せんちょうかんせつえん仙腸関節炎
仙腸関節炎(せんちょうかんせつえん)とは、別名「仙腸関節機能障害」ともよばれる骨盤の仙腸関節に生じる病気です。
仙腸関節は、通常でも2~3㎜程しか動きがない関節です。そのため、ちょっとしたことで動かなくなり機能障害をおこしてしまいます。動かなくなる原因としては、前傾姿勢や中腰で同じ動作を繰り返すことや不意に重いものを持ち上げること、長時間座っていること、妊娠や出産、ほかにも老化によって仙腸関節の軟骨がすり減ることなどがあげられます。
仙腸関節が動かなくなり、関節の機能が失われた状態を仙腸関節機能障害といいます。さらに、仙腸関節が動かない状態で無理をして動いたりしていると仙腸関節に炎症がおきてきます。炎症もおきている状態を仙腸関節炎といいます。
仙腸関節炎は、レントゲンやMRI、CTのような整形外科で一般的におこなわれる画像検査では異常がみられないため、診断が難しく見逃されることが多々あります。しかし、正しく診断されれば、治療も多くの場合は決して困難なものではありません。
ただ、仙腸関節の役割そのものについてまだわかっていないことも多く、治療方法も予後もさまざまな面において研究途上にある病気です。そのため、仙腸関節炎の治療には経験豊富な医師に受診することが推奨されます。
仙腸関節炎の症状
主に腰痛、臀部の痛み、鼠径部(そけいぶ:足の付け根)の痛み、下肢(かし:股関節から足先まで)の痛み、下腿(かたい:ひざから足首まで)の痛み、足部の痛みなどを生じます。また、痛みだけではなく下肢にしびれの症状が生じることもあります。
- 椅子に座ると痛い
- あおむけに寝ることができない
- 痛い側を下にして寝ることができない
- 歩き始めに痛む
そのほか、仙腸関節炎全般において以下のような症状が生じる可能性があります。
- 歩いていると痛みが出てくる(間欠性跛行:かんけつせいはこう)
- 靴下をはくときや顔を洗う時など前かがみの姿勢をとると痛む
- 運動による痛み、圧迫に対して感じる痛み
- 運動の強度や種類の制限
- しびれ、冷感、感覚が鈍くなるなどの感覚異常
- 筋肉のこわばり、けいれん、こり
- 筋力低下、筋肉がやせることにより今までできていた動作ができなくなる
仙腸関節炎の診療科目・検査方法
診療科目は整形外科になります。しかし、仙腸関節炎は画像検査での発見が難しいため、見逃されやすいので注意が必要です。
診断には、問診や触診に加えてAKA-博田法や仙腸関節ブロックのような治療をおこなうことで反応をみるなどの方法があります。
※AKA-博田法については、リハビリテーションにとりいれて保険診療でおこなっている医療機関と、自由診療でおこなっている医療機関があります。受診の際は各医療機関に事前にお問い合わせください。
仙腸関節炎の原因
仙腸関節はわずか2~3㎜程しかない動かない関節です。そのため、動かない関節であるということが定説だった時代もあるほどです。
仙腸関節が動かなくなると運動障害を引きおこす
バス旅行のように長時間座っているなど同じ姿勢をしいられた時、中腰でものを持ち上げた時などに仙腸関節がひっかかり動かなくなることがあります。仙腸関節が動かなくなってしまうと、仙腸関節を介して、周囲の筋肉など軟部組織に異常な収縮がおこります。これを過緊張連鎖といい、痛みやしびれ、筋肉のこり、はりのような症状の原因になります。
しかし、仙腸関節の役割については、まだまだわかっていないことが多く、研究が進められている段階です。
仙腸関節炎の予防・治療方法・治療期間
治療方法には保存療法と手術療法があります。
保存療法
仙腸関節炎、仙腸関節機能障害、ともに最近わかってきた病態のため、決まった治療方法というものはなく、さまざまな治療方法が混在している状態です。
現在よくおこなわれている治療方法は以下のようなものがあります。
リハビリテーション
理学療法士や作業療法士による運動療法が主体になります。
運動療法の中で、仙腸関節炎に対する治療を専門的におこなうものとしてAKA-博田法があります。
AKA-博田法
博田節夫先生により開発された、素手で関節の動きを改善する治療方法です。
動かなくなってしまった仙腸関節の動きをよくする目的でおこないます。私の知る限り、仙腸関節炎に対する数少ない根本療法ですが、おこなっている医療機関が少ないこと、術者の技術により治療効果に差が出てしまうことなど、問題点もあります。
薬物療法
症状に応じて、鎮痛剤を投与して、痛みを抑えます。
症状の改善が乏しい場合、仙腸関節ブロックをおこなう医療機関もありますが、AKA‐博田法と同様にまだ一般的に普及している治療ではありません。
骨盤ベルト
骨盤周囲を押さえることで、仙腸関節炎が原因である痛みを一時的に抑える効果があります。
私の見解では、痛みを感じにくくなると、かえって無理をしてしまい症状が悪化することもあるので過信は禁物と考えます。
手術療法
仙腸関節固定術…上記のような保存療法をおこなっても効果があがらず、強い症状のために日常生活に支障をきたす場合、仙腸関節固定術を検討することもあります。
手術の方法には前方固定術と後方固定術があります。
※AKA-博田法、骨盤ベルト治療については、保険診療でおこなっているか(自治体によっては後で何割かの治療代金が戻ってくる場合もあり)、自由診療でおこなっているか医療機関によって異なります。受診の際は各医療機関に事前にお問い合わせください。
仙腸関節炎の治療経過(合併症・後遺症)
命にかかわるような病気ではありませんが、仙腸関節炎についてはまだ明らかではない部分も多く、治療方法についても共通したものはまだありません。上記に紹介した治療方法についての見解も医師により異なっています。もしかしたら、もっと有効な治療方法が今後出てくる可能性もあります。
このような状況を踏まえた上で、まず、仙腸関節炎が疑われる場合、仙腸関節について熟知した医師に受診することが推奨されます。
症状が腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアのような病気と非常に似ているため、仙腸関節炎は見逃されやすい病気だからです。腰部脊柱管狭窄症、腰椎椎間板ヘルニアのような脊椎の神経が由来の病気と、仙腸関節炎とでは治療方法が異なります。
仙腸関節炎に対する治療を受ければすみやかに良くなるような軽症例も、あやまって腰部脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアと診断されてしまうと、なかなか良くならないということも多々あります。
執筆ドクターの見解
仙腸関節炎の予後に対する見解も、共通したものはまだありません。
私はAKA-博田法を専門に治療をおこなっていますので、慢性的な仙腸関節炎をAKA-博田法で治療した場合の予後について解説します。
仙腸関節炎には大まかに分けて3つのタイプがあります。
仙腸関節機能異常
仙腸関節がひっかかっているだけの状態です。仙腸関節の炎症を伴わないので、ほとんどは1、2回のAKA‐博田法により、痛みなどの症状は改善します。
一番軽症な状態です。
単純性仙腸関節炎
仙腸関節がかたまってしまい、関節の動きが悪くなっている状態です。
月1、2回のAKA‐博田法により、3カ月程度で痛みなどの症状が改善してくる方が多いようです。
仙腸関節炎特殊型
加齢などにより仙腸関節の軟骨にすり減りなどが生じます。仙腸関節の動きの障害が特に強くなっている状態です。
治療は一番難しく、かたくなった仙腸関節の動きはAKA‐博田法により改善はしますが、残念ながら正常にはなりません。痛みなどの症状は、3~6カ月程度で落ち着いてくる方が多いです。しかし、完全になくなるということはありません。
仙腸関節炎になりやすい年齢や性別
仙腸関節炎という疾患名が知られるようになってまだ日が浅いため、正確な罹患者数、頻度についての全国的なデータはまだありません。
発症しやすい年代としては、仙腸関節の軟骨は加齢に伴ってすり減るので高齢者に多いようです。
また、生活習慣と密接に関係しており、デスクワークのような同じ姿勢が多い方、中腰作業の多い方に発症しやすい傾向があります。
執筆・監修ドクター
経歴2005年 帝京大学医学部卒業
2012年 のぞみ整形外科内科クリニック開院
2017年 スガモ駅前整形外科開院
2020年 医療法人社団のぞみ会理事長
スガモ駅前整形外科 院長
のぞみ整形外科内科クリニック 院長
望クリニック 副院長
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