おたふく風邪の予防接種はいつ受ける?大人も受けられる?
おたふく風邪を予防するワクチンは1歳以上の子どもが、小児科や内科などで受けることができます。
年齢があがると症状が重くなるため、早めに予防することで重症化や重い後遺症を防ぐ可能性が高くなります。
現在、日本でのおたふく風邪ワクチンは自身で費用を負担する任意接種で受けることができます。
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おたふく風邪の予防接種
おたふく風邪は子どもがかかりやすい病気のひとつです。ムンプスウイルスによる感染症で、昔からよく知られています。
正式名称は流行性耳下腺炎(りゅうこうせいじかせんえん)といい、ムンプスという呼び名もよく使われています。
かかってしまうと有効な治療法はありません。しかし、予防接種を受けることで、高い確率で感染を防ぐことができます。
弱毒化したウイルスにより体内で免疫をつくる
おたふく風邪は一度かかると免疫が体内でつくられます。そのため、一度感染して免疫がつくられると再びかかることはありません。
おたふく風邪の予防接種に使用するワクチンもこの原理を使って、感染を防いでいます。
おたふく風邪のワクチンは、「弱毒化」した生ワクチンを注射して体内に接種します。
弱毒化とはウイルスの感染力を弱めておくことで、弱毒化すると感染力はほとんどなくなります。生ワクチンは強い免疫力がつくられます。
日本では2019年の時点で星野株と鳥居株という2種類のワクチンが使われています。
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接種のメリットとデメリット
日本で使用されているおたふく風邪ワクチンは高い確率で免疫を獲得できます。
厚生労働省が生後12~20か月の子どもの抗体を調べたところ、92~100%に抗体がつくられていました。
また、星野株ワクチンの接種をおこなった乳幼児241人を追跡し、おたふく風邪の発症をどの程度防いでいたのか調べたところ、接種後に発症したのは1例だけでした。
では免疫を獲得する以外で、おたふく風邪の予防接種を受けるメリットとデメリットはどんなものがあるのでしょうか。
比較的予防効果が高い
予防接種を受けるメリットは、なんといってもおたふく風邪にかからなくて済むということです。
よくある病気ですが年齢が高くなるほど、発症するとその症状は重症化しやすい傾向があります。
低年齢でワクチンを接種し抗体をつくることでこうしたリスクを避けることができます。
また、おたふく風邪による症状の多くは回復しますが、なかには難聴などの後遺症となることがあります。予防接種を受けることで、後遺症を防ぐ可能性が高くなります。
副反応がおこることも
ワクチンを接種することのデメリットは、副反応がおこる可能性があることです。副反応は、薬での副作用と同じようなもので、体によくない反応がおこることをいいます。
おたふく風邪ワクチンに限らず、どのワクチンでもおこる可能性がある副反応としてアナフィラキシーがあります。
ワクチン接種後、30分以内におこることが多く、じんましんや呼吸困難をおこしたり、急激に血圧が低下するショック症状をおこしたりすることがあります。
早急に対応する必要があるので、接種後30分程度は接種をおこなった医療機関内で待機することが推奨されています。
ただし、おたふく風邪ワクチンによるアナフィラキシーがおこる可能性は0.1%未満とごくまれです。
おたふく風邪ワクチンにかかわるものとしては無菌性髄膜炎を発症することがあります。
日本で使用しているワクチンでは1,200人に1人程度で発生しています。ほかにおこる可能性のある副反応として難聴や精巣炎にかかることがあります。頻度は0.1~5%未満です。
注射した箇所が赤く腫れることがあります。これは多くの場合2~3日で消えてなくなります。
また、おたふく風邪の症状があらわれることがあります。しかし、ほとんどの場合は通常の感染よりも症状は弱く、1日程度で症状がなくなります。
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費用は5,000円ほど、接種回数は2回が推奨
おたふく風邪の予防接種は、2020年2月の時点で、費用を自己負担でおこなう任意接種でおこなわれています。
以前日本では麻疹(ましん)、風疹(ふうしん)と混合したMMRワクチンとして公費で負担する定期接種がおこなわれていました。海外ではこのMMRが主流となっています。
また定期接種を検討する動きもありますが、今のところ予防接種をおこなう医療機関に費用を払って受けることになります。
費用はだいたい5,000円程度ですが、医療機関によって違いがあります。そのため、実際の金額は予防接種をおこなう医療機関に確認しましょう。
また自治体によっては費用の補助を実施しているところもあります。接種する前にお住まいの地域の保健所などに問い合わせてみましょう。
予防接種は1歳から接種できます。早い段階で接種することで、副反応でおこる無菌性髄膜炎がおこりにくいことがわかっています。
特に日本では規定されていませんが、1回目の接種から小学校に入学する前ぐらいに2回目のワクチン接種をおこなうことで免疫がしっかりできると考えられています。
そのため、海外では2回接種を標準にしている国も多くあります。日本ではMRワクチンと同時期に接種することを推奨しています。
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予防接種は大人も可能、妊娠中は受けられない
おたふく風邪の免疫がないまま成人した場合も予防接種を受けることができます。ただし、年齢が高くなると副反応が出やすくなります。
おたふく風邪の症状である耳の下が腫れる耳下腺腫脹(じかせんしゅちょう)がワクチン接種でおこった例を調べたところ、1歳では0.73%ほどに発生しましたが7~10歳では2.58%と高くなっていました。
大人でおたふく風邪の予防接種を受けたほうがよいと考えられるケースとしては、おたふく風邪になりやすい年齢の子どもが家族にいる場合や、複数の子どもと触れ合う機会が多い学校の教員や保育士などの職業についている場合などです。
おたふく風邪にかかったか、あるいは予防接種を受けたのかわからない場合は実際に免疫があるのか抗体検査を受けて調べることも可能です。
抗体検査は採血でおこないます。抗体検査も費用は自己負担で、医療機関によってそれぞれ変わります。だいたいは5,000円前後の金額で受けることができます。
実際の金額については抗体検査を受ける医療機関に確認しましょう。
ただし、生ワクチンのため、妊娠中の場合は胎児に影響する可能性があります。そのため妊娠中の女性は原則受けることができません。
また、妊娠する可能性がある場合も接種を控えましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2003年 関西医科大学 卒業
2003年 神戸大学医学部付属病院小児科入局
2004年 六甲アイランド病院小児科
2005年 愛仁会千船病院小児科
2007年 神戸大学医学部附属病院小児科 医員/神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻(博士課程)小児科学 入学
2010年 神戸大学医学部附属病院こども急性疾患学講座 特命助教
2011年 神戸大学大学院医学系研究科医科学専攻(博士課程)小児科学 卒業
2012年 兵庫県立こども病院小児科
2012年 愛仁会高槻病院小児科医長 2017年より小児科部長
2018年 はしむら小児科 開院
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