虫垂炎の治療法を解説!薬は再発しやすい?かかる費用や期間とは
『虫垂炎』は、お腹に激しい痛みが起こり、発熱などの症状も出る病気です。
腹痛が、「みぞおち」や「へそ」の部分から右下腹部へと移動していくのが特徴で、時間とともに悪化します。
自然には治らないため、「手術による治療」か「薬による治療」が必要です。
この記事では、『虫垂炎』の治療についてご紹介します。
虫垂炎とは?そもそもどんな病気のこと?
虫垂炎とはどんな病気か、簡単に説明します。
1.虫垂炎を一言でいうと
虫垂炎とは、盲腸の下端にある腸管の一部にある「虫垂」に起こる化膿性の炎症です。
2.じつは、虫垂炎と「盲腸」は別の部位
虫垂炎は、一般的に『盲腸』や『盲腸炎』と呼ばれることがありますが、盲腸とは別の組織です。
盲腸とは、右下腹部にあり、小腸から大腸へとつながる部分を指します。
虫垂とは盲腸の下にあり、6~8㎝で鉛筆程度の太さがあります。
3.昔は虫垂炎が盲腸にまで広がることが多かった!
昔は、虫垂炎の発見が遅れることが多く、炎症が盲腸にまで広がった状態で見つかることが多かったために、「盲腸炎」などと呼ばれてしまっていたようです。
『手術』による虫垂炎の治療
まずは、虫垂炎の手術について、どんな治療法か、かかる費用や期間を解説します。
1.虫垂炎で手術療法が必要なケースって?
虫垂炎は炎症の程度によって3分類される
まず虫垂炎は、大きく分けて、以下の3つの順に症状が進行していきます。
- カタル性…粘膜層のみの炎症でもっとも軽度のもの。
- 蜂窩織炎性(ほうかしきえんせい)…全層に化膿性の炎症が起きる中等症。
- 壊疽性(えそせい)…虫垂壁全層の壊死がみられる重症
どの程度から手術が必要になるの?
手術が必要になるのは、『蜂窩織炎性』と『壊疽性』の炎症です。
ただし、蜂窩織炎性の場合は、抗生物質を使った薬での治療(保存的治療)が選択されることもあります。その場合は、症状を見ながら慎重に判断していきます。
2.手術方法は?入院期間・費用とともに解説!
手術には、『開腹手術』と『腹腔鏡(ふくくうきょう)手術』の2種類があります。
どちらも、虫垂を根元から取り除く「虫垂切除術」という方法でおこないます。
それぞれのメリット・デメリットをよく理解し、医師の説明をよく聞いてから選択しましょう。
『開腹手術』
開腹手術は、「交差切開法」と「傍腹(ぼうふく)直筋切開法」に分けられます。
『交差切開法』
右下腹部を斜めに小さく切開するため、傷が目立たないのが特徴です。
『傍腹直筋切開法』
お腹の中に膿がたまっている状態のときなどに適用されます。お腹を、少し大きめに縦に切開します。状況に合わせて切開する長さを延ばせるのが特徴です。
『腹腔鏡手術』
お腹に小さな穴を開けるだけなので、傷が目立たず体への負担も少なくてすみます。そのため、回復が早いことも特徴です。
入院期間も4日程度で、術後の痛みも少ないといわれます。手術費用だけで、15~20万程度です。
3.虫垂炎の手術後の過ごし方。ふだんの生活に戻れるのは?
術後、ご飯を食べられるのはいつから?
手術後は、日常生活に早く復帰できるように経過を見ていきます。術後2日間くらい、腸の働きがもどるまでは絶食となります。
ご飯を開始する目安となるのは「ガス(おなら)」です。重湯から三分粥、五分粥とだんだんと消化が必要な食べ物を増やしていきます。
入院中でも、医師の許可があればベッドから起きて日常の動作に慣らしていきましょう。
退院後、食事や生活の制限はとくにない
退院後は、暴飲暴食や冷たい物の食べ過ぎに気をつける必要はありますが、食べ物や生活上の制限はとくにありません。
ふだんの生活にはいつ戻れる?
手術から1~2週間後に傷の状態を確認して、問題がなければ通常の生活に戻れます。
4.手術による治療のメリットとデメリット
手術療法のメリットは、確実に治しやすいこと
病気の部分である虫垂を切除することで、確実に治しやすいことです。薬物療法では、再発の可能性があります。
デメリットは、合併症の危険性
手術療法のデメリットは、合併症の危険性があることです。
「出血」や「多臓器損傷」を起こす可能性がある
外科的治療となるため、術中に出血や多臓器損傷を起こす可能性があります。
ごくまれに、手術を行う中で、虫垂の周囲や皮下からの出血があり、止血が必要となる場合があります。多臓器損傷は、複数の臓器が損傷してしまうため、それぞれ出血量や損傷度合によっては命にも影響します。
腹腔内に広がった膿から炎症、感染症を起こすことも
また、術後に腹腔内に広がった膿が残り、膿の中の細菌が増殖して炎症、感染症を起こすことがあります。
また、「腸閉塞」を起こす可能性も
腸同士や腸と腹壁がくっついてしまう「腸閉塞」を起こしたりします。
腸閉塞とは、「イレウス」とも呼ばれ、腸管通過が妨げられる病気です。腸管の中がふさがる場合と、腸の煽動運動が低下する場合があります。腸閉塞が起こると、激しいけいれん性の腹部激痛がおこります。
薬による虫垂炎の治療について
続いて、虫垂炎で薬物療法が適用されるケースや、その場合にかかる費用や期間、再発の可能性について解説します。
1.どんな時に、薬物療法で治療がおこなわれる?
抗生物質で治ることが多い「カタル性」
薬による治療になるのは、おもに一番軽い炎症である『カタル性』のものです。
カタル性の段階であれば、『抗生物質』を使った内科的な治療方法で治るといわれています。
微生物の発育を阻止する働きがある抗生物質薬を、点滴や服薬にて投与します。
「薬で散らす」とは?
俗にいわれる「薬で散らす」とは、虫垂炎の場合は、炎症が軽い状態のときに、抗生物質によって炎症を緩和させることを指します。
中度の虫垂炎である、『蜂窩織炎性』も薬による治療をおこなうこともありますが、抗生物質が効かない場合は外科的な治療に切り替えることもあります。
2.薬物療法にかかる費用と期間は?
薬で治す場合は通院になるため比較的安く済みます。症状によりますが軽度の方であれば、3~10日ほどで完治することが多いです。
しかし、段階が進んでいるなどの理由で入院して薬物療法をおこなう場合もあります。
その場合は、1週間ほど入院が必要になり、費用も10万程度かかってくるため、手術をおこなう場合とそれほど変わらないともいわれます。
3.薬物療法のメリットとデメリット。再発しやすい?
薬物療法のメリットは、傷跡が残らないこと
薬でも手術と同じように痛みがとれることが多く、痕も残らないことです。
薬物療法のデメリットは、再発の可能性
虫垂炎は、薬物療法をおこなって痛みは取れても、虫垂炎は残っているので、10~20%の確率で、再発する可能性があります。
再発を起こした場合は、ほとんどが手術による切除になります。
また、一度炎症を起こした虫垂は腸や腹壁とくっつきやすくなっているため、再発後の手術は難しいものになります。
まとめ
虫垂炎は自然に治ることはなく、痛みとともに症状が進行していきます。
そのため、虫垂炎の症状が疑われたら、早めに『消化器内科』を受診してください。
虫垂炎の治療は、手術による『外科的治療』と薬による『内科的治療』が選択されます。
それぞれのメリットデメリットを理解し、医師の説明をよく聞いたうえで選択しましょう。
執筆・監修ドクター
経歴2006年 北里大学大学院卒、
2008年 平塚共済病院内科医長を経て小田原銀座クリニックに入職、その後院長に就任。
2013年 12月には当院久野銀座クリニックを開業
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