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片側顔面痙攣とは
片側顔面痙攣の症状
初期症状としては片眼の周囲が軽くピクピクと痙攣する程度です。次第に同じ側の頬、額、口、顎(あご)へと範囲が広がります。さらに症状が進行すると、顔が引きつってゆがんだり、片眼がギュッとつぶったままになったりするようになります。
症状は、顔面の筋肉を動かした時、疲労や精神的ストレスで悪化することが多く、横になる、アルコールを摂取することにより症状が軽減する傾向があります。
なお、味覚や顔面の感覚異常は認めません。
また、痙攣の振動が内耳(耳のもっとも内側にあたる部分)に伝わることによって、耳鳴りがする場合もあります。
発症初期は、症状があらわれないことがまれにあります。しかし、進行するにつれて出現頻度が高くなり、寝ている間にまであらわれるようになります。
また、片眼が開けられないほど顔が引きつることもあり、人前に出にくくなる、車の運転が難しくなるなど、日常生活にも支障をきたすようになります。
片側顔面痙攣の診療科目・検査方法
症状が疑われる場合は脳神経内科や脳神経外科を受診しましょう。
問診や視診などにより診断します。診察時に症状があらわれていない場合には、眼をギュッとつぶってパッと開いたり、口を真一文字に引き伸ばしたりすることによって、まぶたの下に痙攣を誘発するようテストをおこないます。
詳しい検査として、CT(コンピューター断層撮影)、MRI(磁気共鳴画像)、MRA(磁気共鳴血管造影)などの画像診断をおこない、顔面神経を圧迫している血管の状態や脳腫瘍などの可能性の有無を調べます。
片側顔面痙攣は眼瞼痙攣(がんけんけいれん)と症状がとよく似ています。
しかし、片側顔面痙攣が片眼の周辺から症状があらわれはじめて同じ側の顔に広がるのに対し、眼瞼痙攣は両眼に症状があらわれるだけで範囲が広がることはありません。
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片側顔面痙攣の原因
はっきりとした原因はまだわかっていません。
末梢性顔面神経麻痺が治った後に生じるものや、脳底動脈や後下小脳動脈などの脳の血管が顔面神経麻痺に触れることにより生じるものがありますが、原因不明の場合もあります。
内側に悪玉コレステロールが付着して、弾力性を失ったり硬くなったりした血管(動脈硬化した血管)が、顔面神経を圧迫することによっておこるといわれています。
ほかに、脳腫瘍や動脈瘤が顔面神経を圧迫しているという説や、顔面神経麻痺の後遺症であるとの説、ストレスなどの精神的緊張が引き金になるという説もあります。
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片側顔面痙攣の予防・治療方法・治療期間
主な治療法としては、ボツリヌス毒素療法と手術の大きく2種類です。
抗不安薬や抗てんかん薬、筋弛緩薬などの薬物内服療法が用いられる場合もありますが、効果は十分でなく、眠気やふらつきなどの副作用の可能性もあり、他の治療法が実施されない場合に行われます。
ボツリヌス毒素療法
海外や日本国内では第一選択の治療法で、公表されている有効率は92.62%と高いです。
痙攣している顔の筋肉にA型ボツリヌス毒素製剤を注射し、軽度の麻痺をおこすことによって症状を抑制します。
個人差はありますが、治療効果は2〜3日後から出現し、1〜2週間で安定します。また1回の注射で約3~4カ月間効果が持続します。数カ月ごとに繰り返し注射しますが、治療時間は短く数分で終了します。
副作用はほとんど出ることはありませんが、まれにまぶたが閉じにくくなったり、口角が下がったりすることもあります。
また、ボツリヌス毒素といっても、口から入って腸で大量に吸収されない限り中毒症状はおこりません。
片側顔面痙攣でのボツリヌス毒素療法は保険が適用されます。しかし、所定の研修を受講した専門医以外は施術することができないため、受診機関が限られます。
また、妊娠中や授乳中などボツリヌス毒素療法を受けられない場合もあるので、受診の際は医師によく相談してください。
手術
脳の血管による顔面神経の圧迫を除去する手術(神経血管減圧術、いわゆるJannettaの手術)をします。耳の後ろに小さな穴をあけて、顕微鏡を使っておこなう手術です。
80〜90%と有効性の高い根本治療です。しかし、全身麻酔を伴う開頭手術のため非常に高度で熟練の技術が必要な術法です。患者さんによりますが、2週間ほどの入院が必要です。
また、顔面神経麻痺や聴力障害などの合併症を引きおこす可能性がまったくないとはいえないため、症状の無い側に難聴などの聴力障害がある場合は他の治療が勧められます。
内服療法
ベンゾジアゼピン系薬剤(クロナゼパム、ジアゼパムなど)、筋弛緩薬(チザニジン塩酸塩、バクロフェン、ダントロレンナトリウム水和物など)、抗てんかん薬(カルバマゼピン、フェニトインなど)があります。
生活習慣
片側顔面痙攣は、動脈硬化やストレスなどの精神的緊張が関係しているといわれています。
日常生活において動脈硬化の予防やストレス解消を心がけましょう。
適度な運動
ジョギングやウォーキングなどの有酸素運動は、動脈硬化の予防に効果があります。楽しく続けられそうなものから始めましょう。
食事
動脈硬化を予防するためにも規則正しい食習慣と「1日3食腹8分目」を心がけ、よく噛んでゆっくりと食べることが大切です。
偏ったメニューや脂肪分の多い食事を避け、バランスの良い食事を心がけましょう。
リラックスできる時間
精神的ストレスは心身ともに大きな負担となります。好きな音楽を聴いたり、本を読んだりするなど、リラックスできる時間を持つよう心がけましょう。
睡眠
睡眠不足はストレスの原因になります。毎日十分な睡眠をとるよう心がけましょう。
片側顔面痙攣の治療経過(合併症・後遺症)
手術が可能であれば、手術法がもっとも治る確率は高くなります。しかし術後合併症の可能性がゼロではありません。
ボツリヌス毒素療法では慎重な診断が必要となります。痙攣の原因となっている病気がある場合は、その病気の治療も並行しておこなう必要があります。片側顔面痙攣を発症する患者さんは、動脈硬化、高血圧症との併発が高いとされています。
薬を飲む治療法は対症療法(たいしょうりょうほう:病気を根本から治すのではなく、あらわれている症状を抑えるだけの治療法)です。
長期間服用していると効果が弱まってきて、増量すると副作用があらわれることがあります。ボツリヌス毒素療法も、数カ月で薬効が切れてしまい症状は再発します。どちらも根本から治すことは難しい治療法です。
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片側顔面痙攣になりやすい年齢や性別
40代以降の中高年齢層での発症率が高く、20歳未満では一般にまれです。
男性よりも女性に多くみられるという報告があります。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2000年 福岡大学医学部卒業
2008年 福岡大学病院 神経内科 助教
2009年 福西会病院 神経内科部長
2012年 福西会病院 神経内科・リハビリテーション科部長
2016年9月 おばた内科クリニック開院
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