胃がんの検査に行こう!早期発見・治療のカギは胃カメラ
胃がんは早期のものだとほとんど症状がありません。
胃もたれ、胸やけ、食事のつかえ感など他疾患にともなう症状で胃カメラ検査を受け、偶発的に病変が見つかることがほとんどです。
早期の胃がんは胃透視検査などでも病変を見つけるのは困難な場合があり、だからこそ症状がない時から積極的に検査を受けていくことが大切です。
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消化器がんと検査が重要な理由とは?
日本人の寿命が延びるにつれて、がんを原因に死亡する患者さんが増加しています。
1981年までは死因は脳卒中や結核、肺炎などが主な死因でした。
国立がん研究センターの報告によりますと、2017年にがんを原因に死亡した患者さんは37万3千人にのぼります。これは高齢者の死因の第一位となっています。
消化器のがんは年々増加している
ここ30年でがんを原因に死亡する患者さんは約2倍に膨れ上がっています。そのほとんどが高齢者です。
残念なことに、今でも高齢であることを理由に胃がんや大腸がんの検査を拒絶される患者さんや、患者さんのご家族がいらっしゃいますが、現代の医療では、早期の段階でがんを見つけることができれば、おなかを開けることなく内視鏡などで切除することができます。
体の負担も少ない治療ですので、高齢者の患者さんでも比較的安全に治療できます。
実際、筆者も90歳の患者さんの胃がんを内視鏡で切除し根治させた経験があります。
また、痛みも少なく入院期間も短期間で済むので医療費もぐっと抑えられます。
一方検査をせずに、手の施しようのない状態までがんが進行すれば、「がんによる痛みで睡眠がとれない」「がんによる嘔吐(おうと)などで好きなものが食べられない」「がんからの出血によってベッドにからおきられない」など余生を楽しく過ごすことができなくなります。
また、定期的に医療機関で検査を受ける人たちと、医療機関を受診せずに過ごした人たちに分け、将来的にかかる医療費を比較検討した試験があります。
この研究でもやはり医療機関を受診しなかった人たちのほうが、将来的にかかる医療費も高額になることがわかっています。
基本的に病気は早期発見、早期治療したほうが、健康上の負担も経済的な負担もリーズナブルに上がるといえるのではないでしょうか。
早期発見のカギは内視鏡検査
「高齢である」から、あるいは「症状がないから検査を受けない」のではなく、高齢であるからこそ積極的に検査を受けるほうが、余生も楽しく過ごせますし、ご家族にも金銭的にも身体的にも負担をかけずに済む可能性が高くなります。
現在、内視鏡も形状が細くなり、以前より苦痛も少なく検査を受けることができるようになりました。
このコラムが一人でも多く検査を受けていただくきっかけとなり、余生をより笑顔で生きていける足掛かりになればと考えております。
胃がんの早期と末期の症状の違い
早期胃がんは無症状?
早期の胃がんにはほとんど症状がありません。胃もたれ、胸やけ、食事のつかえ感など他疾患にともなう症状で胃カメラ検査を受け、偶発的に病変が見つかることがほとんどです。
早期の胃がんは胃透視検査などでも病変を見つけるのは困難な場合があり、だからこそ症状がない時から積極的に検査を受けていくことが大切です。
進行した胃がんの症状
進行した胃がんの場合は、腹痛、嘔吐(おうと)、吐血、食欲不振、腹部膨満感などの症状を呈します。
また血液検査で慢性的な貧血を指摘されるなどの異常が出ます。
胃がんの原因となるピロリ菌
胃がんの原因ヘリコバクターピロリ菌とは?
胃がんの原因として広く知られているのが、ヘリコバクターピロリ菌です。
普段、胃内は強力な胃酸が出ています。そのため普通の細菌は感染できませんが、ヘリコバクターピロリ菌は胃酸を中和しながら胃内に感染することができます。
胃内に入り込んだヘリコバクターピロリ菌は胃上皮細胞に接触し、がんタンパク質であるCagAを胃上皮細胞内に直接注入することで、がんをひきおこすとされています。
ヘリコバクターピロリ菌の感染経路
ヘリコバクターピロリ菌の感染経路をすべて特定することはできていません。
しかし大きな感染経路として井戸水があげられます。
井戸水を生活水として使用していた65歳以上の高齢者に感染者が多いことや、現在でも井戸水を生活水として使用している特定の地域にヘリコバクターピロリ菌感染者が多くみられることから、井戸水が感染源と予測されています。
また、井戸水を使用していない若年発症者の感染経路は、親からの食事の口移しなどで感染するのではないかと予測されています。
ヘリコバクターピロリ菌の検査
ヘリコバクターピロリ菌の除菌には胃カメラ検査が重要
ヘリコバクターピロリ菌の感染を調べる検査は、まず胃カメラを受けていただくことが前提です。
胃カメラで萎縮性胃炎、鳥肌胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍など、ヘリコバクターピロリ菌感染を疑うような所見があった場合は順次検査をしていきます。
また、保険で治療をする場合、胃カメラを受けていないと除菌療法が受けられない規則になっています。
ヘリコバクターピロリ菌の検査は、胃カメラから直接検査をする迅速ウレアーゼ試験や、呼気で検査をする呼気テスト、その他、検便検査や血液検査などがあります。
患者さんの服薬状況、基礎疾患、全身の状態で担当医師がどの検査が望ましいか選定していきます。
ヘリコバクターピロリ菌の治療
ピロリ菌の除菌治療とは?
日本では2000年よりヘリコバクターピロリ菌の除菌が保険適応となり、広く除菌療法がなされるようになりました。
それとともに、胃がんでの死亡率が減少傾向にあります。除菌すれば胃がんの発症リスクを60%ほど減少させるという報告があります。
除菌療法は患者さんの一生を左右しかねない非常に大切な治療と言えます
基本的には、ピロリ菌の除菌療法は抗菌薬と胃薬を一週間服薬するだけです。
一週間内服いただいた後は、一定の期間を空けて除菌が成功しているかどうかの判定の検査を受けていただきます。
一回目の治療でヘリコバクターピロリ菌が消失しないケースがあります。
その場合は、2回目の治療を担当医がご案内します。また、服薬中は飲酒ができません。
胃がんになってしまったら?胃がんの治療について
1.早期胃がん
早期の胃がんは前述したとおり、内視鏡(胃カメラで)治療することができます。
この場合はお腹を切開する必要はありません。胃カメラでがんの部分をくりぬくようなイメージです。
がん部分をくりぬきますので、術後は胃潰瘍のような状態になります。そのため、くりぬいた後は胃潰瘍の薬を内服し治療していきます。
基本的には術後の痛みもない場合が多く、開腹手術に比べて絶食の期間も短くて済みます。入院期間は一般的に5~7日程度の施設が多いです。
2.進行胃がん
進行している胃がんの場合はサイズが大きく、がんが胃の深い場所まで進達しているため、内視鏡でくり抜くことができません。
よって胃を切除することになります。
胃を切除する場合でも、比較的小さな胃がんであれば、腹腔鏡手術といって、比較的小さな傷での手術を選択することができます。
腹腔鏡での手術は傷が小さいため、術後の痛みも少なく、一般的な開腹手術と比較し、早めに退院できるケースが多いです。
また、がんのサイズが小さければ胃を温存できるケースがあります。胃を1/3や1/2程度切除し、胃を温存できた人と、胃を全部切除した人では、術後の食生活が大きく変わってきます。
しかしサイズの大きながんになると、やはり大きくお腹を切開しないといけなかったり、胃をすべて摘出しなければならなかったり、場合によっては手術ができずに抗がん剤の治療を選択しないといけなかったりと、治療の選択肢が少なくなってきます。
緩和ケアについて
治療を選択しない場合は緩和ケアという選択がありますが、やはり高齢者が余生を楽しく過ごすのに食事というのは大きなファクターです。
胃がんは進行すると、出血、嘔吐(おうと)、腹部膨満感、胃もたれ感などで食事の摂取が困難になるケースが多々あります。
残りの人生を楽しく過ごすために、愛するご家族の負担を減らすために、高齢者だからこそ、検査を積極的に受けるという選択を、わたくしは強くお勧めします。
執筆・監修ドクター
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