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【医師解説】虚血性心疾患の治療法とは

更新日:2022/08/03 公開日:2019/08/08 view数:12,360

虚血性心疾患とは、心筋に酸素を供給する血液が充分に行き渡らずに酸欠(虚血)状態となった心臓におきる病気です。この病気には狭心症と心筋梗塞の大きく二つの疾患に分けることができます。
薬物治療や外科手術で治る見込みのある狭心症に対し、救急搬送で緊急手術がおこなわれるケースが多い急性心筋梗塞は、国内の病気による死亡原因でがんに次ぐ2位とされている疾患です。今回はこの狭心症と心筋梗塞に対し、それぞれどのような流れで治療が行われるのか、循環器系専門医の先生に伺いました。

目次
  1. 虚血性心疾患とは?
  2. 狭心症の治療
  3. 心筋梗塞の治療
  4. 虚血性心疾患に可能な限り対処するために

虚血性心疾患とは?

虚血性心疾患とは、心筋に酸素を供給する血液が充分に行き渡らずに酸欠(虚血)状態となった心臓におきる病気です。この病気には狭心症心筋梗塞の大きく二つの疾患に分けることができます。

薬物治療や外科手術で治る見込みのある狭心症に対し、救急搬送で緊急手術がおこなわれるケースが多い急性心筋梗塞は、国内の病気による死亡原因でがんに次ぐ2位とされている疾患です。

このように2つの疾患には重症度に隔たりがありますが、共に心筋の周囲を囲む冠動脈の動脈硬化が発端となり発症するという部分は共通しています。動脈硬化は日頃の食生活や生活習慣を見直すことによって予防が可能です。これにより、狭心症のみならず心筋梗塞に対する発症リスクも減らすことが可能です。

今回はこの狭心症心筋梗塞に対し、それぞれどのような流れで治療が行われるのか、日本循環器学会認定 循環器専門医の久保田先生に伺いました。


狭心症の治療

薬物療法

症状によって変わりますが、まずは薬物療法を検討します。一般的には硝酸薬・カルシウム拮抗薬・交感神経遮断薬であるβ遮断薬や抗血小板剤であるアスピリンなどを使用します。これらで心臓への負担を可能な限り軽減していきます。しかしながら、根本的な解決にはならず狭窄部位に対する下記のような侵襲的な治療が必要となることが多い現状にあります。
※侵襲・・・医療用語の一つ。身体の恒常性が乱れる可能性がある外的な刺激を指す。感染やけがだけではなく、外科的手術や検査も該当する。

カテーテル術

次に検討するのがカテーテル治療です。正式にはコロナリー・インターベンションと呼びます。これはカテーテルという細い金属の管を手首・肘もしくは大腿の付け根から動脈を通して直接冠動脈の入り口付近まで挿入します。そこにバルーン(風船)を送り込み、狭窄部で膨らませ、狭まった冠動脈を押し広げます。再狭窄を防ぐために、押し広げた場所にステントと呼ばれる金属製のコイルを留置するケースがほとんどです。施術は早い場合は数十分で終了しますが、血管によっては数時間を要する場合もあります。
退院できるまでの日数は病院により異なります。基本的に成功率が高い手術とされていますが、施術により血管内部が傷つくため、血管がその傷を修復しようとして再狭窄がおきるケースがしばしばあります。このため、決められた内服薬をしっかり内服していただき、術後に術前と同じような症状が感じられた場合は至急主治医に相談する必要があります。

冠動脈バイパス術

カテーテル治療が適用困難な場合には冠動脈バイパス術をおこないます。体内の他の血管を用いて狭窄箇所を迂回させる血液の通り道(バイパス)を作ります。これにより、心臓への血流が回復します。この時用いられる血管は、足の静脈や、腕もしくは胸の動脈、または胃のそばの動脈から選択されます。手術後も再度血管狭窄を起こさないために薬物治療は必須になります。

心筋梗塞の治療

心筋梗塞の治療で鍵を握るのが再灌流療法です。これを発症から出来る限り迅速におこない、心臓を壊死から救うことが救命の第一条件となります。

再灌流療法

再灌流療法はカテーテルを用いて冠動脈にバルーンもしくはステントを送り込み、血管を拡張するための手術です。局所麻酔をおこない、手首・肘あるいは太腿の付け根から動脈に向けてカテーテルを挿入し、冠動脈に向かわせます。カテーテルとは2mm程度の細い金属の管です。動脈の内側には神経が通っていないため、挿入時以外はカテーテルが動脈内を移動しても痛みを感じることはほとんどありません。

カテーテルが冠動脈に到着したところで造影剤を注入します。造影剤とは一般的にヨード製剤を使用し、同時に放射線を使用することで病変部位を同定することができます。そしてそこに向けてガイドワイヤーと呼ばれる軟性のある細い針金を挿入し、バルーンカテーテル(風船のついた管)を送り込みます。狭窄部でこのバルーンを膨らませることにより血管を拡張し狭窄を解きます。これを経皮的冠動脈形成術と呼びます。

また、ステントと呼ばれる金網状の筒を拡張部に送り、これを留置することにより冠動脈を拡張したまま保つ処置をおこなうことが一般的です。このバルーン手術とステント留置術の組合せは患者さんの身体への負担も少なく、心筋梗塞手術においては主要な方法とされています。これにより多くの方が冠動脈の血流を改善させています。

心筋梗塞においても狭心症同様、カテーテル治療が困難である場合や糖尿病を合併している場合には冠動脈バイパス術が選択肢になります。出来る限り早期の血流改善が必要なため、血管の狭窄部位や重症度によって、治療方法を選択します。

虚血性心疾患に可能な限り対処するために

狭心症心筋梗塞いずれも薬物療法が必須になります。狭心症の場合には、その上で症状が残存している場合、高度狭窄である場合、画像検査などで虚血が証明された場合にはカテーテル治療や冠動脈バイパス術などの侵襲的な治療が必要になります。
一方、心筋梗塞に関しては発症後1時間以内に心室細動(不整脈)をおこし、病院に着く前に死亡する例が半数以上という結果があります。したがって、初期からの救命処置(心肺蘇生処置)が救命率上昇につながります。正しい知識さえ身につけていればご家族や周囲の方でもおこなえる救命術です。
搬送後に医師ができる治療の効果をより高めるためにも、ご家族が心肺蘇生法を修得する価値は充分にあると考えます。病院や自治体によっては講習会を設けているところもありますが、先ずは日本医師会が解説している「日本医師会による心肺蘇生法の手順」を参考にしてみてください。

執筆・監修ドクター

久保田 芳明
久保田 芳明 医師 久保田クリニック 医師 担当科目 内科/循環器内科/糖尿病内科/呼吸器内科/アレルギー科

経歴2006年 近畿大学医学部卒業
     東京都老人医療センター(現:健康長寿医療センター)初期研修医
2008年 独立行政法人 国立病院機構 東京医療センター 後期研修医
2010年 日本医科大学付属病院 循環器内科入局 同大学院生、久保田クリニック副院長
2014年 日本医科大学付属病院 循環器内科助教

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