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はついくせいこかんせつけいせいふぜん発育性股関節形成不全

せんてんせいこかんせつだっきゅう先天性股関節脱臼
更新日:2022/08/10 公開日:2019/06/21 view数:5,400

発育性股関節形成不全(はついくせいこかんせつけいせいふぜん)とは、赤ちゃんにおこる股関節の脱臼などの状態です。大腿骨の先端部分と骨盤との接続が生まれた時からゆるかったり、形成不全をおこしていたりすることが脱臼の要因の一つです。

脱臼自体は出生時の骨格形成と、出生後のおむつや抱っこの仕方などの外的な要因が加わって発生すると考えられています。赤ちゃんの股関節は、出生直後は容易に外れやすく、股関節脱臼は特に注意しなければいけません。

1970年代には100人に1人の赤ちゃんに股関節脱臼が発生していました。その後、股関節を伸ばした状態での巻きおむつをやめて、股関節を開いた状態でのおむつに変える呼びかけがおこなわれると、大幅に減少しました。

近年では再び股関節脱臼が増加傾向にあるとされています。これについては、股関節脱臼の減少により、脱臼への注意が払われなくなったことも要因にあると考えられています。

以前は先天性股関節脱臼という呼び名をつかっていましたが、その後欧米ではこのような言い方をしなくなり、日本小児整形外科学会および日本整形外科学会ではこれに対応して「発育性股関節形成不全」と呼ぶことにしました。現在は日本国内でも論文はほぼこちらが普及しています。

目次
  1. 発育性股関節形成不全の症状
  2. 発育性股関節形成不全の診療科目・検査方法
  3. 発育性股関節形成不全の原因
  4. 発育性股関節形成不全の予防・治療方法・治療期間
  5. 発育性股関節形成不全の治療経過(合併症・後遺症)
  6. 発育性股関節形成不全になりやすい年齢や性別

発育性股関節形成不全の症状

大腿骨の先端にあたる半球上の大腿骨頭と、それを連結する骨盤部分の寛骨臼(かんこつきゅう)の接続がゆるい、あるいは先天的に形に異常がある場合は、抱きかかえた時の負荷などが加わり外れてしまうこともあります。

脱臼をおこしている乳児は痛みなどを感じていないことが多いです。1人で歩くようになると歩き方がおかしいことを周囲の人が気付いて発見されることもあります。一般的に脱臼によって歩きはじめは遅くなるが歩けないということはありません。生まれた瞬間から完全に脱臼していることは症例としては少なく、少しずつ脱臼した状態になっていくと考えられています。

状態については3つに分類されます。

臼蓋(きゅうがい)形成不全

骨盤側で大腿骨頭を受ける臼蓋の傾斜が強い、あるいは大腿骨頭へのかぶりが少ない状態。

亜脱臼

臼蓋と大腿骨が外れかかった状態。

脱臼

臼蓋と大腿骨が完全に外れた状態。

生後3~6ヵ月になると股関節の開きが固い、左右の足の長さに差がある、大腿や臀部のしわが左右非対称になるといった症状があらわれることもあります。ただし、前述の症状は脱臼しているからといって必ずしもおこるとは限りません。

発育性股関節形成不全の診療科目・検査方法

小児科整形外科を受診しましょう。
乳児健診や症状で脱臼を疑う場合は受診して早期に治療にあたるのが良いです。早期の治療開始により回復も早いです。

主な検査方法としてX線検査や超音波検査をおこないます。しかし新生児、乳児の場合は大腿骨頭はまだ骨化していません。そのためX線検査では撮影されない部分も多く、X線検査による正確な診断は困難です。

発育性股関節形成不全の原因

遺伝や生まれつきなどの先天的な要因と、おむつのつけ方や抱き方、顔の向き癖、出生時期などの要素が重なっておこると考えられます。寒い時期に生まれた場合には足が伸びた状態で重ね着すると股関節の自由が失われ、脱臼しやすくなります。
以前は先天性股関節脱臼という名称がつかわれ、一般に普及していました。

しかし、もともと乳児の股関節は外れやすく、先天的な要素だけで脱臼がおこることは少ないです。そのため発育性股関節形成不全という呼び名を使用しています。

発育性股関節形成不全の予防・治療方法・治療期間

生後1ヵ月までは自然治癒することもあるため、経過観察となることも多いです。
脱臼に対してはリーメンビューゲル装具(RB装具)というベルト状の装具を用いて、股関節の位置を正しい位置で安定させます。

8ヵ月以上になるとリーメンビューゲル装具での整復は困難になります。そのためオーバーヘッドトラクションなどの牽引治療を入院しておこないます。牽引期間は6週間程度ですが、その大部分を在宅でおこなうホームトラクションを取り入れている施設もあります。

その後1ヵ月はギプスを使用することになります。ギプス後も外転装具を使用します。股関節の安定感がでてくれば外すことが可能です。

中には前述の治療で完了しないケースもあります。その場合は手術を実施します。年齢が高くなるほど治療は困難になり、整復不可能なこともあります。

発育性股関節形成不全の治療経過(合併症・後遺症)

早期に発見し治療開始できることが治療経過や予後に影響します。
リーメンビューゲル装具による治療で80%前後は治療できます。牽引による治療が必要になるのは15%程度、手術が必要になるのは5%前後です。

治療が完了しても経過観察をおこない、後遺症などに早めに対応することも必要です。

脱臼が整復されても臼蓋形成不全が遺残することや、脱臼していなくても臼蓋形成不全が著しい場合、また脱臼整復にともなって骨頭壊死を生じることもあります。そのため長期にわたる経過観察が必要です。経過によっては手術が必要となることもあります。

発育性股関節形成不全になりやすい年齢や性別

現在、国内での発症は1000人に1~3人である。女児に多く、男児の約5~7倍とされています。また冬季の出生、骨盤位出生により頻度が上がります。

1970年代では100人に約2~3人が発育性股関節形成不全を発症しており、日本は脱臼多発国として知られていた。
これはおむつのあてかたなどの生活指導によりその後、大幅に減少しました。しかし減少したとはいえ全くなくなってしまったわけではありません。

近年では意識の低下から乳児期の健診で発見されることなく1歳以上など歩行開始後になって周囲の人から歩容の異常などを指摘されてはじめて診断されます、遅診断例が15%(※)という高率で発生していることが判明しています。そのため健診システムの再構築がおこなわれはじめています。

※「日本における発育性股関節形成不全(DDH)の過去と現在」服部義 疫学と保存的整復の推移 日整会誌(J. Jpn. Orthop. Assoc.)90:473‐479 2016

執筆・監修ドクター

日下部 浩
日下部 浩 医師 仙川整形外科 院長 担当科目 整形外科/リハビリテーション科

経歴1991年 慶應義塾大学医学部卒業
    慶應義塾大学病院 整形外科研修医
1992年 慶應義塾月ヶ瀬リハビリテーションセンター整形外科医師
1993年 国立栃木病院整形外科 医師 国立栃木病院附属看護学校講師
1994年 静岡赤十字病院整形外科医師
1995年 浜松リハビリテーションセンター整形外科医師
1996年 国立小児病院整形外科医師
1997年 慶應義塾大学医学部助教
1998年 南多摩病院整形外科医師
2000年 国立小児病院(現 独立行政法人国立成育医療研究センター病院)整形外科医師
2012年 ふれあい町田ホスピタル整形外科医師
2013年 藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院整形外科(現 藤田医科大学医学部整形外科機能再建学 講師
2016年 Visiting Physician, Department of Orthopedics and Rehabilitation, University of Iowa Hospitals and Clinics
2016年 藤田医科大学医学部整形外科機能再建学講座 講師
2017年 医療法人社団八千代会 いなぎ整形外科内科 院長
2018年 仙川整形外科 院長

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