ひこうせいびえん肥厚性鼻炎
肥厚性鼻炎(ひこうせいびえん)とは、鼻炎の病態のひとつです。
鼻の粘膜が腫れて鼻づまりを発症しているものは「肥厚性鼻炎」と診断されます。
肥厚性鼻炎では鼻炎が長く続いたことで粘膜が腫れて厚さが増した状態です。硬くなったり、桑の実のようにデコボコに変化した状態になったりすることもあります。
特に、鼻腔の側壁に付いている、ヒダ状の粘膜(下鼻甲介)でおきやすいとされており、鼻中隔湾曲症になっているとおこりやすいといわれています。肥大した粘膜が、鼻の奥側を占拠してしまい鼻での呼吸を阻害します。
血管収縮作用のある薬(ノルアドレナリン含有の点鼻薬)を用いても、一時的に腫れは引いても治ることはないのも特徴です。
肥厚性鼻炎の症状
主な症状は継続的な炎症による粘膜の肥厚、硬化です。
それにより鼻づまりがおこり、鼻腔を塞いでしまいます。鼻づまりは左右両側で同時におこる場合もあります。
また鼻づまりで、鼻腔の通気性が悪くなり、細菌が増殖しやすくなることで鼻汁が濃化します。加えて鼻づまりによる鼻腔の通気性が悪くなるため、ニオイを感じにくくなることもあります。
就寝時の鼻づまりによる口呼吸により、気道が狭くなるためいびきをかきやすいのも特長です。
肥厚性鼻炎の診療科目・検査方法
目視により鼻の状態を確認し、内視鏡検査で鼻の奥深くまで細かく確認します。
また、鼻水や鼻の患部の細胞を採取し、細菌感染、病態を確認するために生体検査をおこなうこともあります。他にも症状によっては嗅覚異常はないかを調べます。
アレルギー性の鼻炎を疑う場合は採血やアレルゲンを用い、反応を確認するアレルギー検査をおこないます。画像検査については必要に応じておこないます。
鼻閉による症状はさまざまな症状をおこすため、早めに耳鼻いんこう科を受診しましょう。
肥厚性鼻炎の原因
鼻中隔湾曲症にともなって生じることが多くあります。
鼻中隔湾曲症では曲がった鼻中隔の凸部分により鼻粘膜に傷がつきます。それを修復するために細胞が増殖し修復しようとしますが、うまく再生せずに鼻粘膜の肥厚がおこります。
鼻炎でも粘膜を再生しようとして同じメカニズムで肥厚します。
また血管収縮作用のある薬剤を長期間継続して使用すると、血管の周囲の鼻粘膜が虚血状態となり、組織を増殖させ、それを補おうとすることで粘膜が厚みを増す場合もあります。
肥厚性鼻炎の予防・治療方法・治療期間
治療は「下鼻甲介粘膜切除手術」という手術でおこないます。
下鼻甲介粘膜切除手術(かびこうかいねんまくせつじょじゅつ)により、肥大した下鼻甲介を切開し下甲介骨の一部を取り除き、適度な大きさに整えます。
鼻中隔湾曲症を合併している場合、鼻中隔湾曲矯正術を同時に手術する場合もあります。
また、下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術(かびこうかいねんまくれーざーしょうしゃくじゅつ)というレーザーを用いて、腫れた粘膜を焼き収縮させる方法もあります。
下鼻甲介粘膜切除術は、症状の程度によっては入院の必要がないこともあります。しかし、その場合も術後は何度か通院により清掃治療をする必要があります。
また、下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術に要する時間は5〜10分程度であり、日帰りが可能です。
レーザーによる手術は小学校高学年より手術可能です。
特に生活に制限はないが手術後は出血することがありますが、かさぶたが取れる頃には効果が現れるようになります。
肥厚性鼻炎の治療経過(合併症・後遺症)
手術後、数日もすれば鼻炎の症状は軽減されるようになります。
中には、鼻の症状だけではなく、目や喉などの、他の部位の違和感まで改善することもあります。
下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術の場合は、経過後10カ月~2年で粘膜が再生されるため、鼻炎症状は再び生じる可能性があり、手術の効果は永久的ではありません。
ただし症状が悪化した場合再手術可能です。
肥厚性鼻炎になりやすい年齢や性別
中学生以降におこり、成人に多いと考えられます。
鼻の軟骨と骨の構成のバランスの崩れる「鼻中隔湾曲症」との併発や、長期間の薬剤による治療の影響を受けて発症することが多いためです。
執筆・監修ドクター
経歴1988年 聖マリアンナ医科大学 卒業 同耳鼻咽喉科入局
1998年 山梨医科大学 耳鼻咽喉科 入局
2005年 矢崎耳鼻咽喉科 入職
関連する病気
肥厚性鼻炎以外の病気に関する情報を探したい方はこちら。
関連カテゴリ
肥厚性鼻炎に関連するカテゴリはこちら。
関連コラム
「肥厚性鼻炎」に関するコラムはこちら。