日本脳炎とは
日本脳炎(にほんのうえん)は、蚊を媒介として日本脳炎ウイルスに感染することで発症する病気です。
発症すると意識障害や神経系障害をおこすこともあり、後遺症を残すことや生命にかかわることもあります。
特効薬はなく、対症療法が中心となるため、予防することが大切です。予防接種により、日本脳炎にかかる可能性を大きく減らすことができる可能性があります。
毎年夏に日本脳炎ウイルスを持った蚊が発生するため、蚊に刺されないように対策することなども重要です。
日本脳炎の症状
日本脳炎の多くは、脳をおおう髄膜(ずいまく)と脳に炎症をおこす髄膜脳炎(ずいまくのうえん)の症状があらわれます。
ウイルスに感染した後、6~16日間の潜伏期間があり、その後に発症します。数日間の高い発熱や頭痛、悪心、嘔吐(おうと)、眩暈(めまい)などの症状があります。
子どもの場合は腹痛や下痢をおこすこともあります。その後、意識障害や、筋肉が硬直したり、麻痺(まひ)などの神経系障害の症状があらわれたりします。
力が入らなくなったり感覚が鈍くなったりする脊髄障害(せきずいしょうがい)や、延髄(えんずい)にかかわる球麻痺(きゅうまひ)による症状でうまく話ができなくなるなどの症状があらわれることもあります。また、子どもの場合にはけいれんをおこすことが多くあります。
日本脳炎の診療科目・検査方法
日本脳炎の原因
日本脳炎ウイルスに感染することで発症します。日本などの温帯では主にコガタアカイエカが媒介します。そのほか、熱帯では数種類の蚊が媒介することが知られています。
人から人への感染はありません。日本脳炎ウイルスはブタなどイノシシ科の動物の体内で増えます。蚊がウイルスに感染したブタを吸血し、その蚊が人を刺すことで人間に感染します。
ウイルスに感染しても必ず発症するわけではなく、何も症状のない不顕性感染(ふけんせいかんせん)となることがほとんどです。
日本脳炎を発症するのは100~1,000人に1人程度といわれています。
日本脳炎の予防・治療方法・治療期間
日本脳炎の特効薬はありません。そのため、あらわれた症状にあわせた対症療法が中心になります。そのなかでも高熱とけいれんに対する症状の管理が重要です。
日本脳炎は、発症した時点ですでにウイルスが脳に到達しており、脳細胞を破壊しています。一度破壊された脳細胞を修復することは極めて困難です。
日本脳炎の治療経過(合併症・後遺症)
日本脳炎を発症した場合の死亡率は20~40%です。45~70%の患者さんに後遺症が残ります。
子どもの場合は重いことが多く、主な後遺症として、体が思うように動かせなくなるパーキンソン病様症状やけいれん、麻痺、精神発達遅滞、精神障害などが確認されています。
そのため、発症そのものをおさえる予防が重要です。日本脳炎の予防には、蚊に刺されないよう対策することと予防接種があります。
予防接種により、日本脳炎にかかる可能性を75~95%減らすことができると考えられます。予防接種は、子どもであれば日本では費用負担のない定期接種で受けることができます。
ワクチン接種は計4回おこないます。3~4歳の間に6~28日の間隔をあけて2回接種し、その約1年後に3回目の接種をおこないます。その後、9~10歳までの間に1回の接種をおこないます。
日本脳炎になりやすい年齢や性別
日本脳炎患者の報告者数は毎年10名以下です。
厚生労働省では飼育されているブタに対し、ウイルス検査をおこなっていますが、毎年、西日本を中心に、広い地域で日本脳炎ウイルスに感染したブタが確認されます。
つまり、日本での感染の可能性はなくなっていません。子どもや高齢者では発症すると生命にかかわることや、重度の障害が残る可能性が高いため注意が必要です。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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