デング熱とは
デング熱(でんぐねつ)とは熱帯地域や、亜熱帯地域でみられる感染症です。主に東南アジアや南アジア、中南米でみられます。
この感染症は蚊によってウイルスが媒介されることで広がります。発症すると発熱と全身の痛み、発疹などを引きおこします。
人から人への感染はありませんが、日本では海外で感染した人が帰国後に国内で発症することがあります。軽症のデング熱と重症のデング出血熱があります。
デング熱の症状
デング熱が発症する場合は感染後、2~14日の潜伏期間があります。多くの場合、潜伏期間は3~7日程度です。
その後、発症すると突然高熱になります。初期の症状は、発熱とともに頭痛や悪寒を伴い、発熱は2~7日ほど続きます。初期症状に続いて全身の筋肉や、関節などに痛みがあらわれます。
その後、発症してから3~4日後あたりに、体の中心部の体幹部分を中心に発疹が出現します。その後、発疹は顔や手足へと広がります。こうした症状は1週間程度でなくなり、多くの場合は軽症で終わりその後回復します。
しかし、一部では「デング出血熱」となる感染者がいます。デング出血熱は体温が一度平熱に戻りかけた時におこります。
血管の外へ水分が漏れ出す血漿漏出(けっしょうろうしゅつ)がおこり、出血しやすくなります。10%~20%で鼻や口、消化管などから出血します。治療を適切に受けなければ、10~20%は死亡する可能性があります。
そのほか血小板が減り、血液が固まりにくくなります。
また、感染してもなにも症状があらわれない不顕性感染(ふけんせいかんせん)になる人も多くいます。約50~80%は不顕性感染になると考えられています。
デング熱の診療科目・検査方法
デング熱は、すべての蚊がウイルスを保有しているわけではありません。そのため、蚊にさされただけで心配する必要はありませんが、帰国時に空港などの検疫所や最寄りの保健所に相談することも可能です。
発熱などの症状がある場合には、内科などの医療機関を受診する必要があります。
血液検査をおこない、ウイルスに対する抗体を調べることで診断します。
デング熱の原因
デング熱の原因となるウイルスはフラビウイルス科のウイルスです。
デング熱をおこすウイルスには4つの型があり、一度かかるとその型のウイルスについては免疫を獲得し、それ以降はかからなくなります。
別の型の場合は発症する可能性があり、その場合、重症化する確率が高くなるとされています。
日本脳炎の原因になるウイルスと同じ分類に入るウイルスです。蚊がウイルスを媒介する仕組みも同じです。
感染した人を蚊が吸血することで、蚊の体内でウイルスが増え、その蚊がほかの人を吸血することで感染します。必ず蚊が媒介役となり、人から直接感染することはありません。
媒介する蚊の種類は主にネッタイシマカという暖かい地域に生息する蚊で、日本にはいません。国内に生息しているヒトスジシマカも媒介が可能とされています。
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デング熱の予防・治療方法・治療期間
デング熱のデングウイルスに対する特有の薬や治療法はありません。そのため、対症療法による治療をおこないます。
例えば、発熱や筋肉痛をおさえるためにアセトアミノフェンなどの解熱鎮痛薬を使用します。
しかし、サリチル酸系統の薬剤は使用できません。サリチル酸系の薬剤は出血傾向や、体が酸性になるアシドーシスを助長するためです。
デング出血熱の症状に対しては輸液療法をおこない血液量が減ったり濃縮したりするなどの症状に対応します。ほかにも血圧を上げることで急激に血圧が低下するショック症状の発生を予防するなどもおこないます。
デング熱の治療経過(合併症・後遺症)
デング熱のワクチンは現在のところ、実用化されているものがありません。
流行地域にでかける場合は、蚊に刺されないように注意することが大切です。長袖、長ズボンの着用が推奨されます。虫よけスプレーなども利用しましょう。
予後は悪くありませんが、重症なデング出血熱を発症した場合は適切な治療をおこなわなければ生命にかかわることもあります。
デング熱になりやすい年齢や性別
デング熱は日本国内では海外で感染し、帰国後に発症して確認されることがあります。1999年には9症例、2000年に18症例でしたが、2010年には年間200例を超えています。
日本国内で感染した例は、過去60年以上報告はありませんでした。しかし、2014年8月に国内での感染が1例確認されています。
執筆・監修ドクター
経歴1998年 埼玉医科大学 卒業
1998年 福岡大学病院 臨床研修
2000年 福岡大学病院 呼吸器科入局
2012年 荒牧内科開業
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