褥瘡とは
褥瘡(じょくそう)は、皮膚の同じ部分に圧がかかり続けることでおこります。
私たちは、普段長時間同じ姿勢でいても、無意識のうちに体を動かして、皮膚の同じ部分に圧がかかり続けないようにしています。しかし、寝たきりになり自力で体を動かすことができない状態になると、同じ場所に圧がかかり続け、褥瘡が発生しやすくなります。
健康に問題がなくても、事故などで入院し、同じ体勢を続けていることで発生することもあります。褥瘡にならないためには、除圧マットの使用や、介護者による定期的な体位変換、栄養補給、スキンケアなどをおこない予防することが大切です。
褥瘡の症状
褥瘡の症状は、最初は皮膚が赤くなるだけですが、やがて水ぶくれや潰瘍が生じます。
褥瘡は深さを基準として、以下のⅠ~Ⅳ段階のステージに分類されます。
Ⅰ:この段階では圧迫状態を取りのぞいても発赤が30分以上消えません。組織は破壊されておらず、比較的軽度な状態です。皮膚が再生する可能性もあります。
Ⅱ:潰瘍が表皮、または真皮に達しています。皮膚の表面が赤くなり、水疱やびらんが見られます。この段階ではまだ壊死はみられません。
Ⅲ:皮膚の下にある皮下組織まで潰瘍が達している状態です。浸出液が確認され、壊死もみられます。
Ⅳ:潰瘍が筋肉や骨にまで達している状態です。皮膚が黒く見えます。浸出液も確認されます。
褥瘡の診療科目・検査方法
初期の褥瘡を確かめる方法に指押し法があります。この方法は皮膚が赤くなっている部分を、人差し指で3秒ほど軽く押し、皮膚の色が変化するかを確認します。押したときに白くなった後、再び赤くなる場合は心配ありません。ただ、押したときに赤みが変化しない場合は、褥瘡の可能性があります。
入院中であれば医師や看護師に相談しましょう。自宅でおこった場合は皮膚科を受診しますが、寝たきりなどの場合も主治医に相談してください。
医療機関では褥瘡の状態を判定します。「DESIGN」という褥瘡を評価するための基準があり、判定に使用されることがあります。
- Depth(深さ)
- Exudate(滲出液)
- Size(大きさ)
- Inflammation/Infection(炎症/感染)
- Granulation tissue(肉芽組織)
- Necrotic tissue(壊死組織)
この頭文字をとって「DESING」とし、この6点の評価にPocket(ポケット)を加えて状態を確認します。こうした評価にあわせて治療法を選択します。
褥瘡の原因
褥瘡は、皮膚の毛細血管が圧迫されて血流が悪くなる虚血状態になると、組織が壊死(えし)して皮膚が赤くなる発赤やただれがおこります。その後、傷になります。
褥瘡はいくつかの要因が重なり合って発生します。
主な要因は以下のようなことです。
- 皮膚の摩擦
- 皮膚の乾燥
- 汗や失禁によって皮膚が汚れている
- 薬の服用
- 自力で体を動かすことができない状態
栄養状態が悪いと褥瘡が発生するリスクが高くなります。血清アルブミン値が3g/dl以下、ヘモグロビン値が11g/dl以下になっている場合は褥瘡がおこる可能性があるため、注意が必要な状態です。
褥瘡の予防・治療方法・治療期間
褥瘡の治療方法には保存的治療と手術があります。
保存的治療では外用薬やドレッシング剤を使用します。ドレッシング剤とは傷を覆うための部材で、褥瘡ができている創部(そうぶ)への刺激を防ぐ目的で使用されます。
いずれもさまざまな種類があるため、褥瘡の深さや浸出液の量によって使い分けます。
また、創部とその周囲をきれいな状態にするため、生理食塩水や水道水で洗浄します。
ドレッシング剤で覆った創部の空気を抜いて圧をかける陰圧閉鎖療法をおこなうこともあります。また、電気や超音波で褥瘡を刺激する電気刺激療法や超音波療法などの物理療法をもちいることがあります。
手術には、デブリードマンと再建術の2つがあります。デブリードマンは壊死している組織を、メスなどで切り取る方法です。壊死した組織は治療が非常に困難であるため、デブリードマンをおこないます。
再建術は患者自身の皮膚を使って、傷をとじる手術です。保存的治療では改善がみられない場合や、傷が骨にまで達している場合などにおこなわれます。
治療期間は、褥瘡の状態によって異なります。一般的には数週間はかかるといわれています。
褥瘡の治療経過(合併症・後遺症)
褥瘡の物理療法は現段階では治療できるという根拠が十分ではありません。そのため今後も研究されていくと考えられています。
褥瘡の状態に適した治療をおこなえば、比較的予後は良好です。しかし、放置していると創部から感染をおこし、治療が困難になります。
褥瘡になりやすい年齢や性別
2016年におこなわれた褥瘡についての調査では、一般病院で褥瘡があった人は2.46%、一般病院の中でも療養設備のある病院では2.81%でした。訪問看護ステーションでは、1.93%であり、2013年の調査と比較すると減少傾向であると報告されています。
性差についての傾向は確認できません。高齢者に発生しやすいといわれています。
執筆・監修ドクター
経歴北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
を経て横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長 就任
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