やけどの病院へ行くべき症状は?見た目と傷の深さから解説!何科?
『やけど』は、日常生活のなかでだれもが一度は経験したことがあるのではないでしょうか。
家庭内でのやけどが大半で、大人より子どものほうがやけどすることが多いといわれています。
やけどの深さは自分で判断しづらく、病院を受診する目安がわからない場合も多いですよね。
この記事では、『病院に行ったほうがよいやけど』や、『病院での治療』について解説していきます。
こんなときはすぐ病院へ!やけどの深さ別に解説
やけどは、『熱傷』ともよばれ、だれにでも起こるものです。
原因は、熱湯によるものがもっとも多く、次いで暖房器具やバイクの排気などになります。
やけどは、表皮・真皮・皮下組織のどこにまで及んでいるかによって『Ⅰ度・Ⅱ度・Ⅲ度』に分類されます。
以下、治療や症状などをやけどの深さごとにまとめています。
【皮膚の構造】
1.『1度のやけど』は、冷やして治まるのを待ちましょう
やけどの深さ
皮膚の外側にある薄い膜のみの、もっとも軽いやけどです。
薄い膜は「表皮」といって、異物の侵入や体内の水分が蒸発するのを防ぎ、皮膚内部を保護しています。
見た目
やけどをした部分だけ、皮膚が赤くなります。
症状
ずきずきとうずくような痛みや、熱さを感じます。
治療と治るまでの期間
冷やしていれば数日程度で治まることがほとんどです。とくに治療も必要ありません。
2.『浅達性(せんたつせい)2度熱傷』は、すみやかに病院へ
やけどの深さ
皮膚の大半を占める「真皮(しんぴ)」の浅い層に達しているやけどです。
真皮は表皮より深く、血管・リンパ管・汗腺もとおっていて、厚さは2ミリほどです。
見た目
表面がくずれる、白っぽくなる、水疱(すいほう)ができるなど、目に見えてわかります。
水疱とは、一般的に『水ぶくれ』とよばれる、半球状にふくれたものです。
水疱は、損傷した組織の成分や血液が固まった際の淡黄色の液体が、表皮にたまってできます。
症状
うずくような激しい痛み・熱くてひりひりする『灼熱感』・知覚が低下して何も感じなくなる『知覚鈍麻(ちかくどんま)』が起こります。
治療と治るまでの期間
患部を冷却して、水疱を破らないよう清潔なガーゼで保護してから、すみやかに病院を受診しましょう。
2週間以内には治ることが多いです。
3.『深達性2度熱傷』は痕が残ることも…
やけどの深さ
表皮の下の、真皮の深い層にまで達しているやけどです。
見た目
皮膚が白っぽくなり表面がくずれ、水疱が破れやすい状態になります。
症状
激しい疼痛があり、灼熱感や知覚鈍麻がみられます。
治療と治るまでの期間
治るまでに4週間はかかるとされています。早めに病院を受診しましょう。
傷がふさがっても、引きつり・かゆみ・痛みなどをともない、赤く盛り上がることがあります。
これは『肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)』といって、真皮の中層にまで届く損傷を起こした際、傷の治りが悪いとできるものです。
治るにつれて赤みが赤紫色へと変わり、色が薄まって平たくなります。
しかし、やけどの程度によっては、軽度の盛り上がりを残す場合もあるでしょう。
『機能障害』について
顔や関節部にできると、引きつりが起きて『機能障害』につながることがあります。
機能障害とは、傷跡が縮んで固まった場所の動きが制限されることです。
4.『3度のやけど』はすぐ病院へ。自力で行けなければ救急車を
やけどの深さ
真皮のすべての層、皮膚のもっとも深い『皮下組織』にまで達しているやけどです。
見た目
血の気がなく青ざめた状態で、こげて黒くなっている場合もあります。脱毛や乾燥もみられます。
症状
痛みをほとんど感じない、「無痛性の状態」になっています。
対処について
必ず病院に行きましょう。自力で行けない場合は救急車を呼んでください。
自然に治るまでには非常に時間がかかるため、入院して植皮術などの外科的治療が必要になります。
治療と治るまでの期間
自然に治癒することはなく、『瘢痕(はんこん)』という傷痕ができることが多いです。
傷を受けた部分に『細菌感染』があるかによって、傷痕が残るかどうかが決まります。そのため、やけどが深く大きいほど、細菌が侵入する確率も高く感染しやすいといえます。
また、深い傷を治す過程で、赤み・かゆみ・痛みをともないます。
半年から1年ほどで、赤みが薄くなって白く平らな傷痕へと変わっていくでしょう。
病院でうけるやけどの治療について
1.病院は『何科』を受診するべき?
やけどをしたら『形成外科』か『皮膚科』へ!
軽いやけどだと思っていても、深いやけどである場合もあります。また、やけどの深さに気づかないまま放っておくと傷痕が残る場合もあるでしょう。
そのため、軽度のやけどであっても『形成外科』か『皮膚科』を受診することをおすすめします。
手足や顔、陰部など、デリケートな部分をやけどした際は、入院治療が必要になることもあります。ひどいやけどの場合は、『形成外科』か『皮膚科のある総合病院』を受診しましょう。
入院治療が必要な場合
以下の方は、入院での治療が必要になります。
・糖尿病や心臓病の持病がある高齢者や小さなお子さんの場合
・体の表面積の15%を超える『1度熱傷』 の場合
・体の表面積の2%を超える『3度熱傷』の場合
すみやかに総合病院へ搬送しなければならない場合
やけどの範囲が、体の表面積の30%を超えると、体液がたまって『熱傷ショック』を起こします。熱傷ショックとは、全身の炎症反応が進行して「多臓器不全」を引き起こすことです。
この場合は生命に危険が及ぶため、救急科・麻酔科・形成外科・皮膚科の医師がいる総合病院ですみやかに治療を受ける必要があります。
2.やけどの深さや範囲に適した治療をおこないます
保存的治療法
『保存的治療法』は患部を冷却して洗浄をおこない、軟膏が処方されます。
『浅達性II度熱傷』の場合、水ぶくれが破れたり傷ができたりしても、1~2週間で治り傷痕も残らないことが多いため、この治療法が用いられます。
外科的治療法
『外科的治療法』 は、植皮術(皮膚移植)をおこなう治療です。傷痕や引きつれを残すことが多いとされているため、この治療法が用いられます。
『深達性2度熱傷』の場合、適切な治療を受けても治るのに1か月以上かかります。
当然ですが、もっとも重度のやけどである『3度熱傷』の場合は、外科的治療が必要です。
まとめ
やけどは、自己判断がむずかしい外傷です。
軽いと思っていても実際は深いやけどを負っている場合は、傷痕を残してしまうことがあるので注意が必要です。やけどが深い場合は、神経を損傷して痛みを感じないこともあるため、放っておくのは危険です。
やけどをした場合は、すぐに患部を流水で冷却してから保護しましょう。そして、すみやかに形成外科や皮膚科などの病院を受診することをおすすめします。
執筆・監修ドクター
経歴北里大学医学部卒業
横浜市立大学臨床研修医を経て、横浜市立大学形成外科入局
横浜市立大学病院 形成外科、藤沢湘南台病院 形成外科
横浜市立大学附属市民総合医療センター 形成外科
を経て横浜栄共済病院 形成外科
2014年 KO CLINICに勤務
2021年 ルサンククリニック銀座院 院長 就任
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