じょうだいじょうみゃくしょうこうぐん上大静脈症候群
上大静脈症候群とは?
上大静脈症候群(じょうだいじょうみゃくしょうこうぐん)は上半身から心臓へと戻っていく上大静脈が「詰まる」、なんらかの理由で「圧迫される」等により血流が悪くなることでおこる症状のことを指します。
この症状がおこることでむくみなどから、頭痛や失神発作などさまざまな症状がおこります。
近年では肺がんとの関係が指摘されていますが、大静脈瘤やカテーテル治療などでおこることもあります。
上大静脈症候群はなんらかの原因によっておこる症状の呼び名であり、この症状を治療するためには原因の病気を治療することが重要です。
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- 目次
上大静脈症候群の症状
上大静脈(※1)の圧迫・閉塞のために血液が心臓に戻ることが障害され、頭頸部や上肢に静脈血のうったいが出現する症候群です。
具体的には、顔面・頸部・上肢などに限局性の浮腫、頭痛、チアノーゼ、頸静脈の怒張、起坐呼吸、失神発作などの症状がみられます。
上大静脈症候群の診療科目・検査方法
上大静脈症候群の原因
肺や縦隔(じゅうかく※2)の腫瘍が多くの原因を占めていると言われています。
その他に大動脈瘤(※3)、カテーテル(※4)などの医療機器の挿入も原因となります。
上大静脈症候群の予防・治療方法・治療期間
以下の治療方法があります。
1.原因疾患の治療
・悪性腫瘍の場合…手術、放射線療法、化学療法
・大動脈瘤の場合…手術
2.バイパス手術(※5):人工血管等にて閉塞部にバイパス手術をおこなう。
3.カテーテル治療:バルーン拡張(※6)やステント留置(※7)で、詰まっているところを拡げる。
原因によっては、長期の治療、入院治療が必要になります。
上大静脈症候群の治療経過(合併症・後遺症)
この症候群を治療することは可能です。ただし、原因疾患の治療は個々の疾患の状態に応じて変わります。
進行癌(進行肺がんが多い)の場合は困難な場合が多いです。
上大静脈症候群になりやすい年齢や性別
明らかな罹患者数はデータがありませんが、1978年~83年の6年間かけた調査では肺がん患者の12.3%にこの病気の合併がみられます。
発症する年代や性差の傾向は原因によって様々です。
参考・出典サイト
編集部脚注
※1 上大静脈
上大静脈は、「右心房につながる2本の大静脈のうちの1つ」です。
全身をめぐった静脈血は、心臓の右心房に戻ってきます。
このとき、「上半身から戻ってくる静脈血」と「下半身から戻ってくる静脈血」は別の大静脈から右心房に戻ります。
上半身からの静脈血は「上大静脈」、下半身からの静脈血は「下大静脈」を通って心臓に返ってきます。
※2 縦隔(じゅうかく)
縦隔は、「左右の肺の間に存在する空間」です。
左右の肺のほか、背面は背骨、前面は胸骨、下は横隔膜に囲まれています。
心臓、食道、気管などは、縦隔の中に収まっています。
※3 大動脈瘤
大動脈瘤は、「大動脈の一部が膨らんで、こぶ状になること」を指します。
大動脈には、非常に高い血圧がかかっています。
そのため、大動脈壁の一部が弱っていると、その部分が風船のように膨らむことがあります。
大動脈の膨らんだ箇所を「大動脈瘤」と呼びます。
大動脈瘤は、時間の経過とともに大きく膨らんでいく傾向があります。
内部には、常に高い圧力(血圧)がかかり続けるからです。
ずっと膨らみ続けると、最終的には破裂する恐れもあります。
大動脈瘤破裂を起こした場合の救命率は、10~20%程度にとどまります。
※4 カテーテル
カテーテルは、「直径2mm程度、長さ1m程度の管」です。
心臓カテーテルは、心臓内、大動脈、冠動脈(心筋に酸素・栄養を運ぶ血管)などを検査・手術するときに使います。
手首、肘(ひじ)、太ももの動脈からカテーテルを挿入し、血管内を心臓付近まで進めます。
カテーテル治療では胸部を切開しなくて済むので、患者さんの負担が軽くなります。
※5 バイパス手術
バイパス手術は、「血管に別のルートをつくり出す手術」です。
たとえば、血管が「A→B→C」と流れているとき、Bの箇所が詰まったと考えてください。
Bの箇所が詰まったままでは、Cに血液が流れません。
そこで、外科手術をおこない、Bを経由することなく「A→C」につながるルートをつくります。
※6 バルーン拡張
バルーン拡張は、「カテーテルを用いた血管手術の1つ」です。
まず、カテーテルを「血管が閉塞・狭窄している場所」まで進めます。
カテーテルの先端が狭窄箇所に到達したら、付属のバルーン(風船)を膨らませて血管を広げます。
※7 ステント留置
ステント留置は、「カテーテルを用いて、血管の狭窄を改善する手術方法」です。
カテーテルを血管内に挿入し、「閉塞・狭窄部位」まで進めます。
狭窄したところを広げたあと、ステント(網状になった金属製の筒)を設置します。
ステントが血管を支える骨組の役割を果たすので、再び狭窄する確率が低くなります。
執筆・監修ドクター
経歴2005年 日本医科大学医学部医学科 卒業
横浜市立市民病院
日本医科大学医学部付属病院
2008年 国際親善総合病院内科
2009年 国家公務員共済組合連合会 虎の門病院循環器センター内科
2011年 湘南鎌倉総合病院 心臓センター循環器科
2014年 スイス留学・チューリッヒ大学病院循環器内科
2015年 日本医科大学医学部付属病院 循環器内科
医療法人笹野台内科 院長
2019年 5月より二俣川内科・循環器内科クリニック 院長
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