ちゅうとうこきゅうきしょうこうぐん中東呼吸器症候群
中東呼吸器症候群(ちゅうとうこきゅうきしょうこうぐん)とはコロナウイルスの一種(MERSウイルス)による重い呼吸器症状をおこす感染性の病気です。2003年に世界的に流行し話題になった「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の原因ウイルスもコロナウイルスの一種でした。
MERSはサウジアラビア、アラブ首長国連邦などの中東地域で広く発生しています。
国内での発症例はありませんが、今後、中東地域を旅行して帰国した人が発症する可能性があります。
ヒトコブラクダがMERSウイルスを保有しているため、感染源になっているのではないかと考えられています。そのため、中東地域のラクダに接触することや、しっかりと加熱していないラクダ肉を摂取することで感染する可能性があるといわれています。
また、発症した人の唾液にも含まれていて、咳(せき)などによる飛沫感染や接触感染でも感染します。
厚生労働省では、この病気について中東地域に旅行する人に対して注意喚起をしています。また、この病気を持ち込まないために、空港などの検疫所では、帰国した人の健康相談をおこなっています。
中東地域に旅行し、ラクダと接触する場合は注意する必要があります。
- 目次
中東呼吸器症候群の症状
感染して2~14日で症状があらわれます。
多くは、以下のような症状です。
- 発熱
- ぞくぞくとした寒気を感じる(悪寒)
- 咳
- 筋肉痛
- 腹痛、下痢、嘔吐(おうと)などの消化器への症状
腎不全や、敗血症によって急激に血圧が低下するショックをおこしたり、重症肺炎を伴ったりすることもあります。そのため生命にかかわることがあります。感染した人の約3分の1が死亡しています。
糖尿病や心臓病などの病気のある人や、高齢者の場合は重症化しやすいといわれています。
しかし、なかには軽症であったり、感染していても症状が出なっかたりする人もいます。また、症状が出ていない人からは感染しないと考えられています。
中東呼吸器症候群の診療科目・検査方法
中東へ旅行した、あるいは住んでいた人で、疑わしい症状がある場合には最寄りの保健所に相談し、指示を受けましょう。MERS患者と濃厚な接触があった場合も同様です。
診断や治療は感染症を専門にする内科が担当する病気です。診断するために体液を採取して、それを調べる検査をします。また、血液検査をおこなうこともあります。
体液は鼻や咽頭、気道、肺胞など数カ所から採取します。MERSウイルスが含まれているか検査をおこないます。
また、血液検査ではおもにMERSウイルスの抗体について調べます。
中東呼吸器症候群の原因
原因はウイルスです。
MERSウイルスは2012年に初めて発見された、コロナウイルスの一種です。
2003年に世界的に流行し、話題になった「重症急性呼吸器症候群(SARS)」の原因ウイルスもコロナウイルスの一種でした。
MERSウイルスはヒトコブラクダが保有していることがわかっています。明確にどのような仕組みで感染するのかわかってはいませんが、保有するラクダと濃厚接触することで、感染するのではないかと考えられています。そのため、ヒトコブラクダとの接触や、殺菌されていないラクダ乳や加熱処理が十分でないラクダ肉を食べるなども感染のリスクがあると考えられています。
人から人への感染する確率は高くありませんないが、医療従事者に多く発生していることから、MERS患者と濃厚に接触することも感染リスクではないかと考えられています。
肺炎が進行するなど、症状が重症化したときに二次感染をおこしやすくなります。
また、通常は二次感染をおこしても数人程度に広まる程度ですが、一部の感染症患者には、ほかと比べてたくさんの予想を上回る二次感染をおこします。
「スーパースプレッド現象」と呼ばれる現象がおこることもあります。
中東呼吸器症候群の予防・治療方法・治療期間
ウイルスが原因のため特別な治療薬はありません。また、予防薬も開発されていません。
あらわれた症状に対して対応していく対症療法をおこないます。そのため発熱や、筋肉の痛みなどを緩和するといった治療法を選択していくことになります。
感染を広げないため、感染した患者さんを隔離することも重要です。医療従事者も部屋に入る際には、ガウン、マスク、帽子、手袋を着用します。
米国では全症例に対して接触による感染を予防し、部屋の空気も除菌することが提唱されています。
中東呼吸器症候群の治療経過(合併症・後遺症)
予後はあまりよくありません。感染者の致死率は約35%です。ただし、報告されていないような例もあると考えられます。
高齢者や何か別の病気がある場合は重症化しやすいと考えられています。
世界保健機関(WHO)では、MERSウイルスを詳しく理解するために研究を進めています。
中東呼吸器症候群になりやすい年齢や性別
2012~2019年8月末までの世界の患者数は2,464人とWHOは報告しています。そのうち、850人は命をおとしています。
2019年10月現在、日本国内で発生した例はありません。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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