あいじーえーじんしょうIgA腎症
IgA腎症とは?
IgA腎症は免疫グロブリンというタンパク質の一種、IgAが腎臓の球糸体という箇所に沈着する病気です。IgAはのどにある扁桃体など、腎臓から離れた場所にあるところで作られています。
ほとんどは慢性的にゆっくりと進行するため初期の症状はなにもない場合もあります。しかし、少しずつ腎臓の機能が低下し、高血圧や腎不全を発症します。そのため、定期的に検査をうけて注意深く見ていく必要のある病気です。腎機能検査などで発見されますが原因は不明です。
IgA腎症の症状
IgA腎症の診療科目・検査方法
IgA腎症の原因
腎臓の糸球体の中のメサンギウム領域という場所に免疫グロブリンのIgAという抗体が沈着することによります。
異常なIgAは扁桃腺や骨髄で産生されているとされています。
細菌やウイルス感染症、遺伝的な素因などが言われているが、原因は不明です。
IgA腎症の予防・治療方法・治療期間
減塩を中心とした食事療法をまず行います。
軽症例ではアンギオンテンシン変換酵素阻害薬やアンギオテンシン受容体拮抗薬などの降圧薬を投与します。
高度蛋白尿など比較的重症なものは、副腎皮質ステロイド薬や免疫抑制薬を投与しますが、症例により、ステロイドパルス療法や扁桃摘出術を行う場合もあります。
程度によりさまざまです。
IgA腎症の治療経過(合併症・後遺症)
IgA腎症になりやすい年齢や性別
疫学調査からは約3万3千人の患者さんがいると推計されています。
比較的若い方に多い疾患ですが、あらゆる年代でみられます。性差はありません。
編集部脚注
※1 肉芽腫 (にくげしゅ)
肉芽腫は、「慢性的な炎症反応に起因する病変」です。
「腫」という文字が使われていますが、腫瘍ではなく免疫反応による病変です。
本来は、異物が入ってきたときに「異物を囲いこむための生体防御機構」です。
マクロファージを中心とした免疫細胞が集まって異物を押さえこんだ結果、肉芽腫が形成されることになります。
最終的には、マクロファージが肉芽腫内の「壊死・老廃物」を除去します。
その後、組織はだんだん元どおりになり、肉芽腫は縮小・消失に向かいます。
以上から、肉芽腫は「異物を一箇所にとどめて除去するための防御機構」に相当します。
しかし、サルコイドーシスの場合、全身の皮膚・臓器に肉芽腫が頻発します。
別に異物・細菌などが入りこんだわけでもないため、「意味もなく肉芽腫が現れる」という状況になります。
肉芽腫は「カッテージチーズ(乾酪)のようになって壊死する場合(乾酪化)」がありますが、サルコイドーシスの肉芽腫は乾酪化しません。
また、サルコイドーシスにおける肉芽腫は、「類上皮細胞(るいじょうひ-さいぼう)」と呼ばれる細胞から形成されます。
そのため、サルコイドーシスの肉芽腫を「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」と表現します。
※2 ACE活性
ACE活性は、「アンジオテンシン変換酵素の活性を測定する検査」を指しています。
「アンジオテンシン」は「血圧の調整に関与する物質」です。
次の2つの作用が知られています。
・末梢血管を収縮させる
・アルドステロンの分泌を促す
アルドステロンは、血液の水分量を増やす働きのあるホルモンです。
「血管収縮」「血液の水分増加」は、いずれも血圧を上げる方向に働きます。
アンジオテンシンの材料となる物質―アンジオテンシノーゲンは、主として肝臓でつくられます。
アンジオテンシノーゲンは、「腎臓で分泌されるタンパク質分解酵素―レニン」の作用で「アンジオテンシンⅠ」に変わります。
しかし、アンジオテンシンⅠは不活性であり、血圧を上げる作用を持ちません。
血圧を上げるのは、「アンジオテンシンⅠ⇒アンジオテンシンⅡ」に変換されてからです。「Ⅰ⇒Ⅱ」の変換を促す酵素が、アンジオテンシン変換酵素(ACE)です。
簡潔に表現するならば、「アンジオテンシン変換酵素=血圧を上げるための酵素」と言えます。ACE活性の値を出す検査では、「アンジオテンシン変換酵素の働き」を調べます。
血清ACE活性の基準値は「8.3~21.4U/L」となっています。
サルコイドーシスでは、ACE活性が異常高値を示します。
そのほか、異常高値を示す疾患には「甲状腺機能亢進症」「慢性肝炎」「肝硬変」「糖尿病」「腎不全」などがあります。
一方、異常低値を示す疾患には「甲状腺機能低下症」「多発性骨髄腫」「慢性白血病」などがあります。
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※3 リゾチーム
リゾチームは、「人間の涙、鼻水、唾液、血清などに含まれる酵素」です。
ちなみに、血清は「血液を凝固させたとき、上澄みにできる淡い黄色の液体」を指します。
リゾチームは生体防御機構に関与しており、「抗菌・抗ウイルス作用」「抗炎症作用」などを有します。
異常高値を示す場合、サルコイドーシス、肝疾患、消化器疾患などが疑われます。
※4 ガリウムシンチ
ガリウムシンチは、「腫瘍、炎症の状態を評価するための検査方法」です。
金属元素のガリウムは、「腫瘍、炎症のある部位に集まる性質」を持っています。
そのため、「体内に入ったガリウムの行方を観測すれば、腫瘍や炎症を見つけることが可能」と考えることが可能です。
「ガリウムが集まった場所=腫瘍or炎症」と判断できるからです。
しかし、普通のガリウムでは「体内に入ったあとの行方」がわかりません。
そこで、ガリウムの放射性同位元素―ガリウム67を注射します。
放射性物質は、体内でも行方を追うことができます。
「どこから放射線が出ているか」を観測すれば、位置を把握できるからです。
このようなメカニズムで、炎症や腫瘍の状態を評価する検査が「ガリウムシンチグラフィー」です。
※5 FDG-PET
FDG-PETは、「腫瘍、炎症の位置を特定するための検査」です。
がん細胞や炎症細胞(白血球・マクロファージなど炎症に関与する細胞)は、ほかの細胞より多くのブドウ糖を必要とします。
以上から、「体内のブドウ糖がどこに集まるか」を調べることで、腫瘍・炎症を発見できるはずです。
がん細胞、炎症細胞の多いところに、多くのブドウ糖が集まるからです。
この考え方で検査をおこなうには、「体内に入ったあとも、位置を把握できるブドウ糖」が必要になります。
そこで、「18F-FDG(フルオロデオキシグルコース)」と呼ばれる放射性物質を使います。
「18F-FDG」は「ブドウ糖の分子の一部を放射性物質に変えたもの」です。
体内ではブドウ糖と同じように扱われるので、がん細胞や炎症細胞のあるところに集まります。
それにより、「放射線がどこから出ているか」を調べることで、「どこに18F-FDGが集まっているか」を知ることができます。
このような手法を用いた検査が「FDG-PET」です。
「PET検査」「陽電子放射断層撮影」などと呼ぶこともあります。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴1989年 関西医科大学卒業
1989年 関西医科大学附属病院内科 研修医
1992年 関西医科大学大学院医学研究科博士課程(循環器内科学専攻)入学
1996年 同大学院博士課程単位習得
1997年 関西医科大学附属病院第二内科(助手)
2003年 有隣会 東大阪病院内科 (副院長)
2010年 じくはら医院(内科・循環器内科) 開設(院長)
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