排尿時に痛い!血尿が出る…女性に多い膀胱炎はストレスや疲れが関係している?市販薬や飲み物で改善できる?
女性がかかることが多い、膀胱炎(ぼうこうえん)で悩んでいませんか? 排尿時に尿道のしみるような痛み、残尿感があるとトイレに行くたびつらいですよね。
血尿が出たり、おしっこが濁ったりすると心配にもなります。ストレスがたまる、疲れると症状があらわれる、市販薬を飲んでも繰り返すことが多い、という人もいるでしょう。
この記事では膀胱炎の原因や症状、薬について、病院の受診科などについて解説します。
- 目次
膀胱炎とは? 女性がかかりやすいのはなぜ?
膀胱炎とは、尿をためる器官である膀胱が炎症を起こしている病気です。原因はさまざまですが、もっとも多く、一般的に「膀胱炎」といわれているのが「急性膀胱炎」です。
急性膀胱炎(単純性膀胱炎)
急性膀胱炎とは、細菌によって膀胱が炎症を起こしている病気です。単純性膀胱炎ともいわれます。肛門やその周辺に存在する大腸菌やブドウ球菌・連鎖球菌などの細菌が尿道を通り、膀胱に侵入して増殖することで引き起こされます。
急性膀胱炎は男性よりも女性がかかりやすい病気です。特に20~40代の女性に多くみられます。
女性が膀胱炎にかかりやすいのは、尿道の位置や長さに関係がある
女性が膀胱炎にかかることが多いのは、身体の構造によるものです。女性は尿道の近くに肛門や腟(ちつ)があるため、膀胱に細菌が入り込みやすいのです。
また、尿道の長さも要因として挙げられます。男性の尿道は18~25センチの長さですが、女性の場合は3~6センチと短く、細菌が膀胱に容易に到達してしまうのです。
膀胱炎にかかりやすくなる原因とは? 疲労、ストレスとの関係とは
膀胱炎は膀胱に細菌が侵入することで起きる病気ですが、健康な膀胱であれば防御作用が働き、細菌が少し入った程度で炎症は起こりません。なんらかの原因で膀胱の免疫機能が低下しているときに発症するのです。
また、細菌が入り混み、増殖しやすい環境も膀胱炎のリスクを高めます。膀胱炎にかかりやすくなる原因としては以下のようなことが挙げられます。
過労やストレスなどによる免疫力の低下
過労やストレス、睡眠不足、冷え、風邪などで免疫力が落ちていると、膀胱内に侵入した細菌に抵抗できなくなります。そのため膀胱内で細菌が増殖して、膀胱炎を引き起こしてしまうのです。
尿を我慢しすぎるまたは頻繁に行き過ぎる
正常の排尿回数は、1日3回~8回です。
無理して尿を我慢しなければならない環境に長くいると、ストレスで免疫力が下がります。
一方必要以上に頻回にトイレに行く習慣も、尿道からの細菌の侵入の頻度を高めます。
性行為
免疫力が低下している時に性行為をすると、尿道から入った細菌が膀胱内で増殖して膀胱炎になることがあります。
生理中
免疫力が低下しているときに、ナプキンやおりものシートを6時間以上交換しないと細菌が増殖してしまいます。尿道から入った細菌が膀胱内で増殖して膀胱炎になることがあります。
水分不足
水分不足で尿の量が減ると、排尿回数が減り、膀胱内で細菌が増殖しやすくなります。夏は汗をかくことで、尿量が減るため膀胱炎になりやすい傾向があります
膀胱炎の主な症状
膀胱炎の主な症状としては排尿時の痛み、血尿、トイレに行く回数が増える(頻尿)、残尿感、などがあります。
排尿時、尿道やお腹が痛む
排尿の際に、尿道、下腹部に痛みがあります。不快感や痛い強みまでさまざまですが特に、排尿の終わりごろに尿道に強い痛みを感じる特徴があります。
トイレに行く回数が増える
急に尿が近くなり、トイレに行く回数が増えます。ひどいときには、いつも尿意があり、漏れてしまうこともあります。
残尿感
排尿後も、まだ尿が残っているようなスッキリしない不快感があります。
尿が濁る
炎症による白血球の増加や、剥がれ落ちた膀胱の粘膜が入るために、尿の色が白っぽく濁ることがあります。
血尿
尿に血液が混じることがあります。症状が悪化すると、排尿の終わりごろに血液だけが出ることもあります。
膀胱炎を放置すると悪化して「腎盂(じんう)腎炎」になることも
膀胱炎は初期の段階で治療を受ければ、症状は2、3日で治まり、1~2週間で改善します。ただし、そのまま放置にしていると、炎症が悪化して痛みがひどくなることもあります。また、膀胱と尿管でつながっている腎臓にまで、細菌尿が逆流して、「腎盂腎炎」を引き起こす可能性もあります。
腎盂腎炎とは、腎臓で作られた尿が集まってくる腎盂が炎症を起こしている状態をいいます。
症状としては膀胱炎にみられる排尿時の痛み、残尿感、頻尿などに加えて、悪寒をともなう高熱、吐き気、背中や腰の痛み、全身の倦怠(けんたい)感などがあります。
また、腎臓から細菌が血流に入り込んで全身へ広がると敗血症となり、最悪の場合は多臓器不全といった命に関わる事態を引き起こすこともあるのです。
治療は抗生剤を使用しますが、場合によっては入院して抗生物質の点滴が必要になることもあります。膀胱炎はよくある病気と軽く考えずに、早めに病院を受診して治療を受けることが大切です。
血尿がみられる「出血性膀胱炎」、ストレスや食事が関係する「間質性膀胱炎」もある
膀胱炎には急性膀胱炎以外にも、細菌による感染が原因ではない「出血性膀胱炎」や「間質性膀胱炎」などがあります。
出血性膀胱炎
出血性膀胱炎は、出血をともなう膀胱炎のことをいいます。ウイルスや抗がん薬、免疫抑制薬、抗アレルギー薬などの薬剤、放射線が原因で、膀胱の粘膜が傷つくことで引き起こされます。
血尿とともに、頻尿、排尿時の痛み、残尿感といった症状がみられます。重症化すると尿に血の塊があらわれることもあります。抗生物質や漢方薬でも発症することがあるため、医薬品を服用している場合は、医師に相談しましょう。
間質性膀胱炎
間質性膀胱炎は膀胱の内側にある粘膜の機能障害などによって、炎症が起きる膀胱炎です。間質性膀胱炎になる原因はまだ解明されていません。症状は頻尿、突然激しい尿意に襲われ我慢が難しい(尿意切迫感)、尿が膀胱にたまると痛み、排尿すると楽になるといった特徴があります。残尿感、腰痛、性交時痛、外陰部の不快感をともなうこともあります。
軽症のうちは、食べ物によって症状が悪くなることがあります。ワインやチーズ、かんきつ類や炭酸飲料などの酸性が強い食材、唐辛子や刺激の強いスパイス、コーヒーなどカフェインが含まれるものを摂取すると炎症部位への刺激となり、痛みが強まる傾向がみられます。また、ストレスでも症状が悪化するとされています。
治療は抗ヒスタミン薬、抗アレルギー剤、抗うつ剤などの内服、膀胱内に水を入れる「水圧拡張術」や、ジムソという薬剤の膀胱内注入、食事療法などを行います。
血尿、鮮血が出た場合や、繰り返すときは要注意。膀胱炎以外の大きな病気の可能性も
血尿や排尿時の痛みといった膀胱炎でみられる症状は、膀胱の別の病気である場合もあります。また症状が長引いたり、繰り返したりする場合は、全身の病気が原因で膀胱炎が引き起こされていることもあるのです。具体的には以下のようなものがあります。
膀胱がん
膀胱がんは膀胱にできるがんで、主に膀胱の内部を覆う移行上皮という粘膜に発生します。初期の段階に痛みが少ない血尿がみられ、数日から1~2週間続いたのち、急に尿が透明になるという症状を数か月の間隔で繰り返す特徴があります。
また、排尿の終わりごろに赤くなる血尿や、鮮血、血の塊がみられることもあります。がんが進行すると頻尿、排尿時の痛み、残尿感、尿意切迫感といった膀胱炎と似た症状があらわれます。
過活動膀胱
過活動膀胱とは、尿が膀胱に充分たまる前に膀胱が収縮してしまう状態をいいます。頻尿、尿意切迫感、切迫性尿失禁、夜中に何度もトイレのために目が覚めるといった症状がみられます。
40代以上の女性に多く、原因は解明されていませんが、加齢やストレス、骨盤底の障害、GSM(閉経関連尿路生殖器症候群)、肥満や高血圧が関係しているとされています。
治療は、膀胱をリラックスさせたり、過剰な収縮を抑えるための「β3刺激剤」や「抗コリン薬」などを服用します。さらに骨盤底のトレーニングや、フェムゾーン(腟と外陰)の保湿も症状を緩和します。難治性の場合は、膀胱壁へのボトックス注射が健康保険の適応になっています。
神経因性膀胱
神経因性膀胱とは、尿をためたり出したりする機能に障害が起きる状態をいいます。
原因は脳梗塞や脳出血、糖尿病、子宮など婦人科や直腸の手術後、脊髄や背骨のケガなどによって、脳と膀胱の筋肉を結ぶ神経に障害が起きて引き起こされます。
頻尿、尿意切迫感、残尿感、排尿時にりきむといった症状がみられます。治療は尿道をゆるめたり、膀胱を収縮させたりする薬の服用、電気刺激治療、人口尿道括約筋を埋め込む手術などを行います。残尿が多い場合は、自分で導尿して尿をとる間欠自己導尿が指導されます。
慢性膀胱炎(複雑性膀胱炎)
慢性膀胱炎は、尿路や全身に基礎疾患がある膀胱炎です。複雑性膀胱炎ともいわれます。原因となる疾患としては膀胱・尿路内の腫瘍や結石、前立腺肥大症、糖尿病などがあります。女性より男性のほうが多くなります。
症状は急性膀胱炎よりも軽症で、弱い排尿痛、排尿時の不快感などしかみられず、尿の濁りがあるだけで、自覚がない場合もあります。
ただし、症状は、治療を行えば1週間程度で治りますが、慢性膀胱炎の場合は基礎疾患を治療しなければ長く続いたり、再発を繰り返したりします。また、基礎疾患が悪化すると、症状が急激に重くなり、腎盂腎炎などを引き起こし、さらに敗血症や多臓器不全となる可能性もあるため、注意が必要です。
膀胱炎の治療は、抗生物質や漢方薬などを服用
膀胱炎の疑いがあるときは、まず尿検査で白血球反応や潜血反応などを確認します。反応がみられ、膀胱炎と判断された場合は細菌に適した抗生物質や抗菌剤等の抗菌薬を用いて治療を行います。
2、3日程度で症状は改善されますが、この時点では細菌が死滅していない可能性もあるため医師の指導通りに服用を続けます。
その後再度、尿検査をして尿白血球反応が陰性であることを確認して、治療が終了します。自己判断で薬をやめてしまうと再発する原因になるため気を付けましょう。
また、細菌がいなくなり、尿白血球反応が陰性であるにもかかわらず、膀胱炎症状が続く場合は、漢方薬も有効とされています。膀胱の粘膜の機能を高めたり、炎症を鎮めて尿の量を増やしたりする作用のある薬が処方されます。
膀胱炎はなりかけの対策が重要。自分でできる予防、改善法
膀胱炎にかかったら、まずは安静保温が大切です。1~2杯くらい白湯を飲んで、身体を温めて寝てください2~3日しても症状が改善しなければ、病院やクリニックで診察を受けることが大切です。また、すみやかに改善して、再発を予防するためには、日常生活で心がけたい点があります。膀胱炎になりかけたかなと感じたらすぐに行うことが重要です。
水分を多くとる
水分を多くとることで、尿の量を増やし膀胱の細菌を洗い流すと、早く炎症が鎮まります。体を温めて免疫力をあげるため、白湯をおすすめします。マグカップに1~2杯くらい、いつもより多く水分を摂りましょう。
トイレを我慢しない
トイレを我慢すると、膀胱内にいる細菌が増殖して治りにくくなってしまいます。症状がある時期は、こまめにトイレに行き、排尿の時間を長くあけすぎないように気を付けましょう。ただし症状が改善したら飲水量や排尿回数は、もとに戻しましょう。
フェムゾーン(腟と外陰)の清潔を保つ
細菌が尿道に侵入しないように、フェムゾーン(腟と外陰)を清潔に保つようにすることが大切です。体調が悪い時は、排便後は肛門周囲を洗浄したり、生理中のナプキンやおりものシートをこまめに取り換えるようにしましょう。
性行為のあとは排尿を
性行為時、尿道に細菌が侵入することがあります。体調の悪い時は、早めにトイレに行って尿を出しましょう。また、膀胱炎の治療が完了するまで性行為は控えましょう。
疲れやストレスをためない
疲労やストレスは身体の抵抗力を弱める大きな原因です。仕事や家事をペースダウンして、十分な睡眠をとることが、膀胱炎の早期改善、再発防止につながります。
アルコール・刺激物は控える
アルコールや刺激物は炎症を悪化させてしまうため、膀胱炎の時は控えましょう。
お腹を冷やさない
下腹部が冷えると内臓機能が低下して免疫力が低下します。膀胱炎の症状がある時は、全身や下腹部をカイロやひざ掛けで温めるように心がけましょう。
便秘の改善
便秘によって肛門付近に便が停滞すると、大腸菌感染を助長しますので、便秘の改善につとめましょう。
温水洗浄便座の使用を控える
排便後の温水洗浄便座の使用は、痔疾患の症状悪化を防ぐために効果的です。しかし排尿後の頻回の温水洗浄便座使用は、フェムゾーン(腟と外陰)の細菌を尿道に押し込んでしまったり、皮膚のバリア機能を低下されたりしますので、排尿後の温水洗浄便座の使用は控えましょう。
市販薬よりも病院で検査、初期の段階で治療を
膀胱炎になってしまったとき、忙しくて病院に行く時間がないと市販薬で対処することもありますよね。2~3日市販薬を使用しながら、安静加療しても症状が改善しない場合は、病院やクリニックで検査をして、原因となっている細菌に適した抗生物質を用いて治療することが大切です。
難治性の膀胱炎は泌尿器科の受診を
難治性の膀胱炎の治療は基本的に泌尿器科で行われます。内科や婦人科でも診察してもらえますが、症状が悪化したり、長引いたりしている、あるいは繰り返し膀胱炎になるといった場合は、泌尿器科を受診しましょう。
トイレに行くたびに不快な状況が続くとつらいですし、放置すると入院が必要な事態になることもあります。また、膀胱炎以外の病気が隠れているかもしれません。発熱している場合はすぐに、それ以外の症状も、持続する場合は、病院やクリニックで診察を受けて、治療を行いましょう。
参考・出典サイト
執筆・監修ドクター
経歴1989年山形大学医学部卒業
1989年横浜市民病院臨床研修医
1991年横浜市立大学医学部泌尿器科助手
2003年横浜市立大学医学部泌尿器科で女性泌尿器外来担当
2005年4月横浜元町女性医療クリニック・LUNA院長
2007年医療法人LEADING GIRLS理事長
2007年横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学修了
2007年横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学客員准教授
2009年日本大学グローバルビジネス研究科修了
2012年LUNA骨盤底トータルサポートクリニック院長・理事長
2013年横浜市立大学大学院医学部泌尿器病態学客員教授
女性医療クリニックLUNAグループ理事長
(現在に至る)
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