りんご病
伝染性紅斑
概要
りんご病(伝染性紅斑)とは?
りんご病の正式な名称は伝染性紅斑です。ヒトパルボウイルスB19というウイルスによる感染症です。発症すると頬が赤くなる姿がりんごのようになることから、りんご病とよばれています。
頬以外に紅斑(こうはん)は足や臀部など顔以外の部位に、網状にあらわれることがあります。紅斑出現時はすでに感染力は失っています。
主に5歳から9歳の子どもがかかりやすい病気です。流行することがありますが、あまり重症化することはありません。
しかし、妊娠中に感染すると胎児へ感染し胎児異常や流産の原因になることがあるので注意が必要です。
症状
発症すると、軽い風邪のような症状や関節痛、全身の倦怠感があらわれることがあります。
発熱を認めることもありますが、多くの場合は微熱程度で無治療のままでも回復します。
その後、約1週間後に頬に紅斑があらわれて、病名に形容されるような「赤いりんご」のように赤くなります。紅斑は数日後には顔面以外に手足や胸腹背中にもあらわれることがあります。また、かゆみや熱感を伴うこともあります。
紅斑は網目状あるいはレース状などと表現されるように、まだら状に赤くなる特徴があります。また紅斑が出始めたころにはほぼウイルスに感染力はなくなっています。頬に紅斑があらわれる7~10日前が最も感染力が高いです。
感染しても症状のおこらない不顕性感染となる場合もあります。成人のほうが小児と比べ不顕性感染も多く、また感染しても非典型的な発疹を示す場合もあります。多くは1週間程度で自然に軽快します。
妊娠中の女性が発症すると胎児に影響し、胎児異常や流産の可能性が高くなります。妊娠前半期での感染のほうがより危険であるといわれていますが、妊娠後期感染での胎児死亡例も報告されており、安全な時期についての特定はできません。
溶血性貧血を患っている場合は重症の貧血発作をおこすことがあります。
また、関節炎や関節リウマチを合併することもあります。
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診療科目・検査
子どもの場合は自然軽快することが多いです。
紅斑のかゆみが強いなどの場合や、他の症状を伴う場合は小児科を受診します。成人であれば内科を受診します。
妊娠している場合は受診の必要性は高く、産婦人科を受診します。
通常は問診や症状の所見で診断されます。必要と認めた場合は血液検査で病原の診断や合併症の検索をおこないます。妊婦の場合は、胎児に異常がおきていないか調べるために超音波検査をおこないます。
原因
ヒトパルボウイルスB19というウイルスによる感染症です。ウイルスがふくまれた鼻水やくしゃみ、咳などの飛沫を吸い込むことで感染が広がります。またウイルスが付着した手で口や鼻に触れることでも感染します。
感染症発生動向調査によると、およそ5年に一度流行しています。また年始から7月上旬にかけて感染者が増え、9月には少なくなる傾向にあります。流行が少ない年は、はっきりとした季節性は認めません。感染しても不顕性感染となることもあります。
また風邪のような症状が出ているころが最も感染力が強く、紅斑が出始めたころには感染力はほぼなくなっています。
治療方法と治療期間
特別な治療法はありません。そのため、あらわれている症状に対応した対症療法をおこないます。
つまり、かゆみが強ければかゆみ止めを塗るなどの治療をおこないます。
また、有効なワクチンは今のところ開発されておらず、予防接種もありません。
ウイルス排泄期間は特徴的な症状を示さないため、二次感染予防は困難です。
しかし一般的な感染対策、つまり手洗いやうがいを徹底することで感染のリスクを減らすことができます。
治療の展望と予後
予後は良好です。無治療でも自然軽快します。
紅斑が出ているころにはウイルスは感染力を失っています。
妊娠中など感染した場合にリスクのあるときは、人ごみを避ける、もしくは風邪をひいている人には近づかないなどの対策が推奨されます。
発症しやすい年代と性差
感染症のため、性差はありません。
5~9歳に多く、ついで0~4歳に多いと報告されています。
成人に向けての疫学調査はおこなわれていませんが、院内感染による集団感染の事例によれば、約5年の周期で流行する傾向があるようです。