30~40代の女性に多い!「腸結核」の症状や治療法とは?手術は必要?
『結核』という病名を、ほとんどの人はどこかで耳にしたことがあるのではないでしょうか。一方、『腸結核』を聞いたことがある人はあまりいないでしょう。
一般的にいわれる結核とは、『肺結核』のことです。それと同じ結核菌が腸に感染すると、腸結核になります。
この記事では、腸結核の症状や原因について解説します。
腸結核について
1.肺以外の場所で起こる「肺外結核」のひとつ
『腸結核』は、肺以外の場所で結核菌が炎症を起こす『肺外結核』のひとつです。
肺外結核のなかで、腸に結核菌が感染、増殖したものを腸結核といいます。肺外結核の約3.7%が腸結核です。
他には、『脳』や『リンパ節』、『気管支』、『骨』、『腎臓』などで肺外結核が起こります。
2. そもそも、肺結核とは?
風邪に似た症状が続く病気
『肺結核』は、激しい咳や熱、たんなど風邪に似た症状が長期間続き、悪化すると血痰や息切れ、体重減少などを引き起こす病気です。
肺結核の起こるしくみ
肺結核は、活動性肺結核(治療を必要とする状態の肺結核)にかかっている患者さんの咳によって、空気中に漂った結核菌を吸い込むことでかかります。これを『空気感染』といいます。
肺に吸い込まれた結核菌は、肺胞へと達します。通常であれば、白血球の一種である 『マクロファージ』が殺菌をしますが、何らかの事情で殺菌できないと、マクロファージ内で増殖して病巣となります。これが肺結核を起こす仕組みです。
3.二次感染として腸結核にかかる
肺結核の炎症は、肺の中だけで終わらないこともあります。結核菌が、リンパ液や血液、気管支、腸管などを通ってさまざまな臓器に感染し、増殖して二次感染を引き起こします。
腸に結核菌が感染すると、腸粘膜が炎症を起こして傷をつくります。この傷によって出来るのが『潰瘍(かいよう)』です。そして、周囲にも炎症が広がっていきます。
発生する頻度の高い部位(『好発部位』)は、小腸と大腸とをつなぐ『回盲部(かいもうぶ)』です。そこに炎症が起こります。
4.かかりやすいのは30~40代の女性!
『結核』というとお年寄りのイメージが強くはないですか?
実際に、結核の患者の多くはお年寄りです。お年寄りや幼い子ども、疲労やストレスの溜まっている人、他の病気にかかっている人など、体力や抵抗力が落ちているとかかりやすくなります。
しかし、腸結核は30~40代の女性にかかりやすい傾向にあります。ただし、腸結核も同様に、抵抗力が低い人がかかりやすくなります。
腸結核にかかる原因と症状
1.腸結核にかかる原因
先に解説したように、肺やその他の臓器からの二次感染として、腸に結核菌が感染、増殖することで腸結核にかかります。
また、それ以外にも、結核菌を含むたんを飲み込むことで、かかることがあります。
それからごくまれに、肺結核など他の結核にかかっていなくても、腸結核にかかることがあります 。口から入った結核菌が、直接腸に感染することがその原因です。
2-2.腸結核の症状
ほとんどの人に起こる症状が『右下腹部の腹痛』です。
その他には、『下痢』(下痢と便秘を繰り返すこともある)や、『発熱』、『食欲不振』『体重の減少』、『易疲労感(いひろうかん)』(ちょっとしたことですぐ疲れる症状) などが起こります。
さらに放置し、症状が進行すると、潰瘍部分が出血し、『血便』や『嘔吐』などの症状があらわれます。また、合併症を発症することもあります。
2-3.腸結核が引き起こす合併症
腸閉塞(ちょうへいそく)
腸が狭くなり、腸の内容物が停滞し、通過できなくなる病気です。
腸穿孔(ちょうせんこう)
腸に穴が空く病気です。
栄養吸収不良
腸閉塞や腸穿孔の状態によって、栄養吸収不良になることもあります。
腸結核の検査や治療方法
1.腸結核の検査方法について
血液検査
結核菌の感染や、炎症の有無を調べます。
内視鏡検査
腸内の状態を調べます。
内視鏡検査だけだと、症状や発生部位の似ている『クローン病』と間違えやすいため、加えて、結核菌への感染の有無を調べる検査も行います。
便や痰から菌を確認する検査
便や痰を調べて、菌の有無を確認します。『生検組織』や糞便での『結核菌培養』『PCR法』(結核菌のDNAを増やし判断する検査)などがこれに当たります。
CTなどの画像検査
CTなどを使用した画像検査を行うこともあります。
しかし、内視鏡に比べて、クローン病やその他の腸疾患との識別がより難しくなります。
肺結核の有無を調べる検査
『胸部X線診断』や『ツベルクリン反応』を診ることで、肺結核の有無についても調べます。
2.腸結核の治療方法について
内服薬で結核菌を殺菌する
腸内の結核菌を殺菌する『抗結核薬』を服用します。
複数の薬剤を使いながら治療をおこないます。薬は4種を2ヶ月服用して、その後2種を4ヶ月服用する、計6ヶ月が一般的な治療期間です。
重症な場合は手術をすることも
内服薬を服用することで治るケースがほとんどですが、まれに外科的療法が必要なこともあります。
合併症を引き起こしている、重症化しているなどの場合は、腸を取り除く手術が検討されます。
まとめ
「結核は昔の病気」と思っている人もいるかもしれません。しかし近年でも毎年2万人近くが発症し、そのうち1割は結核によって命を落としています。
結核は肺だけの病気ではありません。全身の病気なのです。
結核になったら、二次感染を起こさないようにしっかりと治療することが大切です。長い治療にはなりますが、主治医と相談しながら、完治するまで根気よく通院しましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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