
佐野 謙先生(日本神経学会認定 神経内科専門医)にインタビュー
研修医時代に臨床の楽しさ・厳しさ・やりがいに触れ、神経内科の道へ進む
今の医院は、新しく立て直したものなのですが、父の代の時は入院もできる有床の医院でした。実家兼クリニックという造りだったこともあって、実家に居た頃は病院によく遊びに行っていた記憶があります。当時は父の仕事に対してあまりつらそうな印象はなかったのですが、実際自分が医師になってみると当時一人で診療していた父もきっと大変だったのだろうなと感じるようになりましたね。
しかし、研修医になって患者さまの診察を担当するようになってからは、患者さまと接することの楽しさに触れ、研究職ではなく、臨床のほうにだんだん気持ちが傾いてきたんです。学生時代に脳神経外科など神経系の救命救急の実習があったのですが、その時意識障害の人や神経疾患の人をみたことがきっかけで、臨床をするなら、神経内科の分野に行きたいと思うようになりました。
私を指導してくれた教授はパーキンソン病含めた運動障害疾患を専門にされていた方でしたが、神経内科の検査や手技はすべてやりなさいという指導方針でした。
その教えのとおり、いろいろな症例や検査手技を幅広く学ぶことができました。できないことや、知らないことが少ないというのは、医師になって仕事やキャリアを形成する上でとても役に立ったと思います。また、パーキンソン病のほかに髄膜炎や脳炎などの神経救急疾患の患者さまが大学病院に来られた際も、診療を担当する機会が多かったのですが、自己免疫性脳炎など難しい疾患もあり神経内科特有の知識も生かせる場だったので、 興味を持ちよく診療していました。
専門的な視点から原因を探り、わかりやすく丁寧な説明を大事に
やはりどんな症状であれ、病気を絞るために問診が大切ですので、患者さまとお話する際はじっくりと時間をかけて、説明の際には分かりやすい説明をするように心がけています。言葉だけの説明では足りないので、後から見返せるように病状を記載したメモをお渡しすることもありますね。
50歳を過ぎてから頭痛が起こりだした場合は、片頭痛のような一次性頭痛ではなく別の疾患による二次性頭痛も疑われます。その場合は診察と問診をして別の疾患がないか確認を行います。頭痛の治療は薬物療法が基本となりますが、睡眠不足・睡眠過多、飲酒、食生活などが頭痛を誘発する原因のこともありますので、そのような場合は患者さまの生活環境や食事の好みをヒアリングして、生活習慣の改善に向けたアドバイスも可能な限り行っています。
パーキンソン病については、今後さらに治療の選択肢の幅が広がる可能性がありますし、新たな薬が開発されると信じています。また、治療の説明のみならず、しっかりとお話を伺いながら介護されているご家族含めたメンタルケアも大切にしています。
困っている人が気兼ねなく来られる、地域に根差した医院を目指す
当院は元々消化器内科ということもあり、私も脳神経内科の分野だけでなく高血圧症、糖尿病、喘息などの内科系疾患を診療する機会も増えました。ガイドラインに準じた治療を行い、地域のかかりつけとして幅広く対応できるように常に勉強を続けています。もちろん、当院で対応が難しい場合や詳しい検査が必要な時は、患者さまと相談しながら近隣の医療機関に紹介していますが、困った方が来院したときに対応できるような医院になれたらと日々努めています。
現在、神経内科に詳しく、訪問診療の対応できる医師が不足している印象があります。地域の各エリアにそのような医師がいて、柔軟に対応できる環境になればいいなと思います。
困ってることや悩まれていることがあれば、お悩みに対して時間をかけて説明しておりますので専門的なことでなくても気兼ねなくいらしてください。これからもより多くの皆さまの健康をサポートし、地域医療に貢献できるように努めてまいります。