風邪でも関節痛や筋肉痛はなぜ起こる?原因と治し方のポイントを医師が解説
すり傷や切り傷など、目に見える外傷と痛みの場合は、ある程度の原因と処置の方法が分かるかもしれません。
しかし、風邪などをひいて体調が悪い時の関節痛や筋肉痛は何が原因なのかわからず、やり過ごしてしまった経験はありませんか?
この記事では、風邪で起きる関節痛や筋肉痛のメカニズム、対処法について解説します。
風邪による関節痛・筋肉痛について
風邪とインフルエンザの違い
関節痛や筋肉痛は、インフルエンザを発症したときだけでなく、風邪でも同じような症状が起きます。
ここではまず、簡単に風邪とインフルエンザの違いについて知っておきましょう。
風邪の場合
1. 原因はさまざまなウイルスや細菌。種類が多いので原因を特定することは困難。
2. 発熱した場合は、37~38度くらい。
3. 喉の痛みや鼻水などの症状が先に表れる。鼻の症状は「ライノウイルス」、喉の症状は「アデノウイルス」などがある。
4. 症状は局所的で、ゆっくり表れる。
インフルエンザの場合
1. 原因は、インフルエンザウイルス。
2. 発熱は38度以上で、風邪よりも高熱のケースが多い。
3. 関節痛や筋肉痛、だるさ、寒気などの全身症状が先に表れる。
4. 症状は全身に、急激に表れる。
体調が悪いとき、特に冬の間は風邪なのかインフルエンザなのか、病院で検査をしなければ判断がつかないこともあります。でも、上記のように風邪とインフルエンザは、似ているけれど違う原因や症状があるのです。
関節痛や筋肉痛が起こる原因
インフルエンザだけでなく、風邪の場合も関節痛や筋肉痛が起きる可能性があるのは、体に侵入したウイルスを撃退するために分泌される「プロスタグランジン」が関わっているからです。
プロスタグランジンには、発熱や痛みを引き起こす働きがありますが、そもそも発熱は、体に侵入した外敵であるウイルスを撃退するために必要なものです。
体温を上げることによって免疫機能を高めたり、熱に弱いウイルスの増殖を抑えたりするわけです。
体にとっては異物である風邪やインフルエンザのウイルスが侵入すると、体の防御機能が働いて「サイトカイン」という物質が分泌されます。
サイトカインは脳に発熱の指令を出します。すると、プロスタグランジンが分泌され、発熱や関節痛・筋肉痛などの痛みが生じるのです。
関節痛や筋肉痛が起こるタイミングは?
関節痛や筋肉痛が起こるタイミングは、理論的にはプロスタグランジンが分泌され始めてからです。
つまり、風邪のひき始めからウイルスと闘っている最中、ということになります。関節痛や筋肉痛はつらい症状ですが、これは体がウイルスと闘っている証拠でもあるのです。
風邪による関節痛・筋肉痛の治し方
ここでは、関節痛や筋肉痛を緩和する方法を紹介していきます。
自分でできる治し方
風邪の関節痛や筋肉痛を治す一番の方法は、風邪をきちんと治すことにつきます。まずは安静に、つまり寝ていることが最たる治療法ということになりますが、大人の場合、安静にしておくことが無理な方もいらっしゃることでしょう。
そのような場合でも、普段よりは無理をせず、可能な限り安静を保つようにすることが肝要になります。
でも、つらい痛みを我慢し続けるのも大変なことです。対症療法ではありますが、関節痛や筋肉痛を緩和する方法を紹介していきます。
患部を冷やす
関節痛や筋肉痛を緩和したいときは、患部を冷やしてください。スッとした冷感で気分が落ち着く場合があります。
ただし、発熱時におでこを冷やすのと同じで根本的な解決にはなりませんし、ある程度の体温上昇はウイルスと闘うために必要なので、冷やしすぎないようにしてください。
鎮痛剤を飲む
いわゆる解熱鎮痛剤は、ドラッグストアなどで購入できます。服用することで関節や筋肉の痛みを軽減させます。
ただし、服用する前に必ず確認してほしいことがあります。むやみに使うと、治療の妨げや副作用が出る可能性がありますので、注意してください。次の項目で、詳しく解説していきます。
市販の鎮痛剤を飲む際の注意点3つ
市販の解熱鎮痛剤は、手軽に利用できる薬のひとつです。正しく服用すれば風邪で起こる関節痛や筋肉痛も緩和してくれます。ただし、注意点が3つあります。
鎮痛剤の成分を確認
解熱鎮痛剤にはさまざまな種類があります。風邪で起こる関節痛や筋肉痛を緩和するには、プロスタグランジンを抑制することが必要です。プロスタグランジン抑制に有効な解熱鎮痛剤を選びましょう。
薬の注意書きをよく読むこと、また分からないことがあれば、必ず医師または薬剤師に相談してから服用しましょう。
すでに風邪薬を服用している場合は主治医や薬剤師に相談
風邪薬には、解熱鎮痛剤が含まれているものがあります。重複して服用するのはよくありません。
子供に飲ませる場合は主治医に確認
アスピリンや市販の鎮痛剤にも含まれるインドメタシンなど、子供には使えない解熱鎮痛剤がありますので、注意しましょう。服用させる際は、主治医に相談してからのほうが安心です。
いずれにしても、解熱鎮痛剤の乱用は厳禁です。解熱鎮痛剤は関節痛や筋肉痛とともに熱も下げてくれますから、服用すれば体自体は楽になるはずです。
ただ、発熱はウイルスと闘うための手段です。解熱鎮痛剤は体が消耗しすぎない程度に、適切に使うことが大切です。
関節痛や筋肉痛が治るまでの期間
風邪は1週間ほどで治りますから、関節痛や筋肉痛も、風邪症状の終息と共に自然と治ることがほとんどです。
風邪の症状が治まっても関節痛や筋肉痛のみが残る場合は、別の病気の可能性も考えなくてはいけないので、医療機関を受診してみましょう。
まとめ
昔から、風邪は万病のもとと言われています。「このくらいなら大丈夫」と頑張ってしまうのもほどほどにしましょう。我慢強い人ほど、痛みをこらえてしまいがちです。
痛みは間違いなく体が発しているSOSですから、放置せずに何かしらの対処が必要です。セルフケアはもちろんのこと、必要に応じて医療機関を受診することはご自身の健康のためにも大切なことです。
執筆者:岡村クリニック 岡村長門 先生
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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