のどにできものが!そのままでは危ない場合も
口を開けて鏡を見た時にのどにできものがあるのを見つけたら…そのできものは、消えるのか、そのままずっとあるのか、もしかしたら危険なものではないのかなどさまざまなことが気になることでしょう。
もし保護者の方なら、自分ののどだけでなく、子どもの口の中を確認した時にできものを発見することもあるかもしれません。
のどは鼻や口からつながっており、気管や食道につながる複雑な臓器です。
また、声を出したり、物を飲み込んだり、空気の通り道になるなど、多彩な役割を担っています。
どれも生命活動には重要ですが、鏡の前で口を大きく開けて自分で見える範囲は一部分です。
そのため、のどにできものができたとしても確認できない場合もあります。
逆にいうと、のどの違和感や声がれなどの異常は、もしかしたら、自分には見えていないのどのできものが原因なのかもしれません。
症状だけでは簡単に確認するのは難しいため、医療機関で確認する必要もあります。
ここでは実際にのどにできるできものについてどんなものがあるのか、その代表例をいくつか紹介します。
のどのできものには良性と悪性のものがある
できものは医学的には「腫瘍(しゅよう)」といいます。見た目はもりあがっているものから、白く濁ったもの、赤くはれたものなどさまざまです。
腫瘍には良性と悪性があります。悪性の腫瘍は周囲の臓器に浸潤(しんじゅん)してしみ込むようにひろがったり、出血したりします。
また、再発も問題になります。悪性腫瘍は早急に治療が必要な場合がほとんどです。場合によっては良性腫瘍であっても治療が必要になることもあります。
良性腫瘍では声帯ポリープや乳頭腫(にゅうとうしゅ)などが代表的です。
声帯ポリープは声帯の片側にコブのようなしこりができる病気です。初期の段階ではそれほど症状はありません。
大きくなると声がれや、のどの違和感などの症状があらわれます。症状によっては、治療が必要になることがあります。
乳頭腫はウイルス感染が原因で生じます。声帯にできることもあり、声がかれる原因やのどの違和感として自覚することがあります。
良性腫瘍ですが、がん化するリスクがあります。そのため症状がなくても切除することが一般的です。
悪性のものでは咽頭がんや喉頭がんがあります。がんを疑う場合は、できものの組織の一部を採取して細胞にがんがないか調べます。
がんと確認された場合は、進行度合いによって手術や化学療法、放射線療法を選択して治療にあたります。
子どもの感染症でもできることがある
ヘルパンギーナや手足口病は子どもが夏にかかりやすい感染症です。大人はあまりかかりませんが、かかると重症化することがあります。
咳やくしゃみなどの飛沫(ひまつ)にウイルスが含まれており、それを吸い込む飛沫感染や、そのウイルスが含まれた飛沫などが付着した場所をさわり、その手で何かを食べるなどで感染する接触感染、便などの処理時に手洗いが不十分でおこる糞口(ふんこう)感染でひろがります。
感染力は強く、手足口病の場合は発疹が手や足にあらわれます。また、ヘルパンギーナは口の中の症状が強くあらわれます。
これらの病気は口内炎のような水ぶくれが口の中にあらわれます。水ぶくれがひどいと痛みがあるため、食欲がなくなることがあります。
手足口病やヘルパンギーナはウイルスによる感染のため、効果のある薬がありません。
そのため、症状にあわせて対応していく必要があります。多くの場合は数日で回復します。
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のどの違和感はできものによることも
できものがあっても必ず決まった症状があらわれるわけではありません。痛みが必ずあるとはかぎらず、飲み込みにくさだけを感じるようなこともあります。
また、できる場所によっては声が出しにくくなったり、咳き込むようになったりすることもあります。かゆみとして感じる場合もあります。
また、悪性のものだから必ず痛いというわけでもありません。悪性腫瘍でも初めのころは無症状のこともあります。
できものができたことで鼻に影響が出ることもあります。鼻の奥にある上咽頭にできものができると鼻とのどのつながり部分をふさぎ鼻がつまった状態になることがあります。
鼻血が上咽頭のできものによって出やすくなることもあります。
違和感だけがある咽喉頭異常感症
飲み込みにくさなどの違和感はあるのに、さまざまな検査をしても原因がわからないことがあります。こうした場合は咽喉頭異常感症の可能性があります。
ストレスなどが原因になってのどにボールがつかえたような異物感があらわれることもあり、その場合は「ヒステリー球」といわれます。
あらゆる検査をおこない原因が特定できない場合は、この病気が疑われます。その場合、心療内科と連携が必要なこともあります。
痛みはなくても危険な病気かもしれない
もし、のどにできものを発見したら、一度そのできものを病院で診てもらうのがよいでしょう。
できものが悪性腫瘍だった場合、進行していくと治療が難しくなっていきます。
のどの悪性腫瘍は初期では症状がない場合も多く、発見が難しいことも多くあります。
そのため、放っておいて、転移をおこしてほかの臓器にひろがることもあります。初期の状態であれば完治する確率も高くなります。
しかし転移すると全身の治療が必要になり、完治する確率も低くなります。
また、できものが良性だったというと「問題のないもの」と思うかもしれません。
しかし、できものができた場所や大きさによってはのどの機能にかかわる症状を引きおこします。
また、良性のものも少しずつ大きくなったり、がん化したりすることもあります。そのため治療が必要になることもあります。
結局のところ、のどにできものが一定期間以上あるなら病院を受診して調べてもらう必要性があります。
また、できものではありませんが、扁桃(へんとう)に白いものが見えることがあります。
これは膿栓(のうせん)というもので、とくに危険なものではありません。膿栓は口臭の原因になることがあります。
これは耳鼻いんこう科で取りのぞくこともできます。気になるようであれば受診してください。
ただし、膿栓だと思っても中咽頭がんという扁桃にできるがんの可能性もあります。大きくなる、出血する、痛みがある場合には必ず受診してください。
続く場合はしっかり調べよう
例えば子どもによくあるヘルパンギーナなどの感染症によるものであれば、病気の経過がよくなっていけば、それにあわせて症状もよくなっていくでしょう。
その場合はあまりのどに負担のない食べやすいものを摂取して経過をみることで大丈夫です。
しかし、症状がなかったとしても、1週間以上続くできものについては詳しく調べる必要があります。
できものが見えなくても、のどに違和感があるなら見えない場所にできているのかもしれないということは認識しておきましょう。
違和感がすぐになくなり、それ以降はあらわれないのであれば少し様子を見てもよいでしょう。
しかし、違和感が断続的にあるなら、まずは耳鼻いんこう科を受診し詳しく調べてもらいましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2009年に日本大学医学部を卒業。初期研修課程終了後、東京医科歯科大学耳鼻咽喉科へ入局。東京医科歯科大学付属病院や土浦協同病院などの市中病院で研鑽を積み、カリフォルニア大学サンディエゴ校へ留学。
2016年7月より医療法人社団則由会AGAヘアクリニックを院長として開院すると同時に水島耳鼻咽喉科副院長に就任。
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