
光永 篤先生(日本消化器内視鏡学会認定 消化器内視鏡専門医)にインタビュー
がんを始めとする病気の早期発見のために、丁寧な内視鏡検査に注力
検査は内視鏡を使用します。萎縮性胃炎は厄介なことに症状があまり出ない上、放置することで胃がんのリスクが高くなります。そのため年に一度は内視鏡検査を受けていただきたいと思います。また、萎縮性胃炎で萎縮した粘膜はピロリ菌除菌後も元には戻らず、胃がんのリスクはゼロにはならないので、ピロリ菌除菌治療後も定期的に検査を受けて頂きたいと思います。
そのため当クリニックでは、口ではなく鼻からカメラを挿入する「経鼻内視鏡」を採用しています。経口内視鏡とはそもそもカメラを入れるルートが違うため、嘔吐反射をだいぶ抑えることができます。挿入する鼻の穴も、カメラをより挿入しやすい方を確認して入れるようにしています。以前は、経鼻内視鏡に対して「負担が少ない分、撮影画像が鮮明ではない」と言われていましたが、現在の機器は経鼻でも十分きれいな画像を撮ることができます。
もちろん検査機器の性能に頼りっぱなしではありません。私自身も今までの経験をいかし、挿入時にできる限り負担がかからないよう配慮しています。負担の少ない検査は、より精密な検査結果を出すために必要ですので、十分注意しながら検査を進めてまいります。
食道に関しては、NBI(Narrow Band Imaging)と呼ばれる特殊光観察機能を備えた「画像強調内視鏡」を用いて検査を行います。NBIとは狭帯域光観察とも言って、特殊な光で食道を照らすことで、早期の食道がんなどの発見に非常に有用です。食道がんは、飲酒・喫煙の嗜好のある人がかかり易い疾患で、どちらもよくたしなむ場合はリスクがより増大します。初期段階では症状が乏しいため、気付いた時には進行していた…というケースが少なくありません。そのため特に体調がおかしくなくても、お酒飲みで煙草も吸われる方は年に1回程度のペースで内視鏡での検査を受けていただきたいと思います。
工学部から医学部の道へ。器用な手先を、丁寧な検査のためにいかす
逆流性食道炎は、胃酸が逆流することで呑酸・胸やけなどの症状が起こる病気です。ただしこちらも初期症状が少なく、早期の段階では自覚に乏しい疾患と言えます。逆流性食道炎は重症化すると、まれにバレットがんなど重大な病気につながることがあるため、やはり早期発見・早期治療が大切になります。
粘膜下腫瘍・逆流性食道炎やほかの病気にも言えることですが、どのような病気も進行することで、より危険性の高い病気へとつながる可能性があります。胸やけなどの症状が続く方はもちろん、特に不調を感じない方も、定期的に検査を受けるようにしていただきたいです。
転機があったのが、私が浪人していた頃でした。予備校近くの古本屋で、とある医師の自伝的な著作に出会い、その内容から医師という仕事をしてみたいと強く思うに至りました。今思えばすごく急な転換であったと思うのですが、その本を読んだことがきっかけとなり工学部から医学部へ志望を変更しました。
大学では最初、さまざまな診療科目を学びましたが、最終的には消化器内科を専門として学ぼうと決めました。先ほども言った通り機械に触ることが好きで、手先が器用なことが自慢でしたので、消化器内科を専攻し、内視鏡検査を専門とするに至りました。
内視鏡検査は定期的に…少なくとも年に1回は受けていただきたいです。ただ一度内視鏡検査で苦しい思いをしてしまうと、以降それが嫌な思い出になって検査を敬遠しがちになってしまうと思います。そのため内視鏡検査で苦しい思いをさせてトラウマにしないよう、できる限りの注意・配慮をして、検査に取り組んでいます。
何度でもリピートして受けてもらえるよう、苦痛の少ない検査を目指す
がんに限った話ではないのですが、身体の状態は常日頃変化しています。一度の検査で問題がなかった場合でも健康に関する注意は怠らず、定期的に検査は受けていただければと思います。
私を始め、ほかの医師やスタッフ一同、患者さま一人ひとりの不安な気持ちに寄り添って、何度でも気兼ねなくお越しいただけるクリニックにしたいと思っています。
そのためにも、内視鏡検査を始めとする各種検査を、一人でも多くの方が受けられるよう普及に努めていきたいと思います。どんなに医師の技術が優れ、検査機器が充実していても、まずはご来院いただかないことには診断のしようがありません。どのような病気であっても早期発見・早期治療するに越したことはありませんので、皆さまには普段からご自分の身体に関心を持っていただき、健康に自信がある時期からでも定期的に健診を受けていただければと思います。