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アスペルガー症候群

目次
  1. 概要
  2. 症状
  3. 原因
  4. 検査内容と主な診療科目
  5. 治療方法と治療期間
  6. 治療の展望と予後
  7. 発症しやすい年代と性差
医師

【執筆ドクター】

 板東 浩 先生

概要

アスペルガー症候群は、発達障害の1つで、広い意味での「自閉症」に含まれます。
発達障害とは「生まれつき、脳の発達が普通と異なる」という意味です。アスペルガー症候群のほかにも、ADHD(注意欠陥・多動性障害)、LD(学習障害)などが広く知られています。ADHDは「注意力散漫で突発的な行動が目立つ」、LDは「特定分野の学習において習得能力が低い」などの特徴を有します。

次に自閉症は、「社会参加・対人関係の困難」「コミュニケーション障害」「限定的な興味・行動」を特徴とする発達障害です。自閉症の人にもさまざまな個性があり、知能指数にも個人差があります。自閉症のうち、知能指数が「普通」または「普通より上」のケースを「アスペルガー症候群」といいます。別名で「高機能自閉症」と呼ぶこともあります。
一方、知能指数が水準に満たない自閉症を「カナー症候群」と呼びますが、こちらは単に自閉症と表現することが多くなります。
自閉症の特徴でも簡単に触れましたが、アスペルガー症候群の特徴は次の3つです。

1.社会参加・対人関係の困難

臨機応変な対応を苦手としており、一度決めた計画を変えようとしない傾向があります。状況の変化についていけず、対応が遅れることもしばしばです。「予想外の状況になった場合、対応能力の限界が普通より低い」と考えてください。
また、経験則を重視する傾向があり、「過去にうまくいった方法」にこだわります。そのため、予測していた出来事には対処できる反面、未経験の物事に強い不安を覚えます。多くの場合、はじめて訪れる場所、はじめて知り合った人も苦手です。

そのほか、率直な言葉を使う傾向があり、対人関係に大きなハンデを抱えがちです。たとえば、あまり気に入らない贈り物を受け取ったときに「別に欲しくない」と発言したり、似合わない服を着ている人に「センスがないね」と伝えてしまったりします。本人に悪意はなく、思ったことを正直に表現しているだけですが、対人関係を構築する上では不利に働くでしょう。

2.コミュニケーション障害

コミュニケーション力が低く、「行間を読む」のが苦手です。
たとえば、外出している家族から「庭に洗濯物を干してあるけど、雨が降らないか心配」という電話が来たとします。この内容には恐らく「雨が降りそうなら、洗濯物を取りこんで欲しい」という意味が含まれているはずです。しかし、アスペルガー症候群の人は「言外の意味」を見落とす確率が高くなります。そのため、「雨が降りそうかどうかを確認して、必要なら洗濯物を取りこむ」という行動は取らないかもしれません。

また、相手の感情を理解することも苦手としています。
たとえば、人が何を考えているかを推測するのが苦手です。はっきりと言葉で伝えられなければ、相手が喜んでいるのか、嫌がっているのかを理解できないこともあるでしょう。表情・口調・身振りなどから相手の気持ちを読みとる能力に欠けているからです。
また、自分の考えにしか意識が向かず、「ひたすら相手を質問攻めにする」といったコミュニケーションを図ることもあります。人との適切な距離を測ることが苦手だからです。しかし、必ずしも言葉を使うのが不得手とは限りません。「会話のキャッチボールは成立しないが、文章を書くのは得意」「双方向の会話はしどろもどろだが、一方的に喋るプレゼンは得意」といった人もいます。コミュニケーションにおける特徴も、人によってさまざまです。

3.限定的な興味・行動

狭い範囲の物事に対して、強い興味を持つ傾向があります。熱中した物事に対しては、しばしば通常限度を超えた集中力を発揮します。興味の対象には個人差がありますが、「規則性・法則性のある物事」に熱中する例が多いとされています。
たとえば、興味のある物事には圧倒的な記憶力を発揮する人もいます。「大量の情報を記憶する」「一読しただけの内容をほとんど暗記する」などの行動で、人を驚かせることがあります。

一方、自分のやり方にこだわりを持っていて、やり方を変更すると混乱をきたす場合があります。「自分の中にあった規則性・法則性から外れたとたん、まったく能力を発揮できなくなる」という人もいます。
そのほか、「普通の人があまり興味を持たない物品をコレクションする」「特定の行動を延々と繰り返す」など、限定された物事に強い関心を持つ人もいます。

4.定義は不明瞭

アスペルガー症候群の定義・分類はいくつもの見解があり、厳密に統一されているわけではありません。
世界保健機関(WHO)の「国際疾病分類第10版(ICD-10)」では、広汎性発達障害の1つとしてアスペルガー症候群が定義されています。
一方、アメリカ精神医学会の「精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、アスペルガー症候群という診断名が廃止されました。自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害といった分類がなくなり、自閉症の系統すべてが「自閉症スペクトラム障害」と呼ばれるようになっています。

実際、「どこまでがアスペルガー症候群で、どこからが自閉症なのか」といった境界線を引くことは困難です。それどころか、「どこまでが健常で、どこからが自閉症か」を区分することも簡単ではありません。「コミュニケーションが苦手な健常者」と「それなりにコミュニケーションが取れるアスペルガー症候群」の区別さえ、明確にはなっていないからです。そこで、最近は自閉症の傾向全体を指して「自閉症スペクトラム」と表現するのが一般的になってきています。

症状

アスペルガー症候群の典型的な特徴は、主に次の3つである。
・社会参加の困難
・コミュニケーション障害
・限定的な興味・行動
ただし、年齢層によって「3つの特徴がどのように表面化するか」は変わってくる。そこで、年代ごとに異なる「アスペルガー症候群の特性」を解説する。

乳児期の特徴

0~1歳の段階でも、アスペルガー症候群の特徴が表面化することがある。主に、次のような特徴が知られている。ただ、乳児の段階では、それほど過敏になる必要はない。アスペルガー症候群の傾向が顕著に表れるのは「社会に参加してから(=幼稚園・保育園などに通うようになってから)」なので、乳児のときの行動だけで判断するのは困難である。あくまでも、参考程度と考える。

視線を合わせない / あまり笑わない

「母親が目を合わせると視線を逸らす」「母親を見ても笑わない」など、母親に対して反応が薄い場合がある。また、赤ちゃんは母親の動作を真似ることで、少しずつ社会性を身につける傾向がある(動作共鳴)が、アスペルガー症候群をはじめとした自閉症スペクトラム障害の場合、動作共鳴をあまりおこなわない傾向がある。

特定のものだけに熱中する

通常、乳幼児は飽きやすく、さまざまな物事に関心が移る。しかし、自閉症スペクトラム障害の乳幼児は、特定のものに熱中する傾向がある。「同じオモチャで遊び続ける」「同じ本の特定のページばかり凝視(ぎょうし)する」などの特徴があれば、自閉症スペクトラム障害かもしれない。

幼児期の特徴

1歳から小学校に入るまでの時期を「乳児期」と考える。保育園・幼稚園に通うようになると、お子さんの社会性が徐々に見えてくる。この時期から、アスペルガー症候群の特徴である「社会参加・対人関係の困難」が表面化しやすくなる。

1人で遊んでいることが多い

幼児期になると周囲で遊んでいる子供たちの輪に入るのが普通だが、自閉症スペクトラム障害の子供は1人で遊ぶ傾向にある。「恥ずかしがり屋」というよりは、「周囲に関心を持たない」「そもそも、どうして良いのかわからない」といった反応を示す。

独特のコミュニケーション

「言いたいことだけを一方的に話す」「相手の言葉をオウム返しにする」「同じ言葉を何度も繰り返す」など、独特の言語感覚でコミュニケーションを図る場合がある。

何度も説明されないと、理解できない

自閉症スペクトラム障害の子供は、「言われなくてもわかること」がほとんどない。通常、何度か怒られると同じような行動を取らなくなるが、自閉症スペクトラム障害の場合、「なぜ怒られたのか」を理解しないことがある。同じようなことでも、その都度、説明する必要がある。

小学校時代の特徴

小学校に入学してからは、「社会参加・対人関係の困難」「コミュニケーション障害」が顕著になってくる。また、学校の成績などにも、アスペルガー症候群の特徴が現れる場合がある。

協調性が低く、孤立する

小学校くらいになると、「相手の気持ちを理解できず、和を乱す発言をする」「周りと同じ行動を取らず、自分の思ったとおりに行動する」などの特徴が表面化する場合がある。特に小学校高学年になると、周囲の社会性が向上してくる時期です。低学年なら問題にならなかった言動でも、ケンカ・いじめの要因になるかもしれない。また、周囲に関心を持たず、一人で遊んでいるうちに孤立する子供もいる。

得意不得意の差が激しい

自閉症スペクトラム障害の子供は、「興味のある科目はずばぬけて得意な反面、苦手な科目はまったくできない」など、極端な成績をとることがある。興味のある物事に熱中し、ほかの物事に関心を持たない傾向があるためである。

体育を極端に苦手とする

アスペルガー症候群をはじめ、自閉症スペクトラムの子供は「手先が不器用」「細かい動きが苦手」といった特徴を持っていることがある。そのため、あまり運動は得意ではない。コミュニケーションが苦手なこともあり、特に球技などのチームスポーツを極端に苦手としている場合がある。

中高生時代の特徴

中高生になると、周囲の考え方も大人に近づいてくる。「対人関係・社会参加の困難」「コミュニケーション障害」により、周囲との溝を感じる機会も増えてくる。

友達ができない / 不登校

小学校までは、(多くの場合は)周囲から浮いていても一定の友人関係が成立していた。実際、小学生時代は「家が近いから何となく一緒に遊んでいた」などの理由で簡単に友達ができる時期である。しかし、中高生になると、周囲も「人に対する好き嫌い」が明確になる。そのため、自閉症スペクトラム障害の子供は、友人関係を維持するのが困難になる。いじめ・不登校につながる恐れもある。

苦手分野の学習困難

中高生になると、学校の授業もレベルが上がってくる。そのため、苦手分野に関してはまったく理解できなくなる場合もある。一方、得意分野に関しては目を見張るような成績を取ることがあるので、この時期に得意分野を伸ばすと将来が開ける可能性がある。周囲が自閉症スペクトラム障害を理解し、「得意なことを仕事にする方向」で指導すれば、将来的な社会参加にポジティブな影響が出る可能性がある。

成人期

大人になると、今まで許されてきたことのほとんどが許されなくなるので、自閉症スペクトラム障害の人はさまざまな困難に直面する。

マルチタスクを抱えると計画が破綻する

アスペルガー症候群など、自閉症スペクトラム障害の人は「物事の優先順位」をうまく理解できないことがある。そのため、マルチタスクを課されると段取りができず、仕事がほとんど進まなくなる人もいる。

周囲とのコミュニケーションが取れない

社会人になると、「コミュニケーション障害」の影響が大きくなる。周りとの関係をうまく構築できず、仕事が続けられなくなる人もいる。必要に応じて職場に事情を説明し、「一定の理解を得る」「苦手分野の業務を避けられる状況にする」などの対処が必要になる。

原因

アスペルガー症候群の原因は、今のところ特定されていない。遺伝的要因・環境要因が複雑に関連していると考えられており、すべての人に当てはまるような「根本原因の特定」はきわめて困難と思われる。
アスペルガー症候群の原因に関してはさまざまな説が存在している。一部を紹介するがいずれも仮説の段階であり、原因として明確に特定されているわけではない。

1.妊娠初期の喫煙

1974~1993年に実施されたスウェーデンの研究では、「妊娠初期の喫煙は自閉症リスクを1.4倍にする」という統計結果が出た。

2.重金属

米国アリゾナで「自閉症の子供の歯に含まれる水銀濃度は、健常な子供の2.1倍だった」という研究結果が出ているほか、カリフォルニアにおける研究でも「大気中の水銀・塩化ビニル・カドミウム・トリクロロエチレン濃度が高いほど、自閉症スペクトラム障害が増加する」という結果が出た。
しかし、「一般的な環境において、水銀量と自閉症の有無に明確な関連はない」という報告も存在しており、現状ではさまざまな見解が入り交じっている状態である。

3.農薬・殺虫剤

米国カリフォルニアで「有機リン酸系の農薬にさらされる環境において、広汎性発達障害のリスクが上がる」という調査結果が出ている。また、「有機塩素系の農薬を使っている農場から500m以内に居住している女性が産んだ子供は、自閉症スペクトラムのリスクが6.1倍になった」という研究も存在する。

4.栄養不良

「アラキドン酸、DHA(ドコサヘキサエン酸)を含有していない粉ミルクで育った子供は、母乳で育った子供と比べて、自閉症スペクトラム障害のリスクが4.41倍になった」という報告が存在している。そのほか、自閉症の子供の毛髪・血液を調べると、さまざまな栄養素において、低い数値を示す例がある。

5.両親の年齢

「父親の年齢が10歳上がるごとに、自閉症スペクトラム障害のリスクが2倍以上になる」という報告に加えて、「母親が35歳以上で出産すると、自閉症リスクが向上する」というデータも存在している。

6.その他

そのほかにも、抗生物質・妊娠した季節・妊娠週数など、さまざまな要因について「自閉症スペクトラム障害との関連」を疑う人がいる。ただ、いずれも「さまざまな要因が絡み合う中で、リスクが疑われている」という段階である。

検査内容と主な診療科目

お子さんの様子を見て発達障害の可能性を感じた場合は、早めに専門機関を受診する。診療科目としては精神科・心療内科となるが、一般の精神科・心療内科では確定診断できない場合もある。アスペルガー症候群をはじめとした発達障害は診断が難しく、発達障害を専門とする精神科医師に診断してもらう必要がある。
アスペルガー症候群は精神科医師でも診断が難しい。両親が自己診断するのは禁物である。アスペルガー症候群の可能性を感じた場合、発達障害の疑いを指摘された場合は、適切な窓口に相談する。

・市町村の保健センター
・自治体の保健福祉課
・児童相談所
・子育て支援センター
・発達障碍者支援センター

相談の結果、アスペルガー症候群の疑いが強まったら、早めに医療機関に相談する。早期発見・早期療育をおこなえば、社会参加の可能性は広がる。本人はもちろん、周囲の家族の「生きづらさ」を軽減する上でも役立つことが期待できる。

子供の診断

「生まれてからの成長過程」「言葉を話し始めたときの様子」など、出生から現在までの過程を質問される。可能なら、以下のような資料を用意しておく。

・母子手帳の検診結果
・幼稚園 / 小学校 / 中学校の通知表
・学校の先生が書いた連絡帳など

学校での様子など、個性を客観的に知るための資料があると、診断の役に立つ。

そのほか、必要に応じて心理検査・発達検査がおこなわれる。言語理解能力・知覚推理能力・ワーキングメモリー(作業中の記憶保持能力)・処理速度を総合的に検査する「WISC-Ⅳ」などが知られている。

成人の診断

成人の発達障害に関しては、より診断が難しくなる。診療科目としては精神科・心療内科の守備範囲だが、実際に大人の発達障害を得意としている精神科医師はあまり多くない。「成人の発達障害」を専門的に扱う医療機関は少なく、予約が数か月待ちになっている場合も多くある。
子供の頃の様子がカギになるので、両親と一緒に受診するか、「幼少期の様子」をメモなどにまとめておくと良い。問診のほか、「WAIS-Ⅲ」と呼ばれる発達検査で「言語性IQ」「動作性IQ」を測定し、確定診断するのが一般的である。

治療方法と治療期間

現代の医学において、アスペルガー症候群をはじめとする自閉症スペクトラム障害を治癒させることはできない。ただ、早期からの療育によって「アスペルガー症候群に起因する困りごと」を減らすことは可能である。
社会参加における障害を減らし、長所を伸ばす教育(=療育)をすることで、将来的な不自由を軽減することは、十分に可能と考えられている。療育における主なトレーニングには、以下のようなものがある。

1.TEACCH

自閉症スペクトラム障害の子供は、予測できない物事を苦手としている。そこで、勉強する場所、遊ぶ場所、落ち着く場所などをパーティションでわけて、「どこで何が起こるか」を理解できる環境を構築する。これを「物理的構造化」という。
また、言葉によるコミュニケーションが困難な場合、イラスト・図面などを活用して、コミュニケーションの練習をしていく。これを「視覚的構造化」と呼ぶ。
TEACCHとは、自閉症スペクトラム障害の子供が適応しやすい構造をつくり、そのなかで社会性・コミュニケーションを身につけていく療育方法である。

2.ABA

ABAは「応用行動分析」の略語である。行動分析学の観点では、人間の行動・心理的反応を「個人と環境の相互作用から生じるもの」と捉える。そこで、行動分析の専門家が「発達障害の人の問題行動」を分析し、「どのような行動に対して、どのように対応するのが望ましいか」を明らかにする。
たとえば、大勢の人がいる場所で言葉を話せない人がいたとする。この場合、「何も話さないこと」が問題行動である。しかし、「なら、話さなくて良い」と認めてしまえば、改善は期待できない。そこで、例えば2人、3人の少人数から会話に慣れ、段階的に「話すこと」に慣れさせていく。このような観点で、「周りがどのように対応すれば、問題を解決・緩和できるか」を考えていく。子供だけでなく、成人の発達障害にも役立つと考えられている。

3.SST

SSTは「ソーシャル・スキル・トレーニング」の略である。「対人関係・コミュニケーションの問題」を緩和し、社会生活に参加できるよう訓練する。本人にストレスを与えないように、「指示は具体的に与える」「感情的にならず、論理的にしかる」「なるべく褒めて伸ばす」といった方法を選択する。
訓練にあたっては、ゲーム、ディスカッションなどを通じて、「具体的な指示」「論理的な説明」のもと、人と関わる練習を繰り返す。周囲のサポートを受けながら、人と関わる訓練を続け、「社会のルール」「人の感情」を理解していくのが目標である。

薬物療法

アスペルガー症候群自体は、薬で緩和するものではない。しかし、うつ病・強迫性障害などの二次障害が出ている場合、二次障害に対しては薬物療法をおこなう。アスペルガー症候群に起因して発生した精神疾患を治療することは、本人の「生きづらさ」を緩和することにつながる。

周囲の理解

アスペルガー症候群は先天的障害なので、予防方法・治療方法はない。しかし、アスペルガー症候群に起因する「生きづらさ」を緩和することは可能である。原則として、周囲がアスペルガー症候群の特徴を理解し、長所を伸ばす方向で接する。
子供のうちに療育をおこない、社会参加をサポートしてあげれば、不自由の少ない生活を送る可能性も十分にある。
コミュニケーションが苦手であることを理解する。
対人関係を構築するのが不得意なので、「家族にさえ馴染まない」「会話が成立しにくい」といった問題が起こりやすい。療育をおこなえば多少の改善は見込めるので、「コミュニケーション力が低いのは仕方ない」と理解する。

指示はなるべく具体的にする

具体的な指示を出さないと、理解できないことが多くなる。「ちゃんとしなさい」ではなく「おしゃべりをやめて椅子に座りなさい」と指示するなど、「何をすれば良いのか」をピンポイントで伝える。

基本的に言葉を省略しない

「あれを着て」ではなく「青いシャツを着て」など、言葉を省略せずに伝える。人によっては、「2人で話しているときさえ、名前を呼ばれないと自分に話しているのかどうか理解できない」という場合もある。なるべく言葉を省略せず、名前・特徴をあげて話すようにする。

治療の展望と予後

アスペルガー症候群は病気ではなく、脳の発達が普通と異なる「先天的脳障害」である。そのため、アスペルガー症候群に対する治療法は存在しない。
アスペルガー症候群に対しては、「早い段階から適切な支援をおこなうこと」が求められる。本人のできる範囲で「対人関係の構築方法」「社会への順応」を図る。子供のときに適切な支援をおこなえば、将来的な社会参加の幅が広がり、「うつ病」「PTSD」などの二次障害リスクも減少する。このような「子供のときからの適切な支援」を「療育(りょういく)」と呼ぶ。
アスペルガー症候群をはじめ、発達障害で苦労するのは本人だけではない。普通と違うコミュニケーションを図る傾向があるので、周囲もまた、アスペルガー症候群の人を理解するのに苦労することが多くなる。そのため、本人ではなく、近しい関係の人(特に配偶者)がストレスを抱えこんで心身症を発症する場合がある。

カサンドラ症候群

アスペルガー症候群の配偶者を持った人が、ストレスを抱えて心身のバランスを崩した状態を「カサンドラ症候群」と呼ぶことがある。正式な病名ではなく、「状況」を指す言葉である。
アスペルガー症候群の人が相手だと、適切に意思疎通を図るのが難しい場合もある。アスペルガー症候群には「感情表現が乏しい人」も多いので、自分の気持ちが伝わっているのかどうか、やきもきしながら過ごす時間も多くなる。うまくコミュニケーションが取れず、焦り、いらだち、無力感などを募らせるうち、配偶者に精神症状が現れる。
カサンドラ症候群の人に現れる精神症状の例には、以下のようなものがある。

・抑うつ
・不安
・自尊心の低下
・不眠症
・疲労、倦怠感
・偏頭痛
・急激な体重の増減

全般的に現れる人もいれば、特定の症状だけが強く出る人もいる。

二次障害

アスペルガー症候群をはじめ、発達障害の人は二次障害に注意が必要である。二次障害は、大きくわけて次の2種類が考えられる。
・アスペルガー症候群の特徴が強く表面化する
・アスペルガー症候群による「生きづらさ」が、別の疾患をもたらす
アスペルガー症候群そのものは「個性」と捉えることもできるが、二次障害に関しては適切な治療をおこなわなくてはならない。主な二次障害としては、次のような疾患が挙げられる。

1.うつ病

周囲に溶け込めないなど、アスペルガー症候群による「生きづらさ」が長く続くと、うつ状態(うつ病)を発症する恐れがある。「自分は社会に適応できない」と自己評価が低下し、抑うつ状態に陥る。

2.社会不安障害

社会不安障害も、発達障害の「生きづらさ」がもたらす疾患の1つ。人と同じように振る舞えないことで「周囲にからかわれた・いじめられた」などの経験が引き金になることもある。「大勢の前で話ができない」「電話に出るのが怖い」など、対人恐怖症のような症状が現れる。

3.PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDは、大きな恐怖・ストレスを受けたことで、「恐怖体験がフラッシュバックする」「強い警戒心を持つようになる」といった症状。発達障害を要因とする「いじめ・虐待」の経験がある場合、その記憶がトラウマとなってPTSDを発症する例がある。

4.睡眠障害

アスペルガー症候群に起因する「生きづらさ」を抱えていると、慢性的にストレスを受けた状態になる。代表的な心身症である「不眠症・睡眠障害」を発症する例も珍しくない。

5.強迫性障害

強迫性障害は(客観的に見れば無意味・有害な)行動を繰り返してしまう病気である。アスペルガー症候群の特徴として「狭い範囲への強いこだわり」があるが、特有のこだわりが病的に表面化すると、強迫性障害に至る恐れがある。

合併しやすい症状

二次障害以外にも、アスペルガー症候群の人が併発しやすい病気・症状が存在する。主な合併症としては、次のようなものが挙げられる。

てんかん

「アスペルガー症候群の1割程度がてんかんを併発している」と考える人もいる。てんかんは、「手足が痙攣する」「突然、意識を失う」などの「てんかん発作」を特徴とする。ある程度、薬でコントロールできるが、就労・自動車運転などで制約を受けるなどQOL(生活の質)維持が難しい場合もある。

トゥレット症候群

トゥレット症候群の特徴は、身体の一部が本人の意思と関係なく動く「チック症状」である。ドーパミンをはじめとする神経伝達物質の異常が原因とされている。身体の一部をピクピク動かすほか、「咳払いをする」「顔をしかめる」などのチック症状をきたす場合もある。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

「注意力が低く、じっとしていられない」などの特徴を有する発達障害。複数の発達障害を併発することも多く、自閉症スペクトラム障害を持っている子供がADHDの特徴を併せ持つ例も珍しくない。

LD(学習障害)

「特定分野を学習するにあたって、習得能力が低い」などの特徴がある。これも発達障害の一種。ただ、知能に問題があるわけではなく、不得意分野を除けば、普通以上の能力を示すこともある。アスペルガー症候群などの自閉症スペクトラム障害と併発する例も多く見られる。

発症しやすい年代と性差

アスペルガー症候群の定義は不明瞭である。そのためアスペルガー症候群の発症率について、明確な情報はない。
ただ、自閉症のほか、「分類の難しい広汎性発達障害」を含めた「自閉症スペクトラム障害」全体の発症率なら、数値を出すことが可能である。「独立行政法人 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所」の資料によれば、成人の自閉症スペクトラム障害は1.0%の有病率である。つまり、「成人の100人に1人は自閉症スペクトラム障害」ということになる。
有病率には性差(性別による違い)があり、「男性1.8%、女性0.2%」であった。男性は、女性の9倍、自閉症スペクトラム障害を発症しやすいという統計が出ていることがわかる。

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