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髄膜炎菌感染症とは
髄膜炎菌感染症(ずいまくえんきんかんせんしょう)とは、髄膜炎菌という細菌による病気のことです。
髄膜炎菌はとくに健康に問題のない人の鼻の穴の中にいることもあります。狭い空間や、学生寮、合宿などの集団生活で、せきやくしゃみによって感染し流行することがあります。
風邪に似た症状のため、気づきにくい病気ですが、脳の髄膜に細菌が侵入して髄膜炎をおこした場合は早期に適切な治療を受けないと命にかかわる状態になることもあります。
髄膜炎菌感染症の症状
髄膜炎菌感染症は、2日~10日、平均で4日ほどの潜伏期間があり、その後に発症します。感染しても発症せず保菌者となるのみの人もいます。
多くの場合、発症後12時間以内は発熱や頭痛などの風邪のような症状です。吐き気をもよおすこともあります。
おおむね13~20時間経過すると症状に変化があらわれます。
血液への感染がひろがる敗血症になると、皮膚の下での出血や、発疹があらわれる皮膚への症状がおきます。また、呼吸が苦しくなる、光が異常にまぶしくなるなど普段の風邪とは違った症状がおこり始めます。
そのまま放っておくと、髄膜液まで細菌が侵入し髄膜炎をおこします。頭の部分が硬直する項部硬直をおこし、意識がなくなり、けいれんをおこし、生命にかかわる状態になります。
乳児の場合は、授乳量が減り、鳴き声が弱くなったり、反応が鈍くなったりします。敗血症により赤や紫色の発疹があらわれることがあります。敗血症は重症になると血圧が低下し、出血しやすくなります。
また、腎臓や肝臓などの多くの臓器が機能不全をおこすこともあります。ただし、そういうケースは決して多くはなく、髄膜炎と敗血症が髄膜炎菌感染症の90%以上を占めています。
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髄膜炎菌感染症の原因
髄膜炎菌は、鼻やのどの分泌物が咳やくしゃみによって広がる、飛沫(ひまつ)感染や、直接触れることで感染する接触感染によって広がります。
髄膜炎菌は、症状をおこさずのどや鼻の穴の中に生息する場合があり、このような状態の人は、保菌者やキャリアと呼ばれます。感染の流行があるとキャリアになる人が増えることがあります。
通常はキャリアが感染症になるのではなく、キャリアと濃厚に接触した人が感染します。
髄膜炎菌感染症の予防・治療方法・治療期間
髄膜炎菌感染症は、集中治療室でできるだけ速やかに抗菌薬を点滴で投与します。
進行が早いため、培養検査で原因菌を特定される前から治療を開始する必要があります。ペニシリンやセフェム系の抗菌薬が有効です。
髄膜炎の症状がある場合は、コルチステロイドなどを投与することがあります。これらの薬は脳の損傷を予防するために役立ちます。
髄膜炎菌感染症の治療経過(合併症・後遺症)
髄膜炎菌感染症が未治療の場合、50%の致死率と言われています。
治療しても24~48時間以内に全体の10~15%が髄膜炎によって生命を失います。
また、回復した患者さんの10~20%に難聴や知的障害、手や足の指を失うなどの重い後遺症があります。
日本では、2015年5月から費用を接種者が負担する任意接種で、髄膜炎菌のワクチン接種ができるようになりました。
髄膜炎菌が流行する地域へ旅行や留学する人、新学期などでこれから集団生活を送る人、部活動の合宿前の人などはワクチン接種が推奨されます。
効果は80%以上で、接種から5年を過ぎると効果が失われるため、5年ごとの接種が必要です。
髄膜炎菌感染症になりやすい年齢や性別
髄膜炎菌感染症は、生後6カ月~3歳までの乳幼児と、10代後半に発症のピークがみられます。また、免疫にかかわる病気がある人や、狭い場所で集団生活をするような人に発生する傾向があります。
日本での報告されている発症数は多くありません。2014年の報告数は36例ありました。感染例は少ないかもしれませんが、致死率は高く油断できない感染症です。
執筆・監修ドクター
経歴2007年 近畿大学医学部卒業
2009年 近畿大学医学部救命救急センター入局
2012年 帝京大学医学部高度救命救急センター入局
2014年 帝京大学医学部脳神経外科入局
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