうか、調べる
検査は、ヘッドホンのような形の検査機を左右の耳にあてた状態でおこないます。
検査機から125ヘルツから8,000ヘルツまでの幅広い周波数の音が7種類発せられ、それぞれの音が聞こえるかを調べていきます。
小さい音、大きい音、高い音、低い音などさまざまなタイプの音で測定を行うことで、難聴の有無や程度が分かります。
軽度の難聴~全く聞こえない状態まで発見できる
心因性難聴の場合、この検査で発見できる難聴の程度は軽度の場合から、全く聞こえない聾(ろう)の状態まで様々です。
2.より正確に聴力をしらべる「他覚的(たかくてき)聴力検査」
原因をつきとめ、さらに正確な聴力を測定する
標準純音聴力検査で難聴が認められると、原因を突き止めるために『他覚的聴力検査』と呼ばれる精密検査を行います。
この検査では、標準純音聴力検査よりも正確に、現在の聴力レベルを測定することができます。
内耳の機能をしらべる検査
精密検査の中で最も簡易的に行われるのが、『歪成分耳音響放射(ひずみせいぶんじおんきょうほうしゃ)検査』と呼ばれるものです。
耳の最も奥側である内耳と呼ばれる箇所から発生するエコーを測定することで、内耳が正常に機能しているかを調査します。
心因性難聴の診断の決め手にもなる検査
次に、『聴性脳幹反応検査』をおこないます。この検査は、心因性難聴の診断の決め手にもなります。
聴性脳幹反応検査では、音に反応する脳波をコンピュータで記録することで、現在の聴力を推測します。
他覚的聴力検査で問題がないと、心因性難聴の可能性が
このように、複数の検査方法で聴力の測定を行い、心因性難聴であるかどうかを診断します。
純音聴力検査で異常が認められても、他覚的聴力検査では問題が見つからない場合は、心因性難聴の可能性が考えられます。
心因性難聴と診断されたら…注意すること
1.精神的なストレスを取り除けるようつとめる
「心因性難聴」と診断された場合、たとえ表面的には分からなくても、精神的なストレスを抱えています。
ストレスの原因が明確な場合であれば、それが解消されることで、すぐに正常な聴力が取り戻せるケースも多くあります。
ご本人も周りの方も「耳の機能的には異常がない」ことをまずは理解してください。その上で、不安な気持ちをなるべく取り除けるようつとめましょう。
2.周りの人は、プレッシャーを与えないように注意
周りの人が、取り立てて病人扱いしないことも大切です。
同時に、「難聴ではないはず」「気持ちの持ち方で変わる」など、プレッシャーを与える言葉を掛けないように注意する必要もあります。
まとめ
ストレスの多い現代社会を生きている私たちにとって、心因性難聴は、誰にでも起こり得る身近な疾患です。
心因性難聴にかからないようにするためには、ストレスを溜めないことが重要です。何か自分なりのストレス解消法があるといいですね。
また、子どもの心因性難聴は、早めに気づいてストレスを除去するよう、身近な大人がしっかりと対処してあげることが大切です。
原因となるストレスへ早めに対処するためにも、心因性難聴の疑いがある場合は、すみやかに病院へ行きましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2001年 慶應義塾大学医学部附属病院耳鼻咽喉科入局
2002年 佐野厚生総合病院耳鼻咽喉科
2004年 川崎市立川崎病院耳鼻咽喉科
2007年 静岡市立清水病院耳鼻咽喉科 科長
2011年 深谷耳鼻咽喉科クリニック開業
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