遠藤 光俊先生(日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医)にインタビュー
脳や脊髄などの一つの部位にこだわらず、全身を診る医師になるために開業
研究していたのは今から30年ぐらい前のことで、当時は遺伝子の解析や遺伝子操作などの技術が始まったばかりでした。まだ研究する人がほとんどいない時代です。今は認知症や、病気で脳の神経細胞が壊れてしまったときなどに遺伝子の治療が始まりつつあります。最近、新型コロナウイルスの検査で注目されているPCR検査というのは遺伝子を増幅させて検出させる方法で行うんです。研究していた当時からずいぶん進歩したなと思いますね。
医者を長くやっていて痛感するのは、脳ばかり、心臓ばかりといったようにひとつの診療を診ているだけでは十分ではないということです。脳と神経を診ているだけでは、患者さんの全体像を診ることができないわけです。「腰が痛い」としても、お腹の病気が隠れていることもあります。「頭が痛い」「足が痺れる」としても、脳の病気や糖尿病などの他の病気が隠れている場合もあります。患者さんの困っていることを受け止めるのは、やはり開業医でないと難しいなと思います。全身を診る医師になるために、開業したというのが大きな理由です。
医療業界においては、治療が困難な病気に最先端の医療で治療をしていく医師ももちろん必要です。しかし、ある程度の専門性を持った上で、患者さん一人について、病気がないかを診ていくことができる医師の存在も大切だと思います。そういう医師を志して開業医になり、現在まで勉強を続けてきましたが、これで終わりということはありませんね。私自身、向上していかなければいけないなと思っています。実際、勉強に飽きることはないですし、いつまでもやりがいを感じています。
整形外科系の不調に脳神経の病気が隠れていることも。MRI検査も行い、診断を
もの忘れ症状があったとしても、認知症ではない病気のこともあれば、治療次第で症状を軽減させることができる病気のこともあります。うちのクリニックではMRI検査も活用しながら、しっかり診断をしています。「これは単なる認知症だよ」ということでは終わらせないことが肝心です。なかには、大学病院を紹介しなければいけない患者さんも当然いますから、そこは臨機応変に対応しています。
脳神経外科の専門性を磨き続け、総合的に患者さんの訴えの原因を見極める
一人の患者さんに寄り添って幅広く診ることができる医師となれるよう、これからも自分自身をブラッシュアップさせていきたいですね。自分の強みは脳と脊髄、神経が専門で、そこは自信を持って診断、治療をしています。その上で、全身を診ていく。専門医であるという強みを持った上で総合的に患者さんのすべての訴えを聞いていくことができる医師になりたいと考えています。
また、検査と同じぐらい大切にしていることは患者さんの訴えにしっかりと耳を傾けることです。日本脳神経外科学会認定 脳神経外科専門医として、患者さんの健康をサポートしていきたいと考えています。