今回は、都立広尾病院の副院長を努める前田義治先生に、都立病院としての役割や、地域医療連携推進の取り組みなどについて伺いました。
都立広尾病院は救急医療・災害医療・島しょ医療・外国人医療などの行政的医療に加え、渋谷区を中心とする地域住民の健康を支える役目も果たすなど、行政的医療・地域医療の2つの顔を持ち合わせています。
病院の立て替えや、新設備の導入など、今後の展望なども併せてお話いただきました。
目次
救急医療・災害医療・島しょ医療・外国人医療に加えて地域医療を支える役割も担う
広尾病院が都立病院として担っている役割は大きく4つあります。「救急医療」「災害医療」「島しょ医療」「外国人医療」などの行政的医療です。
「救急医療」では、入院の必要のない「1次救急」から、入院治療・緊急手術を要する「2次救急」、重症・重篤患者さんを治療する「3次救急」まで受け入れ可能というキャパシティの広さが強みです。16の診療科で当直体制を整えており、24時間365日対応しています。
さまざまな患者さんがいらっしゃいますが、特に多いのが、当院で力を入れている「循環器疾患」や「脳血管疾患」、「外傷・熱傷」でお越しの方です。
一例として、「狭心症」「心筋梗塞」に対する「経皮的冠動脈インターベンション(PCI)」という治療があります。これは、血管の狭くなった部分を広げて、血液の流れをスムーズにする治療法なのですが、多くの件数を手がけています。
「災害医療」については、区部唯一の「基幹災害拠点病院」として、災害派遣医療チーム(DMAT)の派遣や、都内の医療機関に対する防災訓練支援などを行っています。
「減災カレンダー」を作成するなど、情報発信に力を入れていることも特徴です。
「島しょ医療」においては、島しょにお住いであることがハンデとならないようにするのが、当院の役割です。24時間365日態勢で患者さんを受け入れており、年間約160~170件は、当院の医師がヘリコプターに同乗し島しょへ向かっており、島しょからの救急患者さんの8割を当院で受け入れております。
また、入院患者さんだけでなく、定期的に通院されている方もいらっしゃいます。
「島しょ医療研究会」やカンファレンスを通じて、島しょ部の先生方との連携を取ることも大切です。
「外国人医療」の分野ですが、医療コーディネーター1名、医療通訳4名、院内通訳3名を擁していますので、外国人の方も気兼ねなくご来院いただけるかと思います。
都立病院では広尾病院が初めてとなる「外国人患者受入れ医療機関認証制度(JMIP)」を取得済みです。
広尾病院というと、これまでは行政的医療のイメ-ジがありましたが、今回の企画で都立病院として地域住民の方にも身近な病院であることをお知らせしたいと思います。
地域の医療機関とホットラインを構築し、「断らない医療」で地域医療に貢献する
2012年に「連携医療機関制度」を導入して以降、地域の医院を訪問して当院とのホットラインを作る、いわゆる「地域医療連携」に積極的に取り組んでいます。
現在、病院や医院等593施設と連携を築いています。
連携の具体例としては、まず「連携救急ホットライン」が挙げられます。
急を要する患者さんが地域の医院にいらした場合、医院の先生から当院の救急外来にいつでもご連絡いただける仕組みです。
どんな疾患でも24時間いつでも連絡・相談いただけます。
その他にも「ハートライン」、「脳卒中ホットライン」、「小児連携ホットライン」などを設け、“断らない”をモットーに在宅や施設からの急変・増悪も含めた地域の患者さんの受入れに努めています。
また、定期的に当院で「症例検討会」を開催し、医師会の会合にも出席するなど、地域の医院の先生方と「直接会って話す」ことを大切にしています。
さらにCT、MRI等の共同利用、消化管内視鏡の当日対応等さまざまな医療連携活動を進めてきた結果、ご紹介頂く患者さんはここ数年10,000件を超えております。
ただし、「どんな病気でも大きい病院で診てもらいたい」という患者さんが多くいらした場合、本当に当院で診るべき急患さんを受け入れることができないかもしれません。
このため、「まずは、かかりつけの先生に診てもらってくださいね。必要に応じて、その先生から当院へご紹介いただけるよう連携が取れていますよ」という「二人主治医制」についても、リーフレットや電光掲示板で患者さんに周知するようにしています。
病院・医師と患者さんをつなぐ「患者支援センター」
当院の患者支援センターには、患者さん・ご家族をサポートする医療ソーシャルワーカー(MSW)と看護師、薬剤師、連携担当事務職が在籍しており、医療福祉相談、入院サポート、転院・退院サポート、在宅支援、地域の医院の先生方や患者さんとのやり取りなどを多職種で幅広く対応しています。
連携登録医療機関などからの、紹介・逆紹介時の患者さんの情報のやりとりなどの業務を推進する一方で、患者さん・ご家族の様々な疑問、不安に対して職員が協働して対応に当たり、患者さんが安心して地域生活へ復帰できるよう支援しています。
今後は栄養士など他の職種も含めたセンター機能の強化を行い、入院中のみでなく入院前から退院後まで、今以上に細やかな患者サポートが出来る体制を整えたいと考えています。
また、患者さんへの円滑な支援のためには地域との連携は不可欠です。近隣の医院の看護師や、訪問看護ステーション等の方を対象として、セミナーを開くなど、「顔の見える関係」を大切にし、積極的に情報交換を行う場を設けるよう努めています。
今後の展望―約10年後のリニューアルオープンに向けて、地域医療連携を強く推進
現在、約10年後を予定している新病院グランドオープンに向けて、立て替えの準備を進めています。今日お話した役割をしっかり果たしつつ、日常診療・災害医療の機能強化や、患者サポートセンターの拡充などを進め、さらに地域医療に貢献できるよう、体勢を整えているところです。
また、放射線治療装置が今年度更新されるので、「がん治療」の幅がかなり広がります。手術、抗がん剤を含めたいわゆる集学的治療が可能となり、今後はセンタ-病院との連携をより強化することによって地元で安心して高度な治療を受けていただけるようになります。
引き続き、地域の医療機関・介護福祉施設との連携をより一層深め、地域の中での役割をさらに高めていきたいと考えております。
東京都立広尾病院の基本情報
施設内容[診療科目]
救急診療科 血液内科 糖尿病内分泌科 消化器内科 腎臓内科 脳神経内科 感染症内科 総合診療科 呼吸器内科 呼吸器外科 循環器内科 循環器外科 神経内科 小児科 外科 心臓血管外科 整形外科 リハビリテーション科 脳神経外科 形成外科 皮膚科 泌尿器科 産婦人科 眼科 耳鼻いんこう科 診療放射線科 歯科・口腔外科 麻酔科 内視鏡科 検査科・輸血科・病理診断科
[所在地]東京都渋谷区恵比寿2丁目34-10
[アクセス]日比谷線 広尾駅 徒歩7分
[診療受付時間]
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9:00-17:00 | ● | ● | ● | ● | ● | – | – | – |
9:00-11:30 | – | – | – | – | – | ● | – | – |
【救急】
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