天然痘とは
天然痘(てんねんとう)は非常に感染力の強い感染症です。痘瘡(とうそう)ともよばれます。
以前は世界中で流行し、多くの死者を出しましたが、世界保健機関(WHO)によって世界天然痘根絶計画がおこなわれ、その後、現在まで日本を含む全世界で感染者は発生していません。現在では、生物兵器としての使用が警戒されています。
天然痘に感染すると、潜伏期間を経て高熱が出た後、顔面や頭部を中心に発疹が出現します。
死亡率は約30%で、治癒したとしても発疹の傷痕がひどく残ることがあります。ワクチン接種で予防が可能ですが、重い副反応がおこることも多いため現在はおこなわれていません。
天然痘の症状
天然痘は感染後7~16日間ほどの潜伏期間があります。その後、高熱や全身の痛み、倦怠感などの症状があり、2~3日後に、発疹が出現します。発疹は顔面や頭部を中心に腕や足など全身に広がります。
天然痘の発疹は、赤い発疹からはじまり、水疱(すいほう)をともなうものにかわっていきます。水痘(すいとう)による発疹とよく似ていますが、水痘にはないくぼみのようなものが水疱にあるのが特徴です。
発疹が出るまで感染力はありません。発疹が出現してから1週間ほどがもっとも感染力の強い時期です。
天然痘の診療科目・検査方法
天然痘の原因
天然痘ウイルスは、人から人へ、唾液から広がる飛沫(ひまつ)感染や接触感染で広がります。
動物から人への感染はなく、くしゃみや咳(せき)に含まれたウイルスが付着したものへの接触でもおこります。そのため、ウイルスが付いていればシーツやタオルなどに触れることでも感染します。
天然痘ウイルスには致命率が高いものと低いものがあることがわかっていますが、感染時に区別することは難しいといわれています。
天然痘の予防・治療方法・治療期間
天然痘への効果的な治療法はありません。そのため症状を軽減させるための対症療法をおこないます。鎮痛剤や解熱剤を使用します。また、細菌へ2次的に感染することへの予防として抗菌剤を投与することもあります。
発疹のかさぶたが完全にはがれるまでは感染の可能性があります。そのため、隔離することで感染の拡大を防止する必要があります。もし感染した場合は、ほかの人への感染の恐れがないと診断されるまで原則として入院となります。
天然痘ウイルスに感染した可能性がある場合、3日以内にワクチン接種をおこなうことで発症を予防または重症化を防ぐことが可能とされています。
現在では、予防接種によって感染の可能性はほとんどなくなりました。ワクチン接種による副反応には脳炎や全身性種痘疹になるリスクがあります。
そのため、天然痘が根絶された現在、ワクチン接種を実施している国はありません。
天然痘の治療経過(合併症・後遺症)
天然痘が治癒する期間は2〜3 週間ですが、発疹の跡がひどく残ることがあります。
天然痘による死亡の原因はウイルスが血管に入り全身をめぐるウイルス血症によるものです。
致死率は、毒性の強い大痘瘡(だいとうそう)では20~50%、毒性の弱い小痘瘡(しょうとうそう)では1%以下です。また、出血性の多くは、予後が悪い傾向があります。
また、脳炎、蜂窩織炎(ほうかしきえん)、敗血症、皮膚に感染する丹毒(たんどく)、気管支肺炎、細菌による二次感染、出血がとまりにくくなる出血傾向などの合併症をおこすことがあります。
一度感染すると免疫ができるため、それ以降は生涯、発症することはありません。
天然痘になりやすい年齢や性別
天然痘は、日本では明治時代に、2〜7 万人程度の感染者が出る大流行が6回おこりました。その都度、数万人の死亡者を出しています。
第二次世界大戦後に一度流行した後、ワクチンの導入などによって沈静化に成功しました。国内では1956年以降の発生はなく、世界でも1977年に感染した患者さんが感染した最後の例となりました。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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