【横浜労災病院】脳神経外科特集

  • LINEで送る

今回は、横浜労災病院脳神経外科の周藤先生にお話を伺いました。

同院は脳腫瘍へのピンポイントの放射線治療に力を入れており、「ガンマナイフ」「ノバリス」による多くの治療例を誇っています。経験に裏付けられた「オーダーメード治療」が強みです。

今後の展望についても語っていただきました。

「ガンマナイフ」「ノバリス」を用いた低負担の放射線治療に注力

横浜労災病院は、横浜市北東部の地域医療を支える中核病院です。

脳神経外科では、脳出血・脳梗塞をはじめとする脳血管障害や脳腫瘍など、あらゆる脳疾患に対応しています。大学病院・総合病院からのご紹介で来られる患者さんが多く、7割以上が、肺がん・乳がんなどからの移転性の脳腫瘍をお持ちの方です。

特に、「ガンマナイフ」「ノバリス」という機器を用いた、身体への負担が少ない「放射線治療」に力を入れています。

「ガンマナイフ」とは、脳内の腫瘍に放射線をピンポイントで照射できる機器で、正常部位を痛める危険が少ない事が強みです。

比較的小さな腫瘍を得意とし、全身麻酔も必要ありません。一方、「ノバリス」は、大きな腫瘍に有効で、分割して照射することで脳への負担を軽減できるメリットがあります。

分割の場合、1回の照射時間は20分程度で、日帰り治療も可能です。

この2種類の放射線治療装置を持っているのは、全国で3施設、公的な病院では当院のみ(※)です。

経験に裏付けられた「オーダーメード治療」を実現

現在、当科のこれまでの治療件数は、ガンマナイフ13,000件以上(※)、ノバリス約650件(※)を数え、その経験に裏付けられた「オーダーメード治療」を実現しています。

先ほど、小さい腫瘍は「ガンマナイフ」、大きい腫瘍は「ノバリス」と申し上げましたが、実際の治療はケース・バイ・ケースです。例えば、全身状態がかんばしくない方ですと、目下の症状を改善することを最優先課題としますが、長期的な生存が見込める方ですと、副作用を考慮した治療プランが必要になります。

患者さんによって治療戦略が異なり、その点は経験がものを言うので、多くの治療件数を重ねていることは当科の強みだと思います。

手術治療・放射線治療の両方を提供できる数少ない病院

もちろん、手術治療も数多く手掛けていますので、手術と放射線、両方を提示できることも当科の特徴だと言っていいと思います。

例えば、がん治療の現場では、放射線治療が可能であるにも関わらず手術を勧められるケースがありますが、当科では患者さんに複数の選択肢を提示し、ご納得いただいた上で治療に臨みます。

また、良性腫瘍の場合、放射線を照射すると、腫瘍が固くなったり癒着を起こしたりして、手術が難しくなるケースがあるのですが、こういった、「放射線治療後の手術治療」の経験も蓄積しています。

一般的に、放射線治療は放射線科が行う、手術は脳神経外科が行う、という病院が多く、両者のコミュニケーションが上手くいかないケースがありますが、当科の場合、担当医を変更することなく放射線治療・手術の両方を提案できます。

「なるべく切りたくない。まずは放射線治療を受けたい」という患者さんが多いですから、両方の選択肢を初めに提案できるのは大きな強みです。

以前は、がんが脳に転移すると終わりだと思われていましたが、今は放射線治療や手術など、あらゆる手段を駆使すれば脳への転移の多くはコントロールできます。脳の腫瘍で亡くなる事を全力で防ぐことが我々の責務であると考えています。

今後の展望―あらゆる選択肢をフェアに提示できる体制作り

患者さんにとって大切なことは、ご自身が受ける治療について十分に納得した上で臨まれることだと考えています。

どんな治療をするにしても、先生が言っていることだから仕方ないと無理やり自分を納得させて治療を受ける方がいますが、モヤモヤした感情を抱えたままの治療は避けるべきです。

とくに腫瘍が良性ならば、考える時間、検討できる時間は十分にあります。

我々は手術治療・放射線治療・カテーテル治療・薬物治療など、あらゆる選択肢を偏りなく提示することを心掛けています。

そのためにも、常に新しい機器の整備とそれらの機器を使いこなせる人材の育成に取り組んでいきたいと考えています。

「ガンマナイフ」は新機種を導入。より負担が少なく、ズレの少ない照射が可能に

なお、「ガンマナイフ」は、2020年12月から新機種が稼働しています。
照射にあたって顔面を固定するとき、従来は金属製の専用フレームとピンを用いる必要がありましたが、新機種ではプラスチック製の「フェイスマスク」で顔面を覆います。

これにより、身体への負担がさらに少なくなり、大きな病変に対する「分割照射」が容易になりました。また、照射位置の自動補正機能により、よりズレの少ない照射を実現しています。

さらに、頭部の位置情報を赤外線で追跡するシステムが搭載されていることも特徴です。治療中に患者さんが動いて大きなズレが生じた場合は、瞬時に照射をストップし、正常部位への照射を防ぐことができます。

新機種の導入により、これまで以上に身体への負担が軽減され、照射範囲が広がり、ズレのない照射が可能になったと言えるでしょう。

 

 

※2021年2月1日現在

 

横浜労災病院の基本情報

施設内容[診療科目]

糖尿病内科・内分泌内科・代謝内科 腎臓内科 リウマチ科・膠原病内科 血液内科 腫瘍内科 緩和支持治療科 呼吸器内科 呼吸器外科 循環器内科・不整脈科 心臓血管外科 心療内科・精神科 神経内科 脳神経血管内治療科 脳神経外科 小児科・小児外科・新生児内科 消化器内科 外科・消化器外科 整形外科 手・末梢神経外科 脊椎脊髄外科 人工関節外科 産婦人科 乳腺外科 形成外科 皮膚科 泌尿器科 眼科 耳鼻咽喉科 リハビリテーション科 歯科口腔外科・顎口腔機能再建外科 放射線診断科・放射線IVR科 放射線治療科 救急科 麻酔科病理診断科

[所在地]神奈川県横浜市港北区小机町3211

[アクセス]横浜線 新横浜駅 徒歩5分

横浜市営地下鉄ブルーライン 新横浜駅 徒歩5分

[診療受付時間]

8:15-11:00

【休診日】土曜、日曜、祝日

[電話番号]045-474-8111(代表)

 

横浜労災病院の地域医療連携の取り組み

横浜労災病院・地域医療連特集の記事はこちら

関連記事

  • LINEで送る
ドクターズフォーカス