ピロリ菌との関係も。鳥肌胃炎とは?症状や胃がんのリスクについて
『鳥肌胃炎』とは、胃の粘膜が「鳥肌」のようにでこぼこに見える病気で、ピロリ菌による感染が原因だとされています。
単なる胃炎だと思って放っておくと、胃がんなど深刻な病気を併発することもあります。
この記事では、鳥肌胃炎の症状やリスク、治療法などを解説します。
鳥肌胃炎とは?ピロリ菌との関係について
1.胃に鳥肌が立ったような状態になる!?
鳥肌胃炎とは、胃を内視鏡で見ると「鳥肌」のようにでこぼこに見えることから、この病名がつけられました。
多くの場合、胃の出口付近の『前庭部』から、胃の弯曲した部分の『胃角部』にかけてみられます。
2.鳥肌胃炎の原因は?
ヘリコバクターピロリ菌の感染が影響
鳥肌胃炎には、『ヘリコバクターピロリ菌(ピロリ菌)』が関係しています。
ピロリ菌に初めて感染したときに、体質によって過剰な免疫学的反応が起こることがあります。
この反応によって、胃の粘膜下に、『リンパ球』が球状に集まった「リンパ小節」が形成されることで、胃に鳥肌が立ったような状態になるとされています。
鳥肌胃炎を発症する人のほとんどが、ピロリ菌に感染している
ピロリ菌に感染することで、鳥肌胃炎特有のでこぼこの激しい胃粘膜の変化が見られます。
鳥肌胃炎を発症されたほとんどの方が、ピロリ菌に感染しているとされています。そのため、腹痛や腹部の不快感など、胃腸の症状をともなっている場合、胃腸など消化器の除菌をおこなうことで症状の改善ができるとされています。
ピロリ菌による病気は『鳥肌胃炎』だけではない?
ピロリ菌に感染すると、鳥肌胃炎だけでなく、胃潰瘍・十二指腸潰瘍・胃がんなどを引き起こすこともあります。
3. どんな人に感染することが多い?
以前は若い女性が多かったが、今は男性も…
鳥肌胃炎は、以前は若い女性に多かったため、女性ホルモンとも関係があるとされていました。しかし、その原因は明確になっておらず、現在は男性が発生しているケースもあるようです。
若い人に急増する重い胃の病気
20代の若い人に、悪性度が高い『胃がん』(スキルス胃癌)の発生が増えていることも注目されています。
また、同じピロリ菌でも20歳以上ではガン発生確率の低い、萎縮性胃炎の割合が増えている傾向にもあります。
鳥肌胃炎の症状やリスクについて
1. 鳥肌胃炎の症状とは
鳥肌胃炎は特有の症状が出るわけではありません。症状としては、通常の胃炎などでも起こる、上腹部の痛み・胸焼け・げっぷなどです。
『慢性胃炎』に症状が似ているため、単なる胃炎だと思って放置すると重症化してしまうケースもあります。
2. 内視鏡検査で発見される
鳥肌胃炎は「内視鏡検査」などをおこなわないかぎり、発見することはできません。胃の症状や異変を感じたら、まずは『内科』『消化器科』を受診することをおすすめします。
3.『胃がん』のリスクが高まる?
『鳥肌胃炎』=『胃がん』ではない
鳥肌胃炎を発症したからといって、すぐに胃がんを発症するということではありません。あくまでも発症のリスクが高まるということです。
20歳代女性の『鳥肌胃炎』には要注意
鳥肌胃炎を発症してからの胃がんは、20歳代の女性が高い確率で併発するとされています。
若い方でも胃の不調を感じたら病院へ
若い方でも、腹痛や腹部の不快感などの症状はストレスと決めつけるのは危険です。症状が続くようであれば、なるべく早く病院を受診してください。
内視鏡検査を受け、ピロリ菌への感染はないか、鳥肌胃炎になっていないかなどのチェックを受けることをおすすめします。
鳥肌胃炎の治療法について
1. 食事や服用した薬などについての問診
『急性胃炎』が疑われる場合は、問診や触診などの診断をおこないます。
ほかにも、食事や服用した薬などから症状の程度をくわしく調べます。数日間の食事の内容や、服用した薬を伝えられるようにしておきましょう。
2.『鳥肌胃炎』を診断する方法
鳥肌胃炎を診断するためには、問診・触診、CT・MRIの検査では診断がつきません。
以下のいずれかの方法で、胃の壁の様子を観察して検査をおこなう必要があります。
造影剤検査(胃透視)
バリウムを飲んで放射線で透視する比較的簡単な方法です。食道・胃・十二指腸にバリウムが流れていく様子を確認することで、変化や炎症などがないか検査することができます。
〈メリット〉
- 内視鏡と比較して安い費用で検査ができる
- 胃の全体の動き、飲み込んだ際の造影剤の動きを確認できる
(異物や隆起などがあった場合、造影剤がその部位を通れなくなるため)
〈デメリット〉
- X線検査なので、微量ではあるが被爆をする
- 形態の検査になるので、良性悪性の診断ができない
- バリウムを使用するため、便秘の症状が出ることがある
- 所見があった場合、再度内視鏡検査が必要となる
内視鏡検査
症状の程度に応じて内視鏡での検査をおこないます。内視鏡検査とは実際にカメラで、潰瘍・炎症・ポリープなどを確認することができます。
また、粘膜の一部を採取することもできるため、ピロリ菌検査などにも活用されています。
〈メリット〉
- 胃の内部の小さな病変もすぐに確認ができる。
- 良性悪性の判断につながる、生検の処置がすぐにできる。
- 放射線による被爆がない。
〈デメリット〉
- 咽頭(のど)の麻酔が必要である
- 咽頭反射などでカメラを飲むのに苦労する場合がある
そのほか、ピロリ菌の有無を確認する検査
そのほかにも、ピロリ菌の有無を確認する検査方法として、血液検査・尿検査・呼気検査などでも調べることができます。
ピロリ菌の検査は、症状が出ていて、病気の疑いがあるときに保険が適用されます。保険が適用されるかどうかは、医師に確認してみましょう。
3.治療は保険適応になる?
治療に関しては保険適用になるケースとならないケースがあります。
保険適用になるケース
- 『胃潰瘍』や『十二指腸の治療』を受けている治療経験のある方
- 『胃MALTリンパ腫』の方
- 『特発性血小板減少性紫斑病』の方
- 『早期胃がん』に対する内視鏡治療後の方
- 内視鏡検査において『胃炎』と診断された方
保険適用外のケース
- 胃がん予防のためピロリ菌の除去治療を希望される方
- ピロリ菌に感染しているかのみを内視鏡以外の検査で診断されたい方
- 医療機関や人間ドックでピロリ菌除菌をすすめられた方
※場合によっては保険適応となることがあります。
4.ピロリ菌を除去すると鳥肌は消える?
ピロリ菌が原因の場合は、除去治療をおこないます
鳥肌胃炎はピロリ菌が原因であることがほとんどです。そのため、すみやかにピロリ菌の除菌治療をおこなうのが効果的ですが、必ずしもピロリ菌感染だけが原因というわけではありません。
内視鏡検査と同時にピロリ菌感染を判定する検査で適応となった場合に、ピロリ菌の除菌治療が開始されます。
ピロリ菌の除去治療とは?
ピロリ菌の除菌療法は、1種類の「胃酸の分泌を抑える薬」と2種類の「抗菌薬」の合計3剤を服用します。1日2回、7日間服用する治療法です。
除菌治療は1~3回程度の治療を必要な場合もあります。ピロリ菌が除去されたかは自分ではわからないので、医師から除去治療終了と言われるまで、通院をやめてしまわないようにしましょう。
ピロリ菌の除去治療による効果は?
10〜20代の鳥肌胃炎の患者の場合、ピロリ菌除菌によって半年で鳥肌の粘膜は消えた、胃の症状がなくなったなどの報告があります。
その一方で、除菌に成功しても鳥肌胃炎の改善がみられなかったとの報告もあります。このような場合でも、ピロリ菌の除去治療によって胃がんの発生率をおさえられるとされています。
5.鳥肌胃炎の場合の食事・飲酒・喫煙について
鳥肌胃炎の場合、治療中・治療後ともに生活習慣と食習慣に気をつける必要があります。
飲酒・喫煙について
生活習慣では、飲酒や喫煙をひかえる、ストレスを溜め込まないように適度に発散するなど、身体にストレスを与えないようにしましょう。
食事について
食習慣では、刺激が強い食べ物はひかえる、かたよった食生活をせず、バランスの良い食習慣をおこなうなどが必要です。
まとめ
単なる胃炎と思って放置せず、早めに病院へ
単なる胃炎と思って放置すると、発見が遅れ命にかかわる病気につながる危険もあります。症状が胃炎と似ているため、注意が必要です。胃の異変を感じたら早めに病院を受診してください。
鳥肌胃炎にならないために
鳥肌胃炎は、定期的に内視鏡検査を受けることによって、未然に防ぐことができ、早期発見にもつながります。また、日ごろから胃に負担をかけないように心がけることも大切です。生活習慣や食習慣の見直しをおこなうとよいでしょう。
執筆・監修ドクター
経歴1996年 埼玉医科大学卒業
1997年 埼玉医科大学第一外科入(一般外科、呼吸器外科、心臓血管外科)終了
1999年 戸田中央総合病院心臓血管外科医として就職
2000年 埼玉医科大学心臓血管外科就職
2006年-2012年3月 公立昭和病院心臓血管外科就職
2012年4月 岡村医院、医師として勤務
2012年7月 岡村クリニック開院
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