石田 由美先生(日本内科学会認定 総合内科専門医)にインタビュー
女性が何でも相談できるクリニックを作りたいという思いから開業する
医師、看護師、臨床検査技師などの医療従事者は、社会から必要とされる職業ですし、活躍の場として素敵だなと思い、漠然と医師になりたいと憧れ始めました。
会社員の両親が働く姿を見て、「仕事をするのは大変だな」と子ども心に思いつつも、仕事を続けて社会に貢献していきたいと思っていたのです。そうした経緯から医師という道を選びました。
膠原病とは、皮膚や血管など全身に炎症を起こす病気の総称です。全身を管理する必要がある慢性疾患を、かかりつけの医師としてずっと診ていくというところにやりがいを感じて、リウマチ・膠原病内科の道に進みました。
結婚を機に転居して、聖マリアンナ医科大学病院に勤務することとなり、そこでは呼吸器に惹かれて、研鑽を積むようになったのです。また、嫁ぎ先の実家は産婦人科のクリニックを開業しており、家族としてそちらも支えられるようになりたいと産婦人科領域についても学び始めました。
とはいえ、呼吸器疾患だけを診たい、婦人科疾患だけを診たいというよりも、総合診療的にさまざまな疾患に対応できるような医師になりたいと思っていましたね。
クリニックでは、受診したことでお悩みが改善され、ホッと笑顔で帰れることを目指して診療しています。おせっかいだと思われることもあるかもれませんが少し踏み込んだアドバイスもしながら、患者さまと同じ目線に立って、共につらいことを乗り越え成長していければと思っています。親御さまと一緒に通っていた小さなお子さまが大人になり、妊婦さまとして受診されることもあります。こういった患者さまの成長を見られるのは、開業医でなければ経験できない醍醐味ですね。
内科、婦人科と診療科目を分けずに女性のお悩み全般を伺いサポートする
同じ女性として、出産や子宮筋腫、子宮内膜症などを経験しているからこそ、痛みも理解できます。患者さまの不安に寄り添ってお話を伺うことができ、教科書的な答えにとどまらず自身の体験を還元できるのではないでしょうか。さらに、私が年を取ったせいか、性交痛や性病といったデリケートなお悩みについても患者さまは相談しやすいと感じてくださっているように思います。私が、さっぱりと恥じらいなく答えるから聞きやすいということもあるかもしれませんね。
かかりつけとして、本音で相談していただきたいと思っています。垣根を取り払い、同じ空間に一歩踏み込んで、お話を伺うように心がけています。
もし、生理でつらい日が月に3日あるとしたら、それが年に12回で、1年のうち36日、1カ月以上も損しているということです。そうお伝えすると皆さま苦笑いされるんですよ。生理痛は、今はもう我慢する時代ではありません。生理に伴う不便さは、漢方薬やホルモン治療によって管理することも目指せると知っていただきたいですね。未病であっても日常生活の質(QOL)を下げないようにサポートしていくのが婦人科の役割です。もし、一人でつらさを我慢している方がいらっしゃったら、婦人科をうまく利用していただきたいと思います。
また、生理のつらさは子宮内膜症や子宮筋腫などの病気が隠れていることもありますので、ご相談いただきたいですね。
最近多いのは甲状腺に関するご相談ですね。健診で甲状腺の腫れを指摘されて受診される方のほか、最近は甲状腺疾患について認知度も上がってきたのか、動悸や倦怠感から、甲状腺疾患を疑われてご相談に来られる方もいらっしゃいます。当クリニックでは甲状腺超音波検査ができますので、血液検査と合わせて診断を行うことも可能です。甲状腺機能低下症は、不妊にも繋がるため、妊娠を望まれるのであれば治療をしっかりと行っておくことが大切です。当クリニックでも治療は可能ですし、甲状腺疾患を専門に診療している医療機関での治療をご希望される場合は、紹介も行っています。
普段はクリニックで診て何かあったら総合病院を受診するという形でもいいと思います。病診連携で、サポートしていきたいですね。
等身大の女性として、教科書的な知識だけではなく経験も活かした診療を行う
知識には、教科書的な知識だけではなく、自身が経験を積むことで初めてわかる知識があると思っています。例えば、自身も更年期の年代になって初めて更年期障害の患者さまの訴える不調を理解することができるようになりました。今後、さらに年を重ねることで、ご年配の方が抱えていらっしゃる不調についても、どこまでが年齢的なものでどこからが異常なのか、理解することができるでしょう。
今の私の年代ではまだ経験していないことは、人生の先輩でもある年上の患者さまに教えていただいています。例えば、「のぼせやほてりは80代になっても続きますか?」と患者さまに伺って、教えていただいた答えを他の患者さまにフィードバックしているんです。
できれば、女性の方を最期まで診させていただきたいと考えていますが、当クリニックはビルの2階にあり、階段しかないため、どうしても足腰が不自由になると通院が難しくなってしまいます。そこが当クリニックの抱えている課題でもあり、限界点を感じているところですね。マンパワー的にも私が訪問診療まで行うのは現時点では難しいですし、私一人ですべてを抱えるというのはおこがましいことなので、地域で訪問診療を行っている先生と連携しバトンタッチしていきたいと思っています。
クリニックには、お仕事や子育て、介護などで疲労が蓄積された方や不定愁訴の患者さまも多くご来院されます。病気ではないので、治療をするのは難しいかもしれません。しかし、お話を伺って現状を把握し、気持ちの交通整理のお手伝いをさせていただくことはできると思うんです。その上で、漢方薬を使って体質を改善して、つらさを軽減して差し上げることはできるかもしれません。
私自身が更年期を迎えてみてわかったのですが、薬では改善しきれない症状があり、それは長く付き合っていかなければならないものです。つらさをできるだけ軽減できるようなお薬を探してご提案しますが、年齢という流れに逆らわず身を任せることも大切だと思っています。私もスタッフも女性として患者さまと同じような悩みを抱えていますので、気持ちを理解し寄り添いながら、つらさを軽減するお手伝いをしていければと思っています。