順天堂大学医学部附属浦安病院は、診療、教育、研究という3本柱を軸に浦安市とその周辺住民の健やかな暮らしを支え、地域医療の発展に貢献しています。
先進医療を提供する地域の基幹病院としての役割に加え、医学を志す学生を育てる教育機関、臨床・研究をおこなう大学病院としての側面もあわせ持っています。
院長を務める吉田幸洋先生に救急診療をはじめとした数々の取り組みや地域医療連携を進めるうえで注力していること、さらには今後の展望などについて語ってもらいました。
目次
ラピッドカー導入で救命率の向上も
地域の皆さまの健康向上に努める基幹病院として、多くの診療科目を設けているのはもちろん、救命救急センター、地域周産期母子医療センターをはじめとしたチーム医療センターも多数併設しています。
特に力を入れている一つに救急プライマリケアセンターがあります。
これは軽症の患者さんを担当する一次救急から、災害事故や交通事故の多発外傷など一刻を争うような重症患者さんの治療にあたる三次救急までを24時間体制で受け入れているセンターです。
また、こども救急センターを開設し、お子さんの受け入れ体制も整えています。
地域の小児科の先生にも協力してもらって、救急対応を要するお子さんの診療にあたっています。
こちらで気を配っていることは、とにかくお子さんに落ち着いてもらう雰囲気づくりです。
知らない場所に連れて来られて、ただでさえ怖い思いをしている子に、ぬいぐるみやかわいい飾り付けなどを用意して、心を落ち着かせられるよう努めています。
さらにラピッドレスポンスカーを導入し、救急システムの向上にも貢献しています。119番通報があった際に、現場での処置が必要と判断された場合、救命士、医師、看護師が医療機器を携え、救急車両で現場に駆けつけるシステムです。
ベーシックな救命救急処置は救急隊員でもおこなうことができるのですが、さらに精密な処置、医療行為が現場で必要となった場合の救命率を上げるために活動しています。
浦安市とタッグを組み、ショートステイで産後のお母さんを見守る
地域周産期母子医療センターでの取り組みにも注目していただければと思います。
早産未熟児、または妊娠高血圧症候群といった総合周産期母子医療センターが扱うような患者さんを受け入れているのがこのセンターの特色です。
さらにNICU(新生児集中治療室)9床、GCU(新生児治療回復室)15床、MFICU(母体胎児集中治療室)3床を用意し、母子の安全・安心な妊娠出産をサポートしています。
特にMFICUに関しては地域周産期医療センターでは設置する必要はないのですが、地域で受け入れ可能な医院が少ないことと、急患の妊婦さんを助けたいという医師の強い要望もあり3室設けました。
浦安市在住の方を対象とした宿泊型産後ケアも好評を得ています。
浦安市と連携して、産後のお母さんの負担を軽減させる取り組みです。
専用の病室で母体、乳児のケアを手掛けるのに加え、メンタル面を含めたアドバイスを助産師さんがおこなってくれるので、マタニティブルーを防ぐ役割も担っています。
昨年からはご両親が浦安市民であれば、市外にお住まいの方でも里帰り出産で利用できるようになりました。
二人の主治医で地域医療のネットワークを円滑に回す
地域医療連携を円滑に進めるために二人かかりつけ主治医制で、地域の診療所とのネットワーク化を図っています。
当院のような大学病院では急性期の患者さんを診療し、症状が落ち着いてきたら地域のかかりつけの医院で診てもらう、要は私どものようなところと地域の先生(ホームドクター)、二人の主治医を持ってくださいという取り組みです。
その際によく勘違いされるのが、地域のホームドクターが内科だった場合は、内科宛てにしか紹介してもらえないと思い込んでいる方が多いということです。
決してそんなことはなくて、何科宛てにでも紹介状を出してもらうことは可能です。
内科のかかりつけの先生から例えば当院の整形外科にご紹介いただけますし、CTやMRIだけ撮ってほしい場合も連絡さえいただければ対応できます。
ここのところのアナウンスをもっと広くおこなっていきたいと考えています。
また、診療所の先生たちと連携を深めるうえでディスカッションする機会を多く設けるようにしています。
私ども主催でさまざまな研究会、地域連携フォーラムを開き、直接、先生方と意見を出し合い地域連携の向上に役立てています。
当院より、地域連携施設の登録証をお渡しして、それを待合室に掲示してもらう取り組みもおこなっています。
そうすることで症状が悪化したときでも「順天堂大学浦安病院で診てもらえる」と患者さんとの間に信頼関係を築けるだけでなく、逆に検査や診療が終わった後には患者さんを元の診療所に戻すこともできるので、連携医療を円滑に回すことにもつなげています。
現在、地域医療連携の紹介率は80%、逆紹介率は70%くらいに達しています。
これからもお互いの顔の見える連携システムを目指していきたいと思っています。
スポーツ医学を中心としたチーム医療を開設。ゲノム医療でのがん治療にも乗り出す
今後の展望としていくつか考えていることはあるのですが、まずあげられるのが予防医学です。
浦安市周辺の住民も高齢化が進んできておりますので、脳血管疾患に対処する脳ドック、人間ドックなどがん検診に力を入れていく予定です。
近隣には大きな企業、ホテルも多数ありますので、企業検診も担っていければと思っております。
また、順天堂大学にスポーツ健康科学部を設けている関係で、スポーツ医学への深い知見を持つスタッフも多数在籍しています。
代表的な例をあげますとプロ野球チームのメディカル面でのサポートをおこなっており、新人選手のメディカルチェックや、チームに帯同してキャンプに参加するなど、当院のスタッフが幅広い分野で活躍しています。
そのほかにも選手の専属トレーナー、地元のサッカーチームのチームドクターなど活動の種類は多岐にわたります。
その人材などを集めて女性選手の診療を行う女性アスリート外来や、スポーツ医学センター、さらには先ほど述べた予防医学に取り組む健康推進センターの2つを2020年4月から新たに開設しました。
また、がんゲノム医療連携病院にも指定されましたので、ゲノム医療を取り入れたがん治療にもこれからは乗り出していければと考えております。
まとめ
「お互いの顔が見える連携医療を目指す」と語ってくれた院長の吉田先生。
ラピッドカーの導入、宿泊型産後ケア、二人主治医制などさまざまな取り組みから患者さんの利便性を向上させようとする姿勢がうかがえた取材でした。
近隣住民の高齢化に対応した予防医学など病院側から発信する新しい試みにも注目です。
順天堂大学医学部附属浦安病院の基本情報
施設内容[診療科目]
内科 呼吸器内科 循環器内科 消化器内科 血液内科 腎臓内科 神経内科 外科 呼吸器外科 心臓血管外科 消化器外科 乳腺外科 小児外科 整形外科 脳神経外科 形成外科 精神科 リウマチ科 小児科 皮膚科 泌尿器科 産婦人科 眼科 耳鼻咽喉科 リハビリテーション科 放射線科 病理診断科 臨床検査科 麻酔科 救急診療科 糖尿病・内分泌内科
[所在地]千葉県浦安市富岡2丁目1-1
[アクセス]京葉線 新浦安駅 徒歩約8分
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