関戸 俊樹先生(日本消化器病学会認定 消化器病専門医)にインタビュー
生活背景まで丁寧に問診をおこなう先代院長から開業医としての姿勢を学ぶ
医学部に進んだ私は、いろいろと実習をおこなっていくうちに、消化器疾患で困っていらっしゃる患者さまがとても多いことに気付いたのです。そこで、多くの方が困っていらっしゃるのなら、少しでもそのお悩みを改善するための力になりたいと考え、消化器内科を専門に選ぶことにしました。
消化器内科で難しいと感じる点は、その症状が消化器に起因していると気付きにくい疾患もあるということです。例えば、腹痛であれば消化器疾患ではないかと消化器内科を受診してくださるのですが、長引く咳という症状を消化器疾患と結び付けることは難しいと思います。しかし、咳の原因は呼吸器ではなく、逆流性食道炎にあるというケースも考えられるのです。長い間、原因がわからず困って来院された症状の原因を見つけて改善できると、患者さまも嬉しいと思いますし、私も嬉しいですね。
一方、勤務医として働いていた時から、当クリニックも既に手伝っていたので、父の診療姿勢からもさまざまことを学びました。ただ世間話をしているように見えても、生活背景について伺うことには意味があります。ストレスが病気の引き金になっていることもあるので、生活背景を伺うのは重要なことなのです。大学病院では、そこまで細かく患者さまに問診することはできませんでした。しかし、患者さまとご家族との関係、生活背景といったことまで詳しく伺うのは、開業医として大切なことなのだと父の診療を見て学びましたね。
また、私は、1985年に医学部を卒業して30年以上、消化器疾患の診療にあたってきましたが、その間に、これまでと大きく常識が覆ったことがあります。それは、胃潰瘍が環境因子だけではなくヘリコバクター・ピロリ菌感染症が原因で引き起こされ、胃がんとも関係があるらしいことがわかってきたということでした。
ピロリ菌の除菌治療後も定期的なフォローで胃がんの早期発見に尽力する
胃潰瘍が見つかり、同時にヘリコバクター・ピロリ菌の感染が確認された場合には、胃酸の分泌を抑制する薬、胃粘膜を保護する薬による内服治療に加え、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌治療が必要となります。患者さまには、ヘリコバクター・ピロリ菌感染症の治療をおこなうことで、胃がん発症のリスクを減らすことが期待できるという説明をしています。これは、患者さまご自身が治療について理解し納得されることで、薬の飲み忘れが起こらないようにするためです。
そのほか、内視鏡検査で胃がんを見落とさないように気を付けています。胃潰瘍だと思っていたら胃がんだったということがないよう、細心の注意を払って検査をおこなうように心がけています。
逆流性食道炎の診断は、内視鏡検査でおこないます。内視鏡検査で食道粘膜の炎症が認められる逆流性食道炎は、びらん性逆流性食道炎といいます。一方、胸やけや呑酸など典型的な症状はあるものの、食道に炎症が見られない場合は、非びらん性逆流性食道炎です。粘膜は正常なので、症状を抑えることが治療の目標となります。非びらん性逆流性食道炎の場合、食道の粘膜自体は正常なのですぐに改善するのではないかと思われがちですが、実は治療に難渋することが多いのです。
どちらも、内服薬による治療が基本です。また、逆流性食道炎は食生活や肥満によって起こる場合もあるため、必要に応じて生活指導をおこなうようにしています。
除菌治療は、内視鏡検査で慢性胃炎や胃潰瘍の所見が認められた場合は保険適用でおこなえます。除菌治療は、内服薬を飲んでいただくのですが、飲み忘れがないように「胃がんのリスクを軽減させるため」という治療目的についてもしっかりと説明をするように心がけています。中には軟便や下痢を起こす方もいらっしゃいますので、事前に副作用の説明もおこなうようにしています。
また、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染し、慢性胃炎の状態が長期間続いていると、萎縮性胃炎を起こします。さらに萎縮性胃炎の状態が長く続くと、腸上皮化生を起こすことがあり、胃がんの原因となる可能性が指摘されています。一度、萎縮性胃炎を起こした方は、除菌治療が終わった後も胃がん発症のリスクがあるため、年1回の胃内視鏡検査をご提案しフォローしています。
早期がん発見を心がけ、自身の知識のアップデートにも注力し続ける医師
内視鏡検査によって早期にがんを発見することが、消化器内科の医師が担う大きな役割のひとつだと考えています。
忙しいとどうしても行きそびれてしまうという方も多いとは思いますが、まずは私自身が見本となれるよう、早期発見のため、年に1回は検診を受けに行くようにしています。
健診で肝機能障害を指摘される方も多いと思います。肝機能障害の異常値を指摘された方の中には、ウイルス性肝炎や脂肪肝を発症している方もいらっしゃいますので、B型肝炎やC型肝炎などウイルス性肝炎に感染していないかどうかを確認する血液検査や、肝臓の状態を確認する超音波検査をおこなっています。
もちろん、肝臓以外の消化器疾患、そのほかの内科疾患についても、気になることがあれば何でもご相談ください。「日本消化器病学会認定 消化器病専門医」であると同時に、私は地域のかかりつけでもありますので、お困りのことがあれば何でも力になりたいと考えています。