妊娠・出産を考えている女性が甲状腺疾患について相談しやすい女性の医師
医師
宍倉 佳名子
取材日:2021年10月18日
宍倉 佳名子先生(日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医)にインタビュー
ホルモンの働きに興味を持ち内分泌内科の道に。妊娠にも配慮した診療を行う
医師を目指したきっかけと内分泌内科の道に進んだ理由を教えてください。
父も祖父も医師でしたので、その姿を見て育つうちに自然と医師を志していました。臨床研修の2年間ではいろいろな診療科を回ったのですが、中でもホルモンの働きに興味を持ったことが内分泌内科の道を目指そうと決めたきっかけです。
内分泌内科というのは、少し特殊な診療科目ですよね。何かの症状が出たからと言って、「内分泌内科で診てもらおう」という方は少ないのではないでしょうか。違う病気を想定して内分泌内科以外を受診し、いろいろな検査をしていくうちに、実は内分泌疾患だったということがわかって、紹介されることが多いと思います。何の病気なのかわからなかった方が、内分泌内科で診断をつけることができて治療を進めていくことで、症状が改善されていく姿を目の当たりにし、内分泌内科は面白いと、興味を持ちました。
大阪医科大学附属病院(現・大阪医科薬科大学病院)の糖尿病代謝・内分泌内科で経験を積ませていただき、いろいろな勉強をさせていただいて、「日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医」も目指すようになったんです。
内分泌内科というのは、少し特殊な診療科目ですよね。何かの症状が出たからと言って、「内分泌内科で診てもらおう」という方は少ないのではないでしょうか。違う病気を想定して内分泌内科以外を受診し、いろいろな検査をしていくうちに、実は内分泌疾患だったということがわかって、紹介されることが多いと思います。何の病気なのかわからなかった方が、内分泌内科で診断をつけることができて治療を進めていくことで、症状が改善されていく姿を目の当たりにし、内分泌内科は面白いと、興味を持ちました。
大阪医科大学附属病院(現・大阪医科薬科大学病院)の糖尿病代謝・内分泌内科で経験を積ませていただき、いろいろな勉強をさせていただいて、「日本内分泌学会認定 内分泌代謝科専門医」も目指すようになったんです。
勤務医時代にどのような患者さまを診ていたのか教えてください。
大学病院では、甲状腺疾患を中心に、下垂体疾患、副腎疾患など、いろいろな内分泌疾患を診療していました。原因不明の体調不良の方や他の疾患の治療中に内分泌疾患が見つかった方、手術前後でのホルモン調節が必要となる方を入院中に診療すること多かったですね。CTやMRIなど画像検査をすることで、下垂体の腫瘍など、内分泌臓器の腫瘍が見つかる方もいらっしゃいました。他の病気も持っている方や手術前後の方は、他の科の先生と連携をしながら治療を進めていましたね。
診療所ではどのような診療を行っているのか教えていただけますか?
所長には、大阪医科大学でお世話になったというご縁もあり、2021年から当診療所で勤務させていただくことになりました。当診療所では、超音波検査もその日のうちに受けていただけますし、血液検査や超音波検査の結果も当日中にお伝えすることができます。その日のうちに診断がつけられて治療が始められるのは、患者さまにとってもメリットではないかと思います。
また、大学病院は受診するのにハードルが高いと感じる方も、当診療所であれば、健診で異常を指摘された時や、ちょっと心配だから相談してみたいという時にも受診やすいのではないでしょうか。
甲状腺疾患は女性の方に多く見られる疾患です。女性で妊娠、出産を考えられている方の場合、病気が妊娠・出産に影響を与えるのではないかと不安になられることもあるでしょう。実際に、産婦人科で不妊治療を行っていらっしゃるという方も当診療所を受診されます。私自身も出産の経験がありますので、患者さまのご不安に寄り添ってお話を伺い治療を進めていければと思います。
また、大学病院は受診するのにハードルが高いと感じる方も、当診療所であれば、健診で異常を指摘された時や、ちょっと心配だから相談してみたいという時にも受診やすいのではないでしょうか。
甲状腺疾患は女性の方に多く見られる疾患です。女性で妊娠、出産を考えられている方の場合、病気が妊娠・出産に影響を与えるのではないかと不安になられることもあるでしょう。実際に、産婦人科で不妊治療を行っていらっしゃるという方も当診療所を受診されます。私自身も出産の経験がありますので、患者さまのご不安に寄り添ってお話を伺い治療を進めていければと思います。
見過ごされがちな甲状腺疾患も問診や検査で診断し寄り添った治療を提供する
バセドウ病を診察する時にはどういったことに注意されていますか?
バセドウ病は、甲状腺ホルモンが増えてしまう病気で、甲状腺機能亢進症の代表的な病気のひとつです。甲状腺ホルモンが増えることで、体重減少、指の震え、多汗、動悸などが起きるほか、眼球が飛び出てくる症状が現れる場合もあります。
バセドウ病は、一般的な病気とは逆で活動的になることが多く、ご自身が病気だと気付いていないことも多いため、問診ではいつ頃からそういった症状が現れ始めたのかを伺うようにしています。また、甲状腺ホルモンの影響で、そわそわと落ち着きのない様子が見られたり、手が震えたりする方もいらっしゃいます。動作や表情からもバセドウ病が疑われることがありますので、診察室に入られてからの様子も注意深く観察させていただきます。
バセドウ病を診断するには、血液検査を行い、甲状腺ホルモン、抗TSH受容体抗体の数値を確認するほか、甲状腺超音波検査を行います。検査結果は当日中にお伝えし、当日に治療も開始しています。基本的には内服治療を行いますが、副作用が出た方には放射性ヨウ素内用療法や手術を検討し対応可能な医療機関をご紹介します。
バセドウ病は、一般的な病気とは逆で活動的になることが多く、ご自身が病気だと気付いていないことも多いため、問診ではいつ頃からそういった症状が現れ始めたのかを伺うようにしています。また、甲状腺ホルモンの影響で、そわそわと落ち着きのない様子が見られたり、手が震えたりする方もいらっしゃいます。動作や表情からもバセドウ病が疑われることがありますので、診察室に入られてからの様子も注意深く観察させていただきます。
バセドウ病を診断するには、血液検査を行い、甲状腺ホルモン、抗TSH受容体抗体の数値を確認するほか、甲状腺超音波検査を行います。検査結果は当日中にお伝えし、当日に治療も開始しています。基本的には内服治療を行いますが、副作用が出た方には放射性ヨウ素内用療法や手術を検討し対応可能な医療機関をご紹介します。
甲状腺機能低下症の治療で気をつけていることは何でしょうか?
甲状腺機能低下症とは、甲状腺ホルモンの作用が低下することで、無気力、倦怠感、動作の緩慢、体重増加、むくみといったさまざまな症状が現れる病気で、代表的な疾患は橋本病です。だるい、疲れやすい、起きるのがつらいといった日常生活の中でよく感じるような症状も、甲状腺機能の低下が原因の場合があります。また、コレステロール値が高くなることもあります。
これらの症状がある場合には、甲状腺機能低下症を疑い血液検査を行います。甲状腺ホルモン値の低下、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の増加が確認されれば甲状腺機能低下症と診断されます。一般的な健診の血液検査ではこれらの値まで確認しないため見過ごされがちで、うつ病を疑う方もいらっしゃるかもしれませんが、お薬によって甲状腺機能が改善されれば、症状の改善も期待できます。
また、甲状腺機能低下症は、不妊や流産、早産のリスクを高めます。不妊治療中、妊娠中、出産後などその時の状態により、甲状腺ホルモンの必要量が変わるため、その方、時期に合わせてお薬の量を調節するようにしています。
これらの症状がある場合には、甲状腺機能低下症を疑い血液検査を行います。甲状腺ホルモン値の低下、甲状腺刺激ホルモン(TSH)値の増加が確認されれば甲状腺機能低下症と診断されます。一般的な健診の血液検査ではこれらの値まで確認しないため見過ごされがちで、うつ病を疑う方もいらっしゃるかもしれませんが、お薬によって甲状腺機能が改善されれば、症状の改善も期待できます。
また、甲状腺機能低下症は、不妊や流産、早産のリスクを高めます。不妊治療中、妊娠中、出産後などその時の状態により、甲状腺ホルモンの必要量が変わるため、その方、時期に合わせてお薬の量を調節するようにしています。
甲状腺機能亢進症の治療を行う上で大切なことは何でしょうか?
甲状腺機能亢進症は、甲状腺ホルモンの値が高くなり、多汗やほてり、動悸、手の震え、食欲が亢進するのにも関わらず体重が増加する、活動的になるといった症状が現れます。動いても疲れを感じにくくなるため、初期の段階では病気だと自覚されない方が多いのですが、全速力でずっと走っているような状態になりますので、脈拍も速くなり、身体に負担がかかります。
甲状腺機能亢進症の原因の中でも多く見られるのはバセドウ病ですが、ほかにもいくつか甲状腺ホルモンが増える病気があり、そのひとつが無痛性甲状腺炎で自然に治ります。原因疾患によって、治療方法は変わるため、問診、血液検査、超音波検査などによってしっかりと鑑別することが大切です。バセドウ病であれば抗甲状腺薬による治療を行います。無痛性甲状腺炎は、甲状腺が破壊されることで甲状腺ホルモンが血液中に流れ出しますが、甲状腺機能は次第に改善されるため抗甲状腺薬の投与は不要です。問診や検査によって、まずはしっかりと診断をつけた上で、原因疾患に応じた治療を行っていくことが大切です。
甲状腺機能亢進症の原因の中でも多く見られるのはバセドウ病ですが、ほかにもいくつか甲状腺ホルモンが増える病気があり、そのひとつが無痛性甲状腺炎で自然に治ります。原因疾患によって、治療方法は変わるため、問診、血液検査、超音波検査などによってしっかりと鑑別することが大切です。バセドウ病であれば抗甲状腺薬による治療を行います。無痛性甲状腺炎は、甲状腺が破壊されることで甲状腺ホルモンが血液中に流れ出しますが、甲状腺機能は次第に改善されるため抗甲状腺薬の投与は不要です。問診や検査によって、まずはしっかりと診断をつけた上で、原因疾患に応じた治療を行っていくことが大切です。
妊娠中の患者さまにはその時必要なホルモン量に合わせ薬の調節を細かく行う
甲状腺疾患を治療していて課題だと感じることはありますか?
バセドウ病にしても甲状腺機能低下症にしても、現在は薬の種類が少なく、薬物療法を行う際の選択肢が少ないという問題があります。また、バセドウ病で使う抗甲状腺剤は無顆粒球症という重い副作用を生じさせる可能性があります。無顆粒球症とは、白血球の顆粒球が減少し免疫が低下する病気で、命に関わる恐れもあるため、この副作用が出た場合には薬物療法を中止し一時的な入院が必要となることもあります。放射性ヨウ素内用療法や甲状腺摘除術など、他の治療方法を検討することになりますが、できれば副作用のない、或いは少ないお薬ができると嬉しいですね。
バセドウ病に限らず、どの甲状腺疾患でも、お薬を処方する際には、患者さまの状態に合わせてきめ細やかな処方を行うようにしています。初診からお薬の服用量が決まるまでの間は、こまめに通院をお願いし、状態を確認しながら用量を調節してきます。また、甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモン製剤を使った治療を行います。これは妊娠中も服用できる薬です。妊娠の週数によって必要なホルモン量が変わるので、きめ細やかに対応させていただきます。
バセドウ病に限らず、どの甲状腺疾患でも、お薬を処方する際には、患者さまの状態に合わせてきめ細やかな処方を行うようにしています。初診からお薬の服用量が決まるまでの間は、こまめに通院をお願いし、状態を確認しながら用量を調節してきます。また、甲状腺機能低下症では、甲状腺ホルモン製剤を使った治療を行います。これは妊娠中も服用できる薬です。妊娠の週数によって必要なホルモン量が変わるので、きめ細やかに対応させていただきます。
今後、どのような診療を患者さまに提供していきたいと考えていますか?
診療所では、できる限り患者さまのお話を伺う時間を取るように心がけて診療しています。相談しやすい診療所を目指して、患者さまのお悩みに寄り添った診療をしていきたいと思っていますので、不安なことがあれば何でもご相談ください。妊娠や出産を考えている女性の患者さまに対しても、ライフステージに寄り添ったお薬の調整など、きめ細やかに対応していきたいと思います。
妊娠中のバセドウ病の患者さまの場合、お子さまに甲状腺機能亢進症や服用中のお薬の影響が出る恐れがあるため、妊娠のタイミングについても治療を進めながらご相談に乗っていきます。きちんと治療してコントロールできていれば、出産も授乳も問題なくできますので、ご相談に乗ることで患者さまの不安を軽減できればと思います。
妊娠と甲状腺ホルモンは関係が高いと言われています。不妊治療をされている甲状腺機能低下症の方は、ホルモンをしっかりと補充して甲状腺機能を正常な状態に保つことが大切です。
妊娠中のバセドウ病の患者さまの場合、お子さまに甲状腺機能亢進症や服用中のお薬の影響が出る恐れがあるため、妊娠のタイミングについても治療を進めながらご相談に乗っていきます。きちんと治療してコントロールできていれば、出産も授乳も問題なくできますので、ご相談に乗ることで患者さまの不安を軽減できればと思います。
妊娠と甲状腺ホルモンは関係が高いと言われています。不妊治療をされている甲状腺機能低下症の方は、ホルモンをしっかりと補充して甲状腺機能を正常な状態に保つことが大切です。
最後に読者の方へのメッセージをお願いできますでしょうか?
バセドウ病や甲状腺機能低下症は、少しずつ一般の皆さまの間でも認知度が上がってきています。しかし、内分泌疾患は、まだ一般の方にはあまり馴染みのない疾患が多いかもしれません。怪我をしたら整形外科を受診しよう、お腹が痛いから消化器内科を受診しようといったように、「内分泌内科を受診してみよう」とはなかなか考えにくいかもしれませんね。内分泌疾患について、皆さまにも知識を持っていただけるように日々診療しています。
甲状腺機能亢進症は、活動的になるため、かえって病気の自覚を持ちにくいといったこともあるかとは思いますが、「今までとは身体の調子が違う」と感じたら、まずは受診していただきたいですね。倦怠感や疲れやすさも、もしかすると甲状腺機能低下症が原因で生じているかもしれません。何か不安に感じることがあれば、一度、ご相談に来ていただければと思います。検査をして問題がなければそれでいいですし、もし何か治療が必要な疾患が見つかった場合には、一緒に治療をしていきましょう。
甲状腺機能亢進症は、活動的になるため、かえって病気の自覚を持ちにくいといったこともあるかとは思いますが、「今までとは身体の調子が違う」と感じたら、まずは受診していただきたいですね。倦怠感や疲れやすさも、もしかすると甲状腺機能低下症が原因で生じているかもしれません。何か不安に感じることがあれば、一度、ご相談に来ていただければと思います。検査をして問題がなければそれでいいですし、もし何か治療が必要な疾患が見つかった場合には、一緒に治療をしていきましょう。