りんご病に大人が感染したら…症状はいつまで続く?何科を受診?
りんご病の正式な名前は「伝染性紅斑」といいます。
ヒトパルポウイルスの感染による病気で、頬が赤くなり、その様子がりんごに似ているため「りんご病」と呼ばれています。
この病気にかかる人のほとんどは10歳以下の子どもですが、大人がかかることもあります。
実際に大人がかかったら、どのようなことに注意する必要があるのでしょうか。
りんご病が疑われる主な症状は?
大人のりんご病の症状
りんご病は大人が感染しても何も症状があらわれない人も多くいると考えられます。多くはこうした不顕性(ふけんせい)感染になっていることも考えられます。
頬への発疹は大人にはあまりあらわれません。頬よりも、多くは手足にあらわれます。
大人がりんご病にかかり症状があらわれると、「二峰性(にほうせい)」と呼ばれる2段階で症状のピークがあらわれるのも特徴です。
症状の強さをグラフにおこせば2つの山のように描かれるため、このように呼ばれます。
感染した初めのころは、熱が出て、寒気がします。また頭痛がおこることもあり、インフルエンザとよく似た症状があらわれます。
こうした症状が落ち着くと、関節の痛みやむくみ、皮膚の発疹があらわれます。
りんご病の関節痛やむくみ
大人のりんご病はさまざまな症状があらわれます。代表的な症状は関節の痛みです。発症した成人の60%程度にあらわれます。
男女で比較すると女性に多くあらわれ、痛みを訴える患者さんは男性の2倍ほどです。なかには強い痛みを訴える患者さんもいます。
むくみも関節痛と同じように症状に個人差があります。よく確認しないとわからない程度のものから、体重が増えるほど強くむくむものまでさまざまです。
指がむくんで曲げにくくなったり、指輪が抜けにくくなったりします。
膠原病や風疹と間違われることも
関節痛を含めて、さまざまな症状がおこるのは免疫複合体が原因です。
病原体が侵入してくると、補体というタンパク質が免疫複合体として使われ、この補体が少なくなる「低補体血症」がおこります。
免疫複合体は腎臓の組織にくっついて腎臓の機能障害をおこします。
尿に血が混ざる尿潜血(にょうせんけつ)、タンパク質が多く溶け込む尿蛋白(にょうたんぱく)などをおこすこともあります。
こうした症状は、自己免疫が自身を攻撃する全身性エリテマトーデスなどの膠原病(こうげんびょう)に似ています。
また、病院を受診し、風疹(ふうしん)と間違われているケースもあります。
完治は可能。入院の可能性は少ない
原因になるヒトパルポウイルスに対して効果のある治療法や薬はありません。そのため治療は対症療法をおこないます。
対症療法とはあらわれる症状に対応して治療することで、例えば熱が高ければ、氷枕で冷やす、といったものです。
ほとんどの場合はそれで完治し、回復後は免疫を獲得するため、その後は感染しにくくなります。
入院して治療する事態になることもほとんどないといっていいでしょう。
どの程度の期間で回復するかは個人差があります。経過は発熱の7日~10日ほど後に関節などの症状があらわれます。
その後、一週間ほどで多くの場合は回復していきますが、関節への症状は長く続くことがあります。
長いケースでは数カ月~数年にわたり痛みが残ることもあります。
ただし、免疫機能が障害されている場合は注意が必要です。そうした患者さんには免疫グロブリン製剤を点滴して使用します。
大人の場合は内科を受診
大人の場合は内科を受診します。
大人が感染しやすいのは医療や介護職、子どもと接する機会の多い保育士や教師など仕事にかかわるものか、家族にりんご病の患者さんがいるといった場合です。
りんご病を疑う場合、まわりにそうした患者さんがいないか思い返してみましょう。こうした情報が診断の助けになります。
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仕事に行けるのはいつから
発熱などの症状があれば注意
りんご病の感染力がもっとも強くなる期間は、発熱などの症状が出ているころです。
つまり二峰性の症状の最初の山にきているタイミングでもっとも誰かにうつす可能性が高い状態になります。
関節痛があらわれているのであれば、すでに感染力はなく、他の誰かを感染させる可能性もほぼありません。
出社に法律での制限はない
りんご病の患者さんが出勤することについて定められている法律はありません。
ただ、回復するまでは、できる限り無理せず安静にすることが重要です。
発熱があれば自宅で療養することで、新たな感染を防ぐことにもつながることを認識する必要があります。
また、関節が痛い状態で無理をして転倒などをするとさらに大きなケガをするかもしれません。
妊娠中の感染は注意
妊娠中は流産のリスクあり
母親が妊娠中に感染することは胎児にとってリスクになります。とくに妊娠前半期の4~6週目での感染は流産の危険性も高くなります。
また、リスクは流産だけではありません。
胎児の胸やお腹に水がたまったり、全身がむくんだりする状態になる胎児水腫になることもあります。
胎児水腫は出生後の発育に問題のないケースも多くありますが、十分に胎児の状態を把握する必要があります。
母親が不顕性感染となっている可能性もあるので、もし家族がりんご病になった場合は、症状はなくても産婦人科で胎児の状態を確認してもらう必要があります。
妊娠中ならできる限り感染をさける努力を
風疹のように先天性の異常をもたらすことは多くはありませんが、リスクを少しでもさけるために、りんご病の患者さんとの接触はさけましょう。
りんご病のもっとも多い感染経路は家族からです。
例えば妊娠中に他の子どもが感染した場合など、完全に接触をさけることは難しいかもしれません。
しかし、可能な限り接触をさけることが望まれます。
流行時期には人ごみをさけることで不特定多数から感染するリスクを少しでも下げるように努めるなど、日頃から注意しなければいけません。
りんご病にかかった時の過ごし方
食事や入浴で気をつけることは?
りんご病に対して特別な治療法はありません。安静にすることが重要です。
発疹は刺激によって症状が強くあらわれる可能性があります。日光や、入浴で温まることも刺激となり、かゆみを強くする可能性があります。
しばらくは再び刺激を受けることでぶりかえすこともあるので、入浴はシャワーにするなど、しばらくの間はさけたほうが良いでしょう。
食べてはいけない食物などの制限もありません。
ただし、唾液などのしぶきによって他の人へ感染していく飛沫(ひまつ)感染により広がると考えられています。
そのため、日頃から食事は食器を分け、うがいや手洗いを習慣にすることで、少しでも感染の広がりを抑えましょう。
特徴のある症状があらわれるころには感染力はないので、日頃から習慣にすることが予防には重要です。
執筆・監修ドクター
経歴産業医科大学医学部 卒業
順天堂大学医学部公衆衛生学教室 研究員
McGill University Occupational Health 留学
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