三宅 豊先生(日本糖尿病学会認定 糖尿病専門医)にインタビュー
勤務医時代に得た糖尿病治療や人工透析治療の経験を糧に、父の医院を継承
内科、とくに糖尿病内科を選んだ理由に関しても、父の影響があります。糖尿病だった父の大変そうな姿を見ていましたし、時代的にも糖尿病の患者さまが増えてきていましたので、同じように悩まれている患者さまのお役に立ちたいという思いで糖尿病内科に進むことを決めました。
また、人工透析グループも兼任していたため、糖尿病だけでなく人工透析も含めて幅広く経験できたことは、よかったことであり記憶に残っています。今でこそ糖尿病性腎症は人工透析が必要となる原因第一位の疾患となっていますが、当時は治療の流れなどがそこまで固まっていませんでした。そのため慌ただしさもありましたが、その経験をしたからこそ「人工透析治療を開始するタイミング」や「患者さまへの提案の仕方」「ほかのスタッフや医療機関との連携の重要性」などを学ぶことができたと感じています。
お酒は、それ自体が悪いというよりも、飲むことにより気が緩んで食べ過ぎてしまったり、生活習慣が崩れてしまったりすることが、病気を進行させる要因となります。たばこは、ただでさえ肺に負担をかけているものなので、糖尿病や脂質異常症で動脈硬化リスクがある状態だと、さらにそのリスクを増大させてしまいます。「やりたいことができない身体にどんどん近づいていってしまいますよ」と、患者さまにはお伝えしています。ただ、いきなりすべてを禁止することは患者さまの負担になりますので、「とりあえずこれは続けよう」というように、いくつかに絞ってアドバイスするようにしています。
「継続しやすいこと」を重視し、お薬の種類や服用回数にも配慮
治療を行う際に大切にしているのは、患者さまへのご説明です。1型糖尿病にはインスリン療法が不可欠ですが、それを受け入れられない患者さまもいらっしゃいます。日々の管理が必要になるため患者さまの負担は大きいですが、「生命を維持するために必要」だということをご理解いただけるように説明しています。
お薬を処方する際に気を付けているのは、できるだけ患者さまの負担がないようにすることです。糖尿病のお薬には、「食前に飲む薬」「食後に飲む薬」「1日に2回飲む薬」「1日3回飲む薬」など、さまざまな種類があります。複雑すぎると服用が負担になってしまうため、できるだけ回数を減らしたり、複数の薬を処方する場合は同じ服用回数のものを選択したりすることで、受け入れていただきやすいよう配慮しています。また、薬が効きすぎて「低血糖になっていないか」を定期的に確認するようにしています。
治療の際に心がけているのは、お薬の必要性をご理解いただくことですね。脂質異常症は、食事中の飽和脂肪酸やコレステロールの摂り過ぎが原因とされており、過剰に摂取している方であれば、食事に気を付けていただくことで数値の改善を目指せます。ただ、日本の食生活の変化や食材の栄養価などを考えると、ある程度の数値までしか改善は難しいのではないかと考えています。そのため、食事に気を付けているにもかかわらず数値が改善しないという方には、お薬の必要性を丁寧にお話しするようにしています。
かかりつけの医院として、コミュニケーションを大事にした診療を提供
また、インスリンポンプの発達にも期待しています。すでに、昔と比べたらだいぶ良くなってきてはいますが、より小型化したり、埋め込み式になったりすれば、患者さまの負担を抑えられるのではないかと思います。
実際の治療においては、これまでと同様に患者さまとのコミュニケーションを大切にしていきたいですね。お忙しい方も多いので難しい部分はありますが、気兼ねなく相談していただける関係を築くことで、より深く患者さまの健康をサポートしていきたいと考えています。