嵌頓包茎
概要
嵌頓包茎とは?
嵌頓包茎(かんとんほうけい)とは、男性器特有の症状です。無理に包茎の状態を解消しようとしたり、なんらかの力が加わったりして亀頭を露出させた際に戻らなくなり、包皮輪(ほうひりん)という包皮の一部が陰茎の亀頭部分を締め付けた状態になることです。特に幼児や児童、思春期の少年にみられます。
出生時の男児はほとんどの場合、亀頭(きとう)が包皮ですっぽりと覆われた状態(包茎)で産まれてきます。包茎はほとんどの人が思春期を迎える前には解消されます。
つまり包皮は本来であれば自然に後退し、亀頭は常時むき出しになります。しかし、無理に包茎状態を解こうとすると、先端が狭まっている包皮(包皮輪、絞扼輪)が亀頭溝に引っかかります。
引っかかって戻らなくなる状態が「嵌頓包茎」です。「嵌頓」とは飛び出したものが「嵌(はま)って戻らない」という意味です。
嵌頓包茎をおこすことで亀頭が圧迫され、血流の滞留、腫れ、炎症などをおこす可能性があります。症状が重いと組織が破壊され、壊死(えし)した状態になることもあります。
こうした嵌頓包茎は子供のみにおこるわけではありません。包茎のまま成長した大人が包茎の状態で亀頭を露出した状態のままにいるだけで、時間が経過し嵌頓包茎になることもあります。このほかにも膀胱鏡や尿道カテーテルを使用した医療行為も原因となることがありますが、亀頭を露出したままにしないようにすれば問題ありません。
治療の第一段階は医師の手により包皮を元に戻す用手的整復法がおこなわれます。これが難しいと判断した場合は外科手術をおこないます。
症状
亀頭の血流が滞る循環障害がおきます。そのため、包皮や亀頭部に腫れやうっ血が生じます。
痛みをともなう場合が多いです。また、血流障害が数日~数週間と長時間続くと陰茎の組織に壊死がおこる可能性もあります。そのため重症化すると、陰茎を切断しないといけないこともあります。
重症化した場合は生殖機能や排尿について、困難になることもあります。
また、腫れによってさらに絞め付けが強くなり、さらに血行が悪くなるという悪循環を繰り返していきます。
診療科目・検査
問診でまずは本人もしくは保護者から発生した状況を聴取します。
実際に診察し、包皮開口部の狭くなった部分によって亀頭溝が締め付けられているか、変色などがおきていないかといったことを確認します。
乳幼児だけでなく思春期の少年にもおこります。そうしたケースでは本人が誰にも申告しないことも多くあります。こうしたことで長期化して重症化することもあるため、保護者がなんらかの異変に気付いた場合は泌尿器科への受診を促す必要があります。
小児、成人ともに、泌尿器科を受診しましょう。
原因
包皮口が狭い状態で、包皮を無理にひっぱって亀頭を出すことでおこります。
亀頭の根元部分にあたる亀頭溝に、包皮輪とよばれる包皮の狭くなっている部位が引っかかります。これをもとに戻さなかったり、もとに戻せなくなったりして嵌頓した状態になります。
腫れや痛みの原因は、亀頭が締め付けられることで炎症をおこしたり、血流が悪くなったりすることによります。
治療方法と治療期間
用手的整復をおこないます。用手的整復とは、手で包皮をもとの位置に戻すこと(整復)です。
腫れが多くなければ医師が用手的整復法をおこなってもとに戻すことが可能です。腫れが強い場合は腫れを抑えてから再び用手整復法を試みます。痛みをともなっている場合は陰茎の根部に麻酔をしたり、仙骨へ麻酔をかけたりすることもあります。
これらで腫れの改善がなければ対穿刺(たいせんし)法をおこないます。穿刺法は腫れた箇所に注射針を刺し、包皮内にたまった液体を抜き出して腫れをおさえる方法です。
どのような治療も短時間で完了します。
用手的整復がうまくいかない、あるいはなんらかの理由でできなかった場合は外科手術をおこないます。陰茎の包皮の背面部分を縦に切り、包皮の締め付けを解除する背面切開法と、左右に切り開く環状切開術をおこない、包茎そのものを改善します。
どちらを選択するかは患者さんの年齢や病状に応じて判断します。手術に要する時間は30分程度です。
治療の展望と予後
生命に関わることはなく、手術する場合も危険度は高くありません。基本的には早期に治療は完了します。
しかし、嵌頓包茎が発生しているにもかかわらず放置していたり、治療が遅れたりすると壊死が進行して将来的に生殖機能を失う可能性もあります。
発症しやすい年代と性差
嵌頓包茎に関する全国的なデータは確認できません。新生児はほぼ全員、包皮が亀頭を包み込んでいる真性包茎の状態です。小学生も約30%が真性包茎とされています。
こうした調査結果から、低年齢男子ほど嵌頓包茎となる可能性が高いということがいえます。