四十肩・五十肩の治し方は?急性期・慢性期・回復期のケア。何科を受診する?
【医師監修】
急性期には夜も眠れないほどの激痛が襲う四十肩(五十肩)。
ある日突然肩が重苦しいような痛いような違和感を感じたことはありませんか?
最初は小さな違和感だったものが、突然激痛に変わり、夜も眠れない…、四十肩(五十肩)でお悩みの方はこのような経験があるのではないでしょうか?
四十肩(五十肩)の痛みは、なってみないとわかりません。この記事では、痛みが出た時の治し方や病院で受ける治療について解説していきます。
病院で治療をしたり、自分で対処したりと治し方もさまざまです。
急性期・慢性期・回復期など症状によって必要なケアも異なるため注意しましょう。
四十肩(五十肩)の急性期・慢性期・回復期の治し方
四十肩(五十肩)の症状は、「急性期」「慢性期」「回復期」の大きく三つに分けられます。
1.急性期の治し方と対処法
四十肩(五十肩)の急性期の痛みは、程度によりますがおよそ数日から2週間程度続くとされています。
無理に動かさず安静にする
痛みが強い場合は無理に動かさずに安静にしましょう。痛みがひどい時のストレッチは炎症を悪化させる可能性があり危険ですので控えましょう。
市販の鎮痛剤も活用する
安静にしていても痛むようであれば、市販の鎮痛剤を服用しても構いません。
夜寝ている時に痛みで目が覚めてしまう「夜間痛」も急性期の特徴です。
一時的に冷やした方が良い場合も
急性期の痛みが強い数日の間、熱を持っているように感じる場合は一時的に冷やした方が楽になる場合もあります。痛みが落ち着いたら温めた方が楽ですが、痛みの強さの程度によって使い分けましょう。
2.慢性期の治し方と対処法
急性期の痛みが治まってくると、鈍い痛みへと変わります。この時期を「慢性期」といいます。慢性期は2週間~3週間以上かかり、半年から1年程度続くことが多いです。
痛みが引いてきたら意欲的に動かす
慢性期は、肩が上がりにくくなるなど、可動域がだんだん狭まってきます。これは急性期の影響で、筋肉が萎縮して硬くなっているからです。
着替えなど、日常生活で支障をきたす時期といえます。
痛みが引かなければ、なるべく安静に過ごし、痛みが引いてきたら日常の動作を意欲的に行うようにしましょう。
関節が固まってしまっていることも多いため、お風呂など温めながら、率先して動かすことが重要です。
肩を冷やさないようにする
急性期とは違い、肩が冷えると痛みが強くなってしまうこともあるので、特に就寝前にタオルや毛布をかけるなど、肩を冷やさないようにしましょう。夏でもできるだけ薄着は避けるようにします。
3.回復期の治し方と対処法
回復期に入ると、痛みはほとんど治まります。
少しずつ腕が動かせるようになる時期です。慢性期以上に肩を意欲的に動かすことを意識しましょう。
四十肩(五十肩)対策と病院での治療
1.自分でできる四十肩対策
四十肩(五十肩)は、程度にもよりますが、1年程度で自然と治ることが多いです。
しかし何もしなければ、関節が硬くなり、痛みがなくなっても肩の可動域が狭くなったままになる可能性もあります。痛みが落ち着いてきたら、日常生活の動作に加えて、ストレッチや体操などを取りいれていきましょう。
ラジオ体操
ラジオ体操は、肩の動きのバリエーションが豊富です。全身運動も含まれるので、運動不足解消にも役立ち、一石二鳥です。
振り子運動
お辞儀の姿勢をとり、痛くない方の手でテーブルやいすなどをつかみ、痛い方の腕をだらんと下し、腕をリラックスした振り子のように前後に振ったり回したりします。
バランスのとれた食生活と生活習慣
偏った食事や睡眠不足、ストレスは、四十肩(五十肩)の間接的要因になることもあります。栄養バランスのとれた規則正しい生活を心掛けましょう。
2.病院は何科?
四十肩は、整形外科を受診します。
治療は、まずレントゲンやエコー検査をし、他に異常がないかを確認します。腕を動かす可動域の検査も行います。
痛みがひどい場合は、消炎鎮痛剤が処方されます。炎症を取り除くことが大切なので、指示通り使用しましょう。肩関節に注射することで痛みが軽減することもあります。
症状に合わせて理学療法で肩関節が固まるのを防いだり、電気治療や、肩を温めるホットパックをしたりすることもあります。これらはすべて保険診療が適用となります。
3.整形外科と整骨院は何が違う?
整形外科と整骨院では、受けられる治療とリハビリは異なります。
整形外科は理学療法士、整骨院は柔道整復師の方がリハビリを担当することが多くあります。
整形外科の場合はドクターと連携をとり、リハビリを勧めていきますが、整骨院ではドクターがいないということや、あくまで応急処置であるということを認識しておきましょう。
身体を幅広く診てもらえるのは整形外科になります。
四十肩(五十肩)の原因や症状
1.四十肩(五十肩)って?実は「肩関節周囲炎」のこと
一般的に40代~50代の方に多いことから四十肩(五十肩)と呼ばれますが、実は「肩関節周囲炎」という疾患です。30代でも60代以降でも起こることは珍しくありません。
2.四十肩(五十肩)の原因
肩関節周囲炎の原因ははっきりとは解明されていません。
しかし、加齢により方周辺の組織(関節を含む袋である関節包や滑液包など)が炎症を起こし、腫れや痛みが生じることにより、運動痛や運動障害、夜間痛などを起こすといわれています。
3.四十肩(五十肩)の症状
骨や筋肉に、怪我や構造上の異常がないにもかかわらず、肩の可動域が狭くなってしまい、腕が上がらない、腕がだるく感じる、肩に激痛が走るなどの症状が出ます。
3.四十肩(五十肩)に似ている他の病気
肩こり
四十肩(五十肩)はひどい肩こりなのでは?と思う方もいるかもしれませんが、実はメカニズムからして違います。肩こりは主に筋肉疲労や筋肉が固まってしまうことで起こる症状で、肩の関節でなく首から肩にかけての疲れや首の緊張が原因で起こります。
2.石灰沈着性肩腱板炎(せっかいちんちゃくせいけんばんえん)
肩関節組織の一部である腱板と呼ばれる方を動かす筋肉に石灰が沈着してしまったケースです。レントゲンやエコー検査で診断がつきます。
3.腱板断裂(けんばんだんれつ)
四十肩と違い、経年劣化で腱板に傷つくこともありますし、肩を強打したような外傷で起こります。この場合、程度によりますが、断裂している場合は手術が必要になります。
痛みが長引く場合や、肩がいつまでも上がらない場合、専門医を受診しましょう。
まとめ
四十肩(五十肩)は自然に治る疾患ではありますが、他の疾患と区別するためにも、一度整形外科を受診することをお勧めします。
四十肩(五十肩)の痛みを取り除くためには焦りは禁物です。痛みが強くなったら、ストレッチを中止するなど、くれぐれも無理することがないよう、気長に付き合っていきましょう。
執筆・監修ドクター
経歴1995年 昭和大学卒業(形成外科)
1996年 慶應義塾大学(整形外科) ※以後、関連病院にて脊椎専門にて勤務医
2010年 久我山整形外科ペインクリニック 開院
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