生理痛がひどい!月経困難症の症状は?セルフチェックや対処法について
「痛みがひどい」「今月は生理が来ない」など、女性の多くが「月経」について、何らかのトラブルを経験しているといわれています。
月経がきちんとあるかどうかは、健康状態を知るひとつのバロメーターです。
『月経困難症』は、ひどい生理痛などの症状があらわれる病気です。月経困難症が起こる原因や、症状について解説します。
月経困難症について
1.月経困難症ってどんな病気?
『月経困難症』は、月経中に、日常の生活に支障が出るような強い痛みや、お腹の張り、吐き気、頭痛、だるさ、食欲不振、イライラなどの症状があらわれる病気です。
月経困難症は、大きく2つに分けられます。『機能性月経困難症』と『器質性月経困難症』です。
機能性月経困難症(原発性)
身体に特別異常はなく、体質によって月経困難症にみられる症状が起こります。
月経困難症の多くがこのタイプです。思春期から20代にかけて多くみられる傾向にあります。
器質性月経困難症(続発性)
『子宮内膜症』や『子宮筋腫』などの病気が原因となって起こる月経困難症です。
月経痛が急に強くなる、痛みがだんだん増す、鎮痛剤を3~4日飲まないと日常生活が送れない、という場合は、他の病気による異常が疑われます。
2.なぜかかる?月経困難症の原因
機能性月経困難症の原因
機能性月経困難症の場合は、子宮を収縮させるはたらきのある、生理活性物質『プロスタグランジン』の分泌量が多いことが主な原因です。他には、子宮や卵巣が未成熟なことや、子宮頚管が細長く狭いことも、原因になります。
また、症状を重くするもとになるのは、冷え症で血行が悪いことや、ストレスなどの精神的要因もあります。
器質性月経困難症の原因
子宮内膜症や子宮筋腫、子宮腺筋症などの病気が原因であることが多いです。加えて、子宮奇形が原因となるケースもあります。
3.月経困難症の症状は?嘔吐や痙攣性の下腹痛など…
月経困難症でみられる症状としては、『痙攣性の下腹痛』や『腰痛』、『頭痛』、『悪心』、『嘔吐』など頻度が高いです。うつ症状がみられることもあります。
症状があらわれるタイミングは、機能性か器質性かによって異なります。
機能性月経困難症は、若いころから発症する
機能性月経困難症の多くは、若いころから症状がみられます。20代後半や30代になって急に症状が出ることはありません。発症する原因はよくわかっていませんが、精神的な要素が強く、神経質な女性に多くみられる傾向があります。
器質性月経困難症は、ある日いきなり発症する
器質性月経困難症の場合は、ある年齢になって突然月経痛が始まり、月経ごとに症状が強くなるのが特徴です。原因が子宮筋腫もしくは子宮内膜症のときは、特に症状が強くなる傾向があります。
また、不妊症の症状がみられることもあります。
4.月経困難症の検査や病院で訊かれること
病院では、月経の周期や痛みなどの症状について詳しく訊かれます。さらに『内診』や『超音波検査』、必要に応じて『血液検査』も行うことで、原因を調べます。
子宮内膜症などの病気がみつかったら、さらに、それぞれの病気に合わせた検査を行います。
正常な月経って?月経困難症のセルフチェック
どのような状態であれば、月経困難症の心配はないのでしょうか。
正常な月経のポイントは、次の4点です。自分の症状や状態と照らし合わせてみましょう。
●月経が始まった日を1日目と考えて、月経周期は25~28日
●経血量は20~40ml…目安としては、最も多い日で2~3時間に1回のナプキン交換で済むようなら、正常であるといえます。
●出血持続日数は3~7日
●月経中の痛みはないか、あっても軽度
当てはまらない点があれば、『月経異常』が疑われます。ひとつでも上記4点と異なる点があれば、産婦人科の受診をおすすめします。
症状がひどい場合の治療について
1.早急に治療が必要な場合とは?
月経異常にもいろいろなタイプがあり、積極的な治療の必要がないものもあれば、早急に治療が必要なものもあります。ストレスなど、精神的な要因が影響している場合は、生活習慣を見直しただけで改善されることもあります。
様子をみてもよいケース
月経が1週間くらいの範囲で遅れたり早まったりする、月経のない月が年に1回ある、といった程度の月経周期の乱れで、痛みなどがなければ様子をみてよいでしょう。なぜなら、月経周期はストレスや生活習慣によって、比較的簡単に乱れやすいものだからです。
早急に治療が必要なケース
日常生活に支障を及ぼすような症状がみられる場合は、産婦人科を受診しましょう。
治療が必要な月経異常として代表的なのは、子宮内膜症が原因である場合です。子宮内膜症は20~40歳代に多い病気で、最近は特に若い女性に増えています。不妊患者の50%以上に、この病気がみとめらます。
また、卵巣に子宮内膜症による血液がたまってできる『卵巣チョコレートのう胞』がある場合は、卵巣がんのリスクが高いため、特に注意が必要です。
2.薬物療法
原因となる病気の治療を優先
病気が原因の場合は、その病気の治療を優先します。
軽度の場合は鎮痛薬を服用
機能性月経困難症の場合は、軽度であれば鎮痛剤の投与などを行います。鎮痛薬は、主にプロスタグランジンの合成阻害薬や非ステロイド性鎮痛薬を、月経前から予防として服用します。また、冷えやすい体質等の改善のため、漢方薬が処方されることもあります。
症状が強い場合は低用量のピルを服用
さらに症状が強い場合は、低用量のピルを投与し、子宮内膜の増殖を抑制して、症状を改善していきます。低用量ピルは、病気による子宮内膜症の場合にも有効です。
3.手術療法
手術療法は、機能性月経困難症の場合に適用されます。
病気部分の除去や剥離をする手術
手術療法は、大きく分けると2パターンがあります。
ひとつは、お腹に1cmくらいの穴を数か所あけ、内視鏡カメラや手術器具を挿入して手術する『腹腔鏡手術』です。傷口が小さく、患者への負担が少ないため主流の方法で、病気部分の除去や癒着の剥離などを行います。
もうひとつは、腹部を大きく切開して行う『開腹手術』です。
症状が強い場合に行う、痛みを感じなくする手術
症状が強い場合には、子宮を後方から支える『仙骨子宮靭帯(せんこつしきゅうじんたい)』の切断を行うこともあります。仙骨子宮靭帯には知覚神経があるので、切断することで痛みを感じなくなることが期待されます。
その他、子宮全摘術や卵巣摘除術などを行うこともあります。
4.自分でできる対処法
カイロを使って腰まわりをあたためたり、足湯やストレッチを行って血行をよくしたりすることで、痛みなどの症状の抑制が期待できます。
とはいえ、生理痛があまりにつらいようであれば、病気の可能性もあります。我慢せず、病院を受診しましょう。
おわりに
月経困難症の対策には、生活習慣の見直しも大切です。
禁煙を心がける
たばこを吸う人は、月経困難症が起こりやすいです。禁煙を心がけましょう。
赤見肉やナッツ類など、鉄の多い食品を摂る
また、貧血の予防にレバーや赤身肉、ナッツ類など鉄が多く含まれているものを摂取しましょう。全身の栄養状態がよくなるように、栄養バランスのよい食事を摂ることもおすすめです。
執筆・監修ドクター
経歴1999年 日本医科大学産婦人科教室入局 日本医科大学付属病院 産婦人科研修医
2001年 国立横須賀病院(現 横須賀市立うわまち病院) 産婦人科
2002年 東京都保健医療公社 東部地域病院 婦人科
2003年 日本医科大学付属病院 女性診療科・産科 助手代理
2004年 日本医科大学付属第二病院 女性診療科・産科 助手
現在 石野医院の副院長
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