熱中症予防に水の飲みすぎはNG!?過度な水分補給で起こる「水毒」とは?
総務省消防庁は、関東地方が梅雨明けした7月下旬から8月初旬にかけての1週間で、熱中症により搬送された人の数が全国で1万8000人以上にものぼると発表しました。
熱中症の予防としてまず思い浮かぶのは「水分補給」です。しかし、水分の摂りすぎは東洋医学でいう「水毒」という状態になり、身体の不調も招くようです。
この時期、どれくらいの水分摂取量が適量なのでしょうか?
漢方内科 漢方婦人科 鍼灸 石野医院・副院長の石野博嗣先生に水毒の症状や診断・治療について、お話を伺いました。
東洋医学の気・血・水のバランスとは?
水毒について詳しく触れる前に、東洋医学の考え方についてお話します。
東洋医学は、気・血・水をもとに考えられています。
「気」とは精神や神経、「血」は血液循環、「水」は体液や水分代謝を指し、これらが全身を巡っているのですが、そのバランスが崩れたときに身体の不調として何らかの症状が表れます。
それぞれが滞ったときにどのような症状が表れるのか、石野先生にお聞きしました。
「気が滞ると、倦怠感・眠気・抗うつ感などが表れます。
血が滞ると、貧血・肌荒れ・月経異常が表れ、水が滞るとむくみ・だるさ・冷えなどが表れます」
東洋医学でいう水毒とは?
具合が悪くて病院へ行っても「異常なし」とされ、不快な症状だけを抱えたままモヤモヤしたことはありませんか?
西洋医学では病気として診断されない身体の不調を、東洋医学では「未病」といいます。病気にはなっていないものの、何らかの自覚症状があり、将来病気につながる恐れがある状態です。
水毒の原因は?
水毒とは東洋医学でいうところの「水」が滞っている状態で、原因について石野先生は「水分を摂りすぎることによって、水分代謝が悪くなっている状態です」と答えてくれました。
つまり、体内に余分な水分が溜まっている状態が水毒です。
水毒の症状は?
水毒の症状については、このように述べています。
「水毒の主な症状には、疲れやすい、手足がむくむ、冷え症などがあります」
このような症状がある場合には、身体に余分な水分が溜まっているかもしれません。
水毒になりやすい人チェックリスト
ここでは、どんな人が水毒になりやすいのかチェックしてみましょう。
3つ以上当てはまれば、水毒の可能性があります。
水毒の人の診断法
東洋医学の四診について
東洋医学の診断方法に四診というものがありますが、どのような診断法なのか石野先生にお聞きしました。
「顔や舌の色などを診る望診(ぼうしん)と、声や息の状態などを診る聞診(ぶんしん)、腹部や脈を診る問診(もんしん)・切診(せつしん)、この4つの診断法(望診・聞診・問診・切診)を四診といいます」
水毒の診断は舌を診る
水毒の診断は望診のうちの、舌診(ぜっしん)も重要なポイントとなります。
では、健康な人と水毒の人の舌には、どのような違いがあるのでしょうか?
「健康な人の舌は淡いピンク色をしています。水毒の人の舌は、むくんで厚ぼったく、舌の周りに歯形が付いてでこぼこした状態です」
チェックリストで3つ以上当てはまった人は、ぜひ、ご自身の舌の状態を確認してみてください。
水毒によるそのほかの症状
水毒は冷えやむくみを招くということは、前述しました。
そのほかに、水毒によって起こる症状について、石野先生のご意見をお伺いしました。
「冷え症の人は、頭痛持ちの可能性が高くなります。
また、水毒に食べ物や環境といった外側の要因と、虚弱体質のような内側の要因が重なり、皮膚炎や喘息といったアレルギー症状が出ることがあると考えられます」
「水毒が頭痛を招く」とは一概には言えないとのことですが、水毒の症状でもある「冷え」が頭痛の原因にもなっていると考えられるようです。
水毒にも熱中症にもならないための水分量
水毒によるむくみは「水太り」とも呼ばれ、美容にとっても良くないため、適正な水分量と正しい水分の摂り方を知ることが大切です。
しかし、この時期は熱中症対策のためにも水分はしっかり摂らなくてはいけません。
夏場の適正な水分量についてお聞きしました。
「体重50kgの女性でみると、基礎代謝のみで1日に1.5L以上の水分が必要です。
夏場は汗でも代謝されるため、2Lを目安に水分を摂るようにしましょう。
この時期の正しい水分の摂り方としてはこのように述べています。
「1日のうちで、こまめに少しずつ摂取すると効率が良く、おすすめな飲み方と言えます」
猛暑が続くこの時期は、1日2Lを目安にこまめに摂ると良いということです。
暑さから、つい清涼飲料水やビールなどをがぶ飲みしたくなりますが、1日に3Lも4Lも水分を摂らないように気をつけたいものです。
500mlのペットボトルなら、4本が1日の適量だと言えます。
水毒の対策と治療について
さらに、自分でできる対処法から、病院での治療についてお話を伺いました。
自分でできる対処法は?
「身体を温める食品を摂るようにしましょう。
ゴボウ・ニンジン・ショウガ・赤身肉・魚・玄米・シナモンなどは身体を温めます。
また運動面では下半身を動かし、筋肉をつけるようにしましょう」
また、水分代謝を良くするのにおすすめの方法については、「腹部を温めること」だそうです。
その作用については、「内臓機能アップや冷え症改善が期待できる」とも述べています。
「冷えは万病のもと」と昔から言われています。身体に溜まった余分な水分が冷えることで冷え症になるので、身体を温める「温活」が対策としては有効なことが分かりました。
病院での治療は?
冷えやむくみといった症状を不快に思われている方へ、病院を受診するポイントについて石野先生にアドバイスをいただきました。
「思い当たる方は、内科や婦人科など、漢方薬を取り扱っている病院で相談してみましょう」
最後に、水毒による冷えやむくみにはどのような漢方薬が処方されるのかお聞きしました。
「水毒の症状には、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)・五苓散(ごれいさん)が選ばれることが多いです」
東洋医学でお馴染みの漢方薬ですが、どこか遠い存在に感じている方も多いのではないでしょうか?
意外にも、内科や婦人科といった近くのクリニックで取り扱っている場合があるので、問い合わせてみると良いかもしれません。
まとめ
冷えやむくみは女性に多い症状です。
冷えは頭痛にもつながり、むくみは美容の大敵ですが、これらの原因の1つとして水毒が考えられます。
身体を温める「温活」によって改善できる可能性があり、漢方薬も有効なので、内科や婦人科で相談してみましょう。
取材協力:石野医院副院長 石野博嗣先生
執筆・監修ドクター
経歴1999年 日本医科大学産婦人科教室入局 日本医科大学付属病院 産婦人科研修医
2001年 国立横須賀病院(現 横須賀市立うわまち病院) 産婦人科
2002年 東京都保健医療公社 東部地域病院 婦人科
2003年 日本医科大学付属病院 女性診療科・産科 助手代理
2004年 日本医科大学付属第二病院 女性診療科・産科 助手
現在 石野医院の副院長
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